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転生生活 魔法都市への道 行商人

 その日の朝は、空全体がどんよりと曇っていた。


「うわあ、嫌な天気だな」


 クーデルさんが、いかにも嫌そうな表情をする。


「クーデルさんって雨が嫌いなんですか?」

「そうだな。

 どうしても行動に制限がかかる雨の日は苦手だ」


 雨が降れば地面がぬかるんで足が取られるからだろうか?

 馬車の車輪がぬかるみに嵌って動けなくなることを思い出すと僕も嫌な気分になる。


「お前ら、支度は出来たのか?」


 馬車に荷物を積み終えたであろうアルヴァンスさんが声をかけてくる。


「はい」

「ああ、大丈夫だ」

「ならさっさと乗り込んじまえ、どうせ雨が降ってきたらどうしても足が遅くなる。

 降っていない今のうちに距離を稼いでおこう」

「わかりました」

「わかった」


 幌馬車に乗り込みアルヴァンスさんが御者をして馬車は走り出す。



----------


 雨が降り出したのは出発してしばらくしてのことだった。


「やはり降り出したか。

 思ったより激しいな驚きだ」


 アルヴァンスさんが言うのももっともで土砂降りのせいで最早道はぬかるみだらけだ。


「思った以上にまずいな」


 先程からぬかるみに車輪がはまったのが数回、いずれも馬の引く力だけで抜けれたが、進む速度が出発時に比べるとかなり遅くなっていた。


「この調子で次の町までいけますか?」


 僕は懸念をアルヴァンスさんに伝える。


「いや、おそらくどこかで野宿する必要がありそうだ。

 まあ、野宿って言っても本格的にテントを張る必要はないがな。

 適当な場所で休憩を取るだけだ」


 並木道を走らせながらアルヴァンスさんは、懸念に答えてくれた。

 曇天の空のせいで光が薄く、雨のせいで視界が悪い。


「お、あそことか良いんじゃねえか?」


 クーデルさんが指し示す方を見ると大きな木が見えた。


「あの木の下なら雨も多少はましになるだろう?」

「驚きだな。 名案だ」

「道から外れるけど大丈夫?」

「ああ、外れると言っても見えるほどの距離だし大丈夫だろう」


 アルヴァンスさんが最終的に決定を下し若干道から外れる。

 道から外れると馬車がガタガタ大きく揺れ始める。


「気をつけろよ誰も通らない所を通るからかなりゆれるぞ!」

「それ、道かあら外れる前に行って下さい!」

「知らなかったのか?

 驚きだぜ。

 馬車で均されていない道ってのはだいたいこんなもんだ」

「直ぐに付くから少しぐらい我慢しろ」

「わ、わかりました」

「あんまり喋ると舌噛むぞ」

「は、いっ!?」


 舌を噛んでしまった。

 あまりの痛さに悶絶する。


「~~~!」

「あーあー、ほらこれでもんどけ」


 そう言ってクーデルさんは一本の草を差し出してきた。


「ほら口を開けろ」


 言われるがまま口を開ける。


「飲み込むなよ効果が半減するからな」


 僕は頷いて口を閉じる。


「っ!」


 苦い、苦すぎる。

 何だこの草苦すぎる。

 あまりの苦さに吐き出したくなるが、クーデルさんに頭と顎を固定させられた。


「ん~~~!」

「我慢しろ、ほら、傷みが引いてきただろ?」

「ん~~~!ん?」


 たしかに傷みは引いてきたように感じるけど今度は口の中に苦味が響き渡っているせいで本当に痛みが引いているかいまいち効果が実感できない。


「しばらく食んでないと傷みがぶり返してくるから」

「ほう、驚きだな。月雫草ムーンドロップハーブとは、しかし、そんなことに使っていいのか?」

「よく知ってますね。

 まあ、備蓄が結構あるので大丈夫です。

 割と簡単に手に入りますし」

「そうなのか?」

「ええ、市場には出回りませんが、ペンドラゴン領で栽培していますし」

「へえ、それは知らなかったな。

 まさか他の素材も育ててたりするのか?」

「そうですね。

 何を栽培してるかとか詳しくは教えられませんが、錬金術に必要な素材は可能な限り栽培したりしていますね」

「驚きの情報だな」


 そう言った雑談をしているとクーデルさんが言っていた大きな雨宿りによさそうな気に近づいてきた。


「お、もうすぐだ。 ん?」

「先客がいますね」

「ろんなひろれふか?」

「フレア、何言ってるかわからん」


 あなたが草を咥えさせたからね!


 まあ、文句は言わないけど、先客が気になるので御者台がある方から顔を外に出し確認する。

 先客は、大きなリュックを背負った太った男性だった。

 カールした髭がかなり特徴的な人物だ。


「おやおや、あなた達もここで雨宿りを?」

「ああ、そうだ」

「それはそれは、奇遇ですな。

 ああ、申し遅れました私の名前はヘルベルと申します」

「コレはご丁寧に、私の名前は、アルヴァンスです。

 この青年の方がクーデルで、少年のほうがフレアと言います」

「アルヴァンスさんにクーデルくんとフレアくんですか。

 ふむ、これも何かの縁ということでどうです?

 私の商品を見ていきませんか?」

「上から失礼だが、どんなものがあるんだ?」

「いろいろですな。

 回復薬はもちろんのこと武器に防具に装飾具などなど色々ありまする」

「そんなに沢山持っているようには見えないけど」

「ははは、よく言われますな」

「まさか、拡張袋なのか? その背負袋は」

「イグザクトリィでございます・・・・・・!」

「い、いぐ?」

「……その通りでございます」


 何だこの人、何かノリが変だ。


「ツッコミがいないのは少し寂しいですが、一人で野宿になるかと思っていたので少々安心いたしました」

「一人で? 護衛は?」

「いませんね。

 まあ、寂しいだけで必要はないのですが」


 気にした風もなく答える。

 嘘を言っているようにも見えないし嘘を言う必要もない。

 身軽だからなのか襲われる心配がないのか。

 どちらにせよ目の前の商人はかなり変わった人であることは僕にもわかった。

 アルヴァンスさんが、商人に尋ねる。


「で、どんなものがあるんだ?」

「そうですね。

 では、目玉商品から見てもらいましょうか」


 そう言って商人は荷物を下ろしてその中から一振りの剣を出してきて鞘から引き抜きながら剣の説明をし始めた。


「ごく最近仕入れた剣でしてな、名前は『浮遊剣』と聞きました」

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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