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転生生活 魔法都市への道 銀竜亭

「ああ、あそこだ」

「銀竜亭? 大層な名前ですが、意外と悪いとも思えないですね」

「アルヴァンスさんここって高いんじゃ?」


 残金的に大丈夫なのだろうか?

 近づいて来た宿は、明らかにこの町に入って見た宿の中で一番大きかった。

 宿と言うより最早、館と言われたほうがしっくり来る大きさだ。

 しかも、宿の前には門がありそれを挟むように鎧を纏った人が二人立っていた。

 まるで貴族の館を彷彿とさせる印象を受けた。


「驚きだろ?」

「コレほどの宿にする必要は無かったのでは?」

「一応狙われる可能性があるやつが居る以上は安全保障がされているところが一番だからな」


 まだ狙われる可能性があるのか。


「まあ、狙われる理由はなくなってないが動機の方が無いから大丈夫だ」


 と言われてもやはりペンドラゴン領に行くまでに執拗に狙われたせいもあり信じきれない。

 宿の前で止まると鎧を着た人が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ」

「ああ、アルヴァンスの名前で予約していた者だ」

「はい、お待ちしておりました。

 馬車はこちらでお預かり致します。

 中へどうぞ」


 キビキビと行動する鎧の人、そして、宿の中から執事らしき人があらわれた。


「ご案内いたします」


 執事の人が、先導して宿に向かう。

 中庭があるので少し歩かないといけない。

 とはいえ、馬車が必要なほどではない。

 銀竜亭とだけあり中庭にちらほら銀色の竜らしき像が見える。


「予約してたんですね」

「このレベルの宿になると予約するのは当然だ」

「チェックインが終わったらダンジョンに向かってもいいだろうか?」


 クーデルさんが唐突にダンジョンに行きたいと言い始めました。


「ああ、もちろん何か必要なものがあるのか?」

「せっかくだからある程度魔石を確保しておこうと思ってな」

「成る程、それならついでにフレアもつれていったら良いんじゃないか?」


 アルヴァンスさんは、僕を見て言います。


「付いて行って良いんですか?」

「ああ、むしろ人の手は多い方がいい」

「俺は宿でゆっくりしてるから行ってくると良い」

「分かりました」


 軽くこれからやることを相談していると宿の扉の前まで着く、執事の人が扉を開くと中に銀色の大きい竜の像が立っていた。


「驚きだな」

「すごい」

「なんでこんなに竜の像があるの?」

「ありがとうございます」


 ずれた感想と分かっているけど気にせずにはいられなかった。

 執事の人は僕の疑問に無視ノータッチだった。

 扉を抜けてすぐに受付に着く。


「いらっしゃいませアルヴァンス様」

「三部屋頼む」

「かしこまりました。

 部屋番号は、202番、203番、204番になります。

 こちらが鍵になります」

「ああ、どうも、ついでに軽く部屋を見といたほうが良いんじゃないか?」

「いや、それほど時間を掛けるつもりもないしな。

 魔石を集めるっても2、3個あればいい」

「そうか、とりあえず鍵は渡しておく。

 フレアは、203番がいいだろう」


 そう言って僕の方に203番の鍵が渡される。

 クーデルさんは204番の鍵を受け取った。


「さて、じゃあダンジョンに向かおうか」

「はい」

「気をつけてな」

「「はい」」


 そうして僕とクーデルさんは銀竜亭を出た。



 ----------



 ダンジョンの前はいろいろな出店があった。

 ダンジョンにあやかった食べ物屋、ダンジョンに必要な装備品や消耗品を売っている所、あと地図屋なんかもあった。


「クーデルさんはダンジョンは初めてですか?」

「いや、何度か経験はある。

 そもそも聞く必要はないだろう?

 お前もダンジョンに潜ってるんだから」

「え?」

「え? じゃない、ほら初日に飛ばされた洞窟だよ」

「あんな感じなんですか?」

「違うところは多々あるが、あの洞窟と似たようのものだと思えばそこまで大きくは違わない。

 魔物が湧いて出て来るし罠もある」

「それだったら簡単に魔石を集めることができそうですね」

「ああ、だから片手間とは言え魔石を集めに来たんだ」

「しかし、クーデルさんは魔石を何に使うつもりなんですか?」

「何にと聞かれてもな。

 いろいろだ」

「いろいろですか」

「まあ、錬金術に使うのが基本になるがな」

「なるほど」


 つまり素材集めということか。


「そこのお坊ちゃん、お兄さん、どうだいこの薬を買っていかないか?

 魔法が強くなる素晴らしい薬だよ」


 唐突にしわがれ声の老人が声を掛けてきた。

 押し売りだ。


「ん? その薬は」

「おや? 知っているのかい?

 だったら話は早い。

 なんとたったの銀貨五枚で一本買えちゃうんだよ」


 老人が手に持っているそれは赤い薬だった。

 ただ、行商人さんが持っていた薬より黒く濁っている。


「馬鹿にしてるのか?」

「え?」

「劣悪品の薬を錬金術師に売ろうとはいい根性しているな」

「え? は! も、申し訳ございません!」


 そういうなり老人はその場で蹲る。

 いや、正確には土下座をしたのだろう。

 土下座の文化があるとは、驚きだな……感染った。


「その薬を仕入れたのは何処だ?」

「行商人から仕入れました」

「次回から仕入れないことだな。

 後、今持っているものも捨てることだ。

 近いうちにご禁制の品になるだろう。

 持ってるだけで打ち首になるほどのな」


 そんな薬を三本も持ってるクーデルさんは大丈夫なのだろうか?


「ほ、本当ですかい?」

「信じなくてもいいが、それには妖精の血が入っている。

 さっさと捨てたほうが身のためだ」

「わ、分かりやした」


 そういって、おじいさんはそそくさとその場を後にした。


「あれは、捨てないだろうな」

「どうしてです?」

「金貨一枚なんて一般庶民に出せる金じゃない。

 組織だってやっているはずだ。

 混ぜもので量を誤魔化して売っているんだ。

 その元を回収できない限りは捨てることはできない。

 もともとは回復薬とかにやってたんだろうが、より高く売れる『魔力増幅薬』とやらに乗り換えたんだろう」


 険しい顔で去って行ったおじいさんを見る。


「まあ、嘆いていても仕方がない。

 さっさと魔石を集めて宿に戻ろうか」

「はい」

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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