転生生活 魔法都市への道 宿での騒ぎ
遅れて申し訳ありません。
しばらく書いていると自分が書いたことすら忘れてしまいますね。
読み返さないと書けない状況が苦しいです。
「結局五個しか集められなかったか。
タイミングが悪い時に来たもんだな」
ため息をついて愚痴るクーデルさん。
予定通り日が沈む前には戻ってこれたけどもう太陽が山に隠れ始めているのを見て時間を掛けすぎたということは僕でも分かったことだ。
「足りない分は買ったりするんですか?」
「いや、わざわざ買ってまで用意する必要はない。
なにより魔石の値段は今このあたりじゃ高騰し始めてるだろうしな。
一過性のものだろうが」
「何故です?」
「あれだけの魔物を一組のペアが持っていったんだ。
あの二人が市場に回す気がなけりゃほぼ間違いなく割高になる」
「市場に影響与えるほどの数だったんですか!?」
まあ夥しい数の死体が転がっていたから当然といえば当然か。
「そうなると睨んでる。
あの方法で魔石を集め続けてたらそれこそダンジョン組合のブラックリストにのるだろうよ。
いや、もう既に載ってるかもしれないがな」
「ダンジョン組合って市場に出回っている魔石を調整する役割でもあるのですか?」
「ん? ああ、よくわかったな。
その通りダンジョン組合は、魔石組合と呼ばれることがある位、魔石の流通をコントロールする役割があるんだ」
「なるほど、ところで魔石って何に使えるんですか?」
一応魔法学校ではゴーレムとかに使うのは聞いたけど他の使い方については知らない。
錬金術師がよく使うと言うのは聞いたことがあるけど、
「知らないのか?」
「ええ」
「まあ、錬金術に携わっているなら常識何だが、まず魔法薬全般の素材として利用されている」
「なるほど」
「で、後はゴーレムとかの動力に使われる事、そして冒険者の切り札になることだな」
「切り札ですか?」
「あまり一般的には知られていないが、ある加工を施すと爆発を起こす石になるそうだ」
「その加工方法は」
「流石にそこまでは教えられない。
錬金術師の秘技だからな」
「へえ」
それがあるということを教えるのはいいのだろうか?
「まあ、さっさと宿に帰って休もうぜ」
「はい」
宿に戻ると騒然としていた。
「おい! この宿に居るのは分かっているんだ!
さっさと出せ!」
「申し訳ありませんが、どのお客様のことを言っているのか分からないので出すことはできません」
柄の悪い男が、受付の男性に詰め寄るが受付の男性は毅然とした態度を崩さない。
しかし、受付の男性の後ろにいる受付の女性は怯えきっている。
「お前もこの町の人間だろうが、庇い立てしてどうなるか分かっているのか!?」
「ですからどのお客様のことを言っているのか分からないので出すことはできません」
受付の男性は、この宿の責任者なのだろうか?
かなり高めの宿だったのは知っていたけどあんなに詰め寄られてもお客を守ろうとする精神はすごいと思う。
「あの二人この宿に泊まっていたのか」
「みたいですね」
押し問答に柄の悪い男性はシビレを切らしたのか受付を叩き
「もういい、勝手に調べさせてもらう!」
「それは、困ります!」
「うるせえ! こちとら今日の稼ぎを奪われたんだ!
ふんじばってダンジョン組合に突き出してやる!」
ダンジョン組合ってどんな組織なのかわからなくなってきた。
「うるせえなぁ! 驚いて、起きちまったじゃねえか!」
一人の男性が階段を降りてきた。
っていうか、アルヴァンスさんだった。
「全く、何の騒ぎだ」
「すみませんお客様、ご迷惑おかけいたしました」
「何だお前は」
「それはこっちのセリフだ。
人の安眠を妨害しやがって」
険悪な雰囲気をまといながら騒いでいた男性に詰め寄るアルヴァンスさん。
「うるせえ、安眠がなんだってんだこっちは生活がかかってるんだ!」
「どういうことだ?」
「男女一組のペアが、ダンジョンの魔石をまるごと持っていきやがったんだ!
そいつらがこの宿に泊まっているのはわかっている!
だから出せって言ってるんだ!」
「この宿に戻ってきてるとは限らんだろう?」
「な!」
「お前さんが起こるほどのことをしたのはわかった。
しかも何かを独占したことも、そんなことしたらこの町にいられなくなることぐらいその二人も分かっているだろうな」
「まさか!」
「とっくにこの町を出たんじゃないか?」
「だが」
男がアルヴァンスに食いかかるが、アルヴァンスさんは男の発言をかぶせながら塗りつぶすように声を大きくして
「もし仮に!
この宿に残っていたとしてもこれだけの騒ぎがあったら逃げ出すだろうよ
それにダンジョン組合とやらがとっくに調べに来てるだろう?」
アルヴァンスさんに振りに受付の人は思わずといった感じで頷いた。
「そういうわけでここで騒ぐのは俺のあるいはこの宿に泊まっている関係ない人の迷惑にしかならねえよ」
「っち」
アルヴァンスさんの説得が効いたのか男性は文句を言いながら立ち去る。
「ありがとうございます!」
「いいよ。 部屋から出たら聞こえたぐらいだし、思った以上にいい宿だな」
「ありがとうございます!」
「しかし、少しばかり嫌な目にあったんだ。
何かサービスはあるよな?」
「今夜の料理にハイビーフステーキを追加いたします」
「それだけか?」
「いえ、明日の朝食も無料でご用意させていただきますとも」
「そうかそれはいいな」
何とも言えない雰囲気が場を流れると思ったけどそうでもない。
客としては当然の権利なのか?
「よく騒ぎを抑えましたね」
「お! フレアか」
「しかし、あの二人このあたりにはもういないのか」
「あの二人って騒ぎの原因を知ってるのか?」
「ええ、偶々ですが、ダンジョンで会いました」
「ふうん、どんな奴らだった?」
「どちらも若かったです。
十代を超えてないぐらいだったと思います」
「そうか」
クーデルさんがアルヴァンスさんに尋ねる。
「アルヴァンスさんはよくあの二人がこの町から出ていったことがわかりましたね」
「そりゃ適当に言ったんだよ」
「適当って」
「適当に適切そうなことをいい加減で言ったんだ。
それなりに説得力はあっただろう?」
「あの二人、まだ魔石を集めようとしてたみたいだけど」
「少なくともダンジョン組合が許さないだろ?」
「確かに」
少なからず被害が出ている以上、管理をしている組織がこれ以上混乱を広めることを許さないだろう。
「中途半端に目が冷めたから俺は飲みに行く。
クーデル頼んだぞ」
「はい」
「まあ、うろちょろしなけりゃ問題は起こらんだろうからしっかり二人共ゆっくり休め」
「「はい」」
そう言い残してアルヴァンスさんは宿を出ていった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。