転生生活 魔法都市エディミアル 到着
あれから特に問題なく魔法都市の近くまで来ることができた。
魔法都市に近くなればなるほど、人通りが多くなるのは必然か。
「ようやく戻ってこれましたか」
「そうだな、濡れ衣を着せられて一時期逃げ出してたからな」
「なにげにフレアってとんでもない経験してないか?」
クーデルさんの言葉に確かにと僕は頷いた。
ガスト・ファブリオン侯爵に濡れ衣を着せられ牢屋に閉じ込められたところをアルヴァンスさんに助け出して貰わなければどうなってたか。
「そうだな、普通は体験するようなことではないのは確かだな」
手綱を握りながら頷くアルヴァンスさん。
「そういえば、魔法都市に付いたら皆さんはどうするんですか?」
「どうするって、そんなことより自分の心配をした方がいいんじゃないか?」
クーデルさんの言葉に僕は首を傾げる。
「僕は学校の寮に入るんでしょう?」
「そうか、自分の置かれている状況に無自覚だったか」
呆れたようにため息をつくクーデルさんに疑問を深める。
「どういうことです?」
「戻ってくるまでに襲撃こそ無かったが、フレアはまだ濡れ衣を着せる候補の一つなんだよ」
「ええ! じゃあ、戻ってこなかったほうが良かったんじゃ」
「そこは、魔法学校に入学する前のようにフォーミュさんの館に泊まれるから心配する必要はない」
なるほど、イブさんみたいに、そう言えばイブさんはどうしてるんだろう元気かな?
「というわけで直接フォーミュの所に向かう」
「わかりました。
で、アルヴァンスさんとクーデルさんはどうするんです?」
「俺はまだ予定が立ってないからなんとも言えねえな」
「こっちはある人を訪ねるけど、まあ細かいことは秘密だ」
アルヴァンスさんは未定でクーデルさんが訪問と、まあ、聞いたところで何が有るわけでもないけど気になるよね?
「やっぱりすごい人ですね」
魔法都市の入り口には行列が並んでいた。
と言っても最初に来た時に比べればまだましだけど。
「アルヴァスティア王国の主要都市の一つだからなそりゃ人も多くなるさ」
僕達は列に加わる。
待っている間僕は魔法の制御の訓練をする。
前回は魔導書の写しを読んでいたけど魔法制御の方が、精神的な負担は大きい。
二十分も待つと自分たちの順番が回ってきた。
「次、通行税一人につき銀貨二枚だ」
アルヴァンスさんは、予め用意していたようでさっと門番兵に銀貨六枚を渡す。
「よし、通れ、次」
あっさりしてるけどそれぐらいじゃないと後ろが支えるか。
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久しい街並みが僕を迎えてくれた。
最初に来たときほど行き交う人々は多くない。
まあ、あの時はパレードとかあったしお祭り状態だったからなぁ。
そんなことを考えていたら久しぶりによく見覚えのある館が見えてきた。
「到着したぞ」
アルヴァンスさんは、館の門をくぐり大きな扉の前で馬車を停める。
「クーデルもここで降りるんだよな?」
「はい」
「クーデルさんもフォーミュさんに用事があるんですか?」
「ああ、挨拶はしとかないと師匠にどやされるからな」
館の門の前では一人の男性が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました」
「フォーミュさん」
この館の主で、執事のフォーミュさんである。
「お久しぶりですね。
フレア君にクーデル君」
「クーデルさんと知り合いだったんですか?」
僕の言葉にフォーミュさんが頷きます。
「はい、ちょっとした縁で」
「ああ、師匠に関連してお世話になったからな。
お久しぶりですフォーミュ卿」
「フォーミュで結構でございます。
食事の用意ができております。
アルヴァンスもどうですか?」
アルヴァンスさんに水を向けるフォーミュさん。
「いや、俺は結構だ。
まだやることもある」
「そうですか。
ではまたの機会に」
「じゃあ、俺はこれで」
「はい」
「色々ありがとうございました」
「気にするな仕事の内だ」
「じゃあ」
「ああ、じゃあなクーデル」
アルヴァンスさんはそう言い残し馬車を走らせた。
「では、中ヘどうぞ」
フォーミュさんは、扉を開けながらそう促してきた。
「はい」
「はあ、全然変わらねえなフォーミュさん」
僕たちは素直に自分の荷物を持ち館に入る。
「お帰り」
一人の女の子が出迎えてくれた。
「君がエリイって子かい?」
「いいえ、私はイブリス=アインギル=イグニス=エルヴォルト=ドラッケンよ」
「い、いぶりすあいんぎる何だって?」
「イブリス=アインギル=イグニス=エルヴォルト=ドラッケン、イブリスって呼んでくれると良いわ」
「そうかよろしくイブリス」
「そういう貴方は?」
「ああ、悪い名乗り遅れたな。
俺は、クーデル・ドレイサー。
マリコ=ペンドラゴンの弟子だ」
「そう」
クーデルさんと挨拶が終わったと判断したのかイブはこちらに話しかけてきた。
「ひさしぶりだねフレア」
「ああ、久しぶりイブ」
「ところでお前の幼馴染は何処に居るんだ?」
「多分寮にいると思います」
「そうか、なら後で会いに行ったほうが良いんじゃないか?」
「そうですね」
「ちょうどお昼時だからね。
食堂に行こう」
そう言ってイブは僕の手を引っ張る。
僕は特に抵抗もせずにイブに引かれるままついて行った。
「おい、いいのかそれで」
ボソリとクーデルさんが呟いた言葉を背中で受けながら。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
ストックって大事だね。