転生生活 魔法都市への道 ダンジョン
人が沢山集まっているところを見るとまるで祭のように思えてくる。
いや、どちらかと言うとで店らしきものがあるせいでお祭りっぽく見えるのだろう。
「ああ、あそこがダンジョンの受付だ」
クーデルさんが指差す先には、小屋が立っていてその前に何人かが並んでいる。
まるで動物園の入場券売り場に見えなくない。
僕らも列に加わる。
直ぐに順番が回ってきた。
「ようこそアブリールのダンジョンへ」
アブリールとはこの町の名前だろう。
今はじめて知った。
「二人分頼む」
「はいではこちらにサインをお願い致します」
受付の女性が紙をこちらに出してくる。
「ああ、分かった」
紙には委任状とあり死亡した場合所持品の権利はダンジョン組合と呼ばれる組織の権利となることが書かれていた。
「ダンジョン組合って?」
「後で説明するからとりあえずサインしとけ」
「はい」
とりあえずサインを書いて受付に渡す。
「はい、ありがとうございます。
ダンジョン入場料は一人につき銀貨一枚となっています」
「はいよ」
クーデルさんが銀貨二枚を受付に渡す。
「ありがとうございます。
こちらが入場券となっております
今日一日のみ有効なのでご了承下さい」
「分かりました」
僕とクーデルさん合わせて銀貨二枚か。
さして痛い出費ではないだろう。
魔石は大きさにもよるが、最低でも銅貨一枚分はあるのだ。
小さいものを一人十個集めれば十分にもとは取れる。
ということは
「クーデルさん、もしかして魔石二十個以上集めたりは」
「しないしない、ただ、来る前に言った数より多めに集めるけどね。
具体的には十個ほど」
「それは、入ダンジョン料の分を稼ぐために?」
「いや、ただ思ったより必要になりそうだと思ってね。
それにダンジョン料の元を取るのは何も魔石だけじゃないさ」
「どうするんですか?」
「まあ、錬金術を使えば元を取る方法はいくらでもあるからね。
実際の所、魔石は一つだけで十分だったんだけどせっかくダンジョンに潜るんだし幾つか確保しようと思っただけだ。
ただ、どうやら一個じゃ足りなくなる可能性もあるから一応複数確保しておこうと思ってね」
魔石三個集めて一つ確保して残り二つで銀貨二枚分は用意できる手はずだったんだろうな。
あ、そうだ。
忘れてた。
「クーデルさん」
「何だ?」
「ダンジョン組あ
「おい、なにちんたら歩いてる! 邪魔だ!」
不意に後ろから声を掛けられた。
さっきの喧嘩で負けた人だ。
「すみません、ほら、フレアも道を空けるんだ」
「はい」
僕とクーデルさんは壁際に寄る。
「ふん、いい心がけだ」
そう言って男は走ってダンジョンを潜っていく。
急いでるようだ。
「何だったんでしょうか?」
「さあな? ただ、ああいう輩には関わらないのが一番いい」
「あの人、さっきの喧嘩で負けた人ですよ」
「ふうん、稼ぎをあの騒ぎに乗じて盗まれでもしたのか?」
「まさか」
「いや、割とよくあることだ。
まあ、そんなことより、さっさと魔石を集めて宿に戻ろうぜ」
そう言ってクーデルさんは歩き始めた。
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暫くダンジョンを進むが、魔物が出てこない。
いや、生きた魔物がいないといった方が正しいか。
最初に魔物の死体を見つけたのは、腕が片方だけ転がっているのを見つけたのだ。
それ以降体の一部が地面に埋まっているかのような魔物の死体が沢山出てきた。
ある程度体が見えてくるぐらいまでしか地面に埋まっていない魔物は全て体をばっさりと斬られて殺されたのがわかった。
「洞窟ネズミにスライムそしてゴブリン。
お、ホブゴブリンまでやられてるな」
クーデルさんは関心したように魔物の死体を調べる。
「やはり、魔石は全て取り出されているか」
「さっきの男ですかね?」
「いや、違うだろうな。
直ぐに倒したとしても魔石を回収していたらさすがに追いつく。
恐らくもっと前に来た人物だろう」
一刀のもとに切り伏せられた魔物達が転がっていた。
叩き割ったような死体は、ほとんどない。
まさしく一刀両断、斬るための武器によって残された死屍累々だ。
「誰か知らんが、そのうち追いつくかもしれんな。
もしかしたらさっきのオッサンはもう追いついてるかもしれないしな」
「何故分かるのですか?」
「この洞窟では死体はダンジョンに吸収されるんだ」
「なるほど、さっきから地面に埋まったような魔物の死体はダンジョンに吸収されている途中だったのですか」
「ああ、後、魔物だけじゃなくて人の死体も吸収される」
「本当ですか?」
その情報は聞きたく無かったな。
何か、大きな魔物の腹の中にでも入ったような何とも言えない気分になってくる。
「本当だ。
吸収された者は、天国にも地獄にも行けずダンジョンでさまよい続けるなんて話もある」
「意味ありげな逸話ですね」
「まあ、他にも色々逸話はある……が」
クーデルさんのテンションが下がる。
いや、緊張感という意味ではテンションは上がっているか。
兎に角、ダンジョンで転がっていても不思議ではない死体の中でも最も不穏なものが目に入った。
「あれは、まさか」
「そうみたいですね」
魔物の死体の中に一人倒れているものがいた。
「さっきの喧嘩で負けた人です」
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