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転生生活 魔法都市への道 赤い薬

遅れてすみません。


 僕はその剣を見たとき金髪少年のことを思い出した。


「これは、もしかして金髪の少年から買いましたか?」


 僕の言葉を聞いた商人は一瞬目を見開いた後、訝しげな顔をする。


「どうしてそれを?」

「いえ、ちょっとした知り合いでして、その剣を使っていたのを覚えていただけです」

「そうですか。

 はい、あなたの言う通り金髪の少年から買い取りました」


 僕の言葉を聞いて得心が言ったように商人は僕の質問に答えてくれた。


「その剣ってどんな効果があるんですか?」


 そう尋ねたのはクーデルさんだった。


「そうですね。

 名前の通りなのですが、まあ、見たほうが分かりやすいでしょう」


 そう言って商人は剣を構えて手を離した。

 すると剣はその場所に固定されたように止まった。


「こうやって浮かせることが出来るという剣です」


 僕が知っている効果と違う。

 いや、けどよくよく考えたらユウはこの剣を『踊る剣ダンシングソード』って呼んでたような。

 商人は『浮遊剣』と呼んでいた。

 この差はなんだろうか?

 見た目は全く同じなので同じものだと思ったのだけど違うのだろうか?


「それだけ?」

「いえ、動かすことはできるにはできるのですが」


 と商人が言うととてもゆっくりと剣が動き出した。


「このように少ししか動かすことはできないんです。

 それに魔力の消費も激しいので長時間は使うことはできません」


 そう言って商人は剣を握る。

 浮遊効果を消したのか一瞬商人の腕が下がった。


「とは言え浮遊効果を使っている間は剣自体重さがないので使い方によっては普通ではできない剣の運用ができること請け合いです。

 浮遊させることができるというのも相手に隙を与えるのに十分でしょう」


 『踊る剣ダンシングソード』と同じ形状で同じような効果なのに動きが違いすぎる。

 商人が商品の機能の説明を省く時は悪い事があるときだけだ。

 あれほど自由自在に操る事ができるのであればわざわざ隠す必要もない。

 もし商人が説明しただけの効果であれば確かに『浮遊剣』と呼ばれてもおかしくはないだろう。


「ほう、驚きの効果だな。

 剣士が使う分には確かに使えそうだ」

「そうですか? 俺にはあまり使えそうに見えないんですが」

「確かに魔法剣として使うのであれば他に強力なものはいくらでもあるが、こういった地味な効果の剣も意外と役に立つ」

「へぇ、そうなのか」

「あれ? クーデルさんって剣士じゃなかった?」


 僕はふと疑問に思ったことを口にした。


「え? あ、ああ、俺の戦い方は純粋な剣士とは言えないからな。

 なにより、剣士と戦ったことがないからそう言う細かいところは分からないんだ」

「そうなんですか」

「ああ」

「なかなか面白うそうな剣だ。

 因みに値段は幾らだ?」

「そうですな。

 金貨百枚と言いたいところですが、この奇縁を活かすつもりで金貨七十枚でどうでしょうか?」


 僕にしては剣を使うことはないのでたとえ金貨一枚であっても買うことはないのだけど果たして敵性な値段なのかぼったくっているのか。


「まあ、それを買うと言うにはまだ他の商品も見たいしそれからでいいんじゃねえか?」


 アルヴァンスさんの提案により僕達は商人が出す武器、防具、装飾、薬品等様々なものを見せて貰った。

 その中に一つ気になるものがあった。

 何処かで見たことのある赤い薬だ。

 何処で見たかは覚えていないが妙に気になった。


「おや、この薬が気になりますか?」


 商人は僕が興味を示したことに気がついたようだ。


「こちらは『魔法増幅薬』という割と最近出回っている薬です」

「『魔法増幅薬』? 魔力増強剤じゃないのか?」


 そう質問を飛ばしたのはクーデルさんだった。


「ええ、最近出回っていると言っても量は少ないのですが、魔力増強剤とは比べ物にならないほど魔法の威力を強化する薬です」

「は?」


 クーデルさんは素っ頓狂な声を上げる。


「ちょっと見せてもらっていいか?」

「はい、落とさないよう気をつけてくださいね」 


 クーデルさんは険しい顔で薬を睨む。

 そして商人に尋ねた。


「この薬は幾らになりますか?」

「そうですな。

 一本金貨一枚となっています」

「買うよ」


 そう言って無造作に腰の金貨袋から金貨を一枚取り出した。


「ありがとうございます」


 商人は金貨を恭しく受け取った。

 金貨を渡すとクーデルさんは瓶を開けて臭いを嗅ぎそして、手の甲に一滴だけ赤い薬を垂らしそれを舐めた。


「なるほどね」


 何かを納得したクーデルさんは


「ところで持っているのはこの一本だけか?」

「いえ、あと三本ほどありますが」

「全部買うよ」

「ありがとうございます」

「ただ、次からは仕入れないことをおすすめする」


 クーデルさんが言ったことが理解できないのか商人はポカンとした表情を浮かべた。


「これでも俺は錬金術師の端くれだからわかるんだが、この薬妖精の血が使われている。

 この意味が分からないわけではないだろう?」


 その言葉を聞いた途端商人はみるみる顔を青くさせていく。


「こ、このことは」

「ああ、大丈夫、誰にも言わないさ。

 知らなかったのだから仕方がない」


 それほどにヤバイものだったのか。


「この薬が流行ってるって言ったよね?」

「は、はい、魔法都市ではこの薬がかなりの量で回っています」

「となると『氷雪魔獣の森』が大変なことになってるかもしれんな」


 商人の顔はもう蒼白と言った状態だ。


「驚きの情報だな」


 アルヴァンスさんが会話に入ってきました。


「ああ、そうだろうな。

 下手したら魔法都市が氷雪魔獣に襲われているかも」

「いや、そっちじゃなくてな。

 クーデルが錬金術を使えるということに驚いているんだ」


 アルヴァンスさんの当て外れの驚きに絶句していると商人が恐る恐る尋ねてきた。


「あ、あの、魔法都市は大丈夫なんでしょうか?」

「お前さんは、魔法都市から来たんだよな」

「ええ、そこでその赤い薬を仕入れました」

「その時は大丈夫だっただろう?」

「はい、特に怪しい雰囲気はありませんでした」

「なら大丈夫だろう、そもそも『氷雪魔獣の森』は結界に覆われているからな。

 それに魔法都市には竜クラスが五人は居る。

 氷雪魔獣が魔法都市を襲ったとしても大丈夫だろうよ」


 アルヴァンスさんの言葉に安堵したのか盛大に溜息をついて多少は顔色がましになった商人。


「まあ、でも次からは仕入れないようにな」

「はい」


 その後、僕は回復薬と魔力回復薬を買いアルヴァンスさんは一冊の本を買ったのだった。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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