転生生活 魔法都市エディミアル 復習
全ての時間を執筆に使える作家さんがうらやましいと思いつつももしそうなったとしても苦しんでのたうち回る自分が思い浮かぶ今日この頃
ああ、とても緊張する。
まず、しばらく離れていたクラスに戻るというのがとても抵抗感が有る。
何を言われるか。
何を聞かれるか。
とても不安だ。
そんな僕の思いを知ってか知らずか僕に割り振られた部屋に美少女がやってきた。
僕は、この町に戻ってきてからフォーミュさんの館で泊まらせて貰っている。
美少女が自分のベッドに上がり込んで来るというのは男冥利に尽きるのだろうけど、こういう場合は何冥利に尽きると考えたら良いだろうか?
件の美少女は今、僕の上で飛び跳ねてるわけだけど。
「お、起きるから! 起きるから僕の上で飛び跳ねるな!」
なんだか懐かしい感じがした。
「フレアは大丈夫? 次の試験でちゃんと昇級出来る?」
飛び跳ねるのをやめたイブは僕の上に座り尋ねてくる。
「何人から太鼓判貰ったけど正直自信はない」
この学校に行く不安はそれも原因の一つだと思う。
どれほど難しい試験なのかとても気になって仕方がないのだ。
気になって気になって、心臓が存在を主張しまくっている状態だ。
「そう? とてもイキイキしているように見えるよ?」
「そう?」
「そう」
むう、しかし、学校に行くことが不安なのは確かだ。
「じゃあ、元気が有るようだしバイバイ」
イブは僕のベッドから飛び降りるとすたこらと去って行った。
扉を開くとフォーミュさんが待っていた。
「おはようございます。 フレア君」
「おはようございます」
「よく眠れましたか?」
「はい、おかげさまで」
旅の途中で野宿したときのことを思えば天国だ。
「では、今日にでも復学手続きに向かいましょうか」
「はい」
僕の返事を聞いたフォーミュさんは、頷き呟く。
「意外と心配してないのではないですかな?」
フォーミュさんの言葉に僕は首を傾げる。
「どういうことですか?」
「自覚がないならあえて言いませんが、フレア君、君は、意外と図太いですね」
「え?」
「おっと、失言でしたな」
「そうですよ。
僕が図太いだなんてそんなこと有るわけないじゃないですか」
「まあ考えようによってはということですが、まあ、そこのところは置いておきましょう。
それよりもまず、フレア君が不安に思っていることですが、杞憂です」
「え?」
「魔法学校において生徒が、休学するのは案外よくあることです。
フレア君に関して言えば少々長めの休学になっただけで休学に関してはとやかく言われることはありませんよ」
ならばよし。 ってなるんだろうな図太いのであれば、けれど僕は繊細なんだ。
だからそんな簡単に不安がなくなることはない。
「そうですか。
まあ、フレア君は、魔法学校に復学することには代わりはないでしょう?」
「はい」
「では、気にしすぎると言うのであれば勉学に励んでみてはいかがでしょうか?」
うげ、いや、嫌じゃないんだ。
ただ、前世の無理やり記憶する勉強方法を思い出して少し嫌な気分になるんだ。
「勉強すれば嫌なことを考えずにすむでしょう」
「それもそうか」
と言うわけで軽く今現在の光の妖精クラスの授業レベルの勉強を教えてもらうことになったけど、思ったより簡単だった。
授業をしているのはマリコさんから叩き込まれた知識、それも割と最初の方に教わったところだ。
詠唱術におけるワード構成を主軸に詠唱術の最も有効的な使い方である合唱法と輪唱法の二つを教えているところらしい。
「授業に付いていけないというのはなさそうでよかった」
「すみません。
フレア君に影響を与えるような状況になってしまって」
「いきなりどうしたんですか?」
「この度の騒動は、私の関係者であるばっかりにあなたがターゲットとして選ばれたこと。
そして幼馴染のエリイ君と離れ離れになってしまったことですよ」
「ああ、そのことですか。
確かにあの時は混乱していましたし、大変でしたけど有意義な時間を過ごさせてもらったので恨んだりはしませんよ」
「そうですか」
ほっとした様子を見せるフォーミュさん、意外と気にしてくれてるんだとなんだかほっこりした気分になった。
「エリイ君には怒られましたが、今日フレア君が来ることは伝えておきましたのでそろそろ来る頃かと」
「え、本当に?」
「ええ」
こ、心の準備が。
村から出てくるときこっそり荷物に紛れ込むような真似をしたエリイのことだ。
もしかしたら怒ってるかも。
ちょっとかわ、じゃなくて怖いかも。
そんなことを思っているとフォーミュさんが不意に窓の方に顔を向ける。
「来たようですね」
もう?
「私は出迎えてきますので、フレア君、君はここで待ってくださいますか?」
「はい」
「では」
ガチャンとフォーミュさんが出て行った音を聞いて僕は盛大にため息を吐く。
さて、エリイに何て言おうか。
むしろなんて言われるだろうか。
とてつもなく不安だが、それ以上にエリイと会えるのが思った以上に嬉しくて何とも言えない感情が僕の中で渦巻くのだった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。