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転生生活 魔法都市への道 宿場町

 ペンドラゴン領を出てから初めて宿場町に立ち寄った。

 ここまで来るのにペンドラゴン領に向かう時はあれだけ襲撃があったのが嘘のように全く襲撃がない。

 宿をとり一服することになったので、僕はベッドに腰掛けて、室内の机に装備を広げたアルヴァンスさんに尋ねる。

 因みにクーデルさんは錬金術の触媒を仕入れに行ってくるとのこと。

 買いに行って来ると言わなかったあたりに思うところはなきにしもあらずといったところだけど、気にしないことにした。


「アルヴァンスさん、本当に魔法学校に戻っても大丈夫なんですか?」


 エリイに会えるとは言え一度は牢獄に閉じ込められたことを思い出しまた捕まるのではないかと思ったので聞いてみたのだ。

 もちろん、何らかの対策は取られているのだろうけれどやはり不安なものは不安だ。


「ああ、大丈夫だ。

 心配なのはわかるが、まあそこは俺とマリコ伯爵、そしてフォーミュさんを信じろ」


 と言われてしまえば、それ以上言うのは無駄なだけだと判断する。


「魔導書に関していえば緘口令が敷かれているから一般市民が知るところではないし生徒たちもそのことは知らない」

「僕が知ってて大丈夫なんですか?」


 まあ、濡れ衣がなかったら知りようもなかったんだろうけど。


「大丈夫の何も巻き込まれたとはいえ当事者の一人だからな、仕方ねえんじゃねえの?」

「けど、なんで僕が濡れ衣を着せられることになったんですか?」


 いくら比較的大きい魔力を持つと言っても所詮は妖精クラス、魔導書があった場所なんてわからないし、なにより盗んだのならとっとと逃げているだろう。

 森の近くにいたからと言うだけで捕らえられたこと自体不自然だ。


「フォーミュをはめるためと言ってもおそらくお前は納得できないだろう?」

「はい、フォーミュさんの手のものなら捕まえてやったと言うならわかるんですが、ぽっと出の僕がやったことにするというのは難しいのではないですか?」

「まあ、普通はそう思うよな、光魔法の才能の塊とは言えどこぞの田舎からやってきた十歳児など本来そんな冤罪候補になることすらありえないからな」

「だったら何故」

「まあ、一つにお前が捕われた理由はほとんど言いがかりだ」

「え?」


 そんな曖昧なことで僕は牢獄にぶち込まれたの!?


「言うなれば手札を得るために強引な手段に出たということだ」

「つまり、あのまま捕まっていてももしかしたら僕の無実は」

「晴らせただろうな」

「だったら」

「だが、おそらくなんやかんやと言いがかりをして牢屋にぶち込んだままにするだろうな」


 僕は、それを聞いてマリコさんの理不尽さがマシに感じてしまった。

 まあ、直ぐに出れたとは言え、マリコさんにも問答無用で洞窟にぶち込まれたんだけど。


「お前が、どこぞの村出身だったというのも影響している」

「嫌な情報ですね」

「まあ、そう思うだろうな」

「しかし、僕を助けるタイミングを見計らえば魔導書盗難事件の濡れ衣は着せられなかったのではないですか?」

「いや、助けられるタイミングはあれがぎりぎりだった」


 アルヴァンスさんは声を落とす。


「もう少しで結界が展開されていたからな」


 アルヴァンスさんの言葉を聞いて疑問に思った。


「僕にそれほどの価値がありますか?」

「ああ、そうだな、洗脳でもして味方に引き入れられればかなりのアドバンテージになる」


 本当に? っていうか洗脳ってまた物騒な。


「最悪殺してしまえば、自分の息子が光の妖精クラスで一番になるしな」

「さすがにそれはないと思う」


 たかが、妖精クラスで一番をとるためにそこまでするかな?


「まあ、巨人クラスや竜クラスで一番になるためだったら分かるとか思うんだろうけど、一部の貴族にとって一般市民の命なんて家畜同然だからな」

「なるほど、家畜に超えられると貴族のメンツが保てないとかそんな感じ?」

「ああ、その通り」

「酷い」


 子供が子供なら親も親だな!


「ああ、俺もそう思う。

 だから、釣った」


 その言葉に僕は首を傾げる。


「正直に言うと今回の件は別にマリコ・ペンドラゴンに頼らずとも問題はなかったんだよ」


 続いて出た言葉に僕は唖然とした。


「じゃああの逃走生活も」

「ああ、必要なかった」

「じゃ、じゃあ何のためにあの辛い生活をしたのかわからないじゃないですか」

「だから、釣りなんだよ」


 沸騰しそうになる頭を冷やすために深呼吸をする。

 頭がある程度冷えたら、釣りという言葉を考えてペンドラゴン領で起きたことを思い出す。


「あの宣戦布告と言うのはつまり釣りが成功したということなんですね」

「はっ、その通りだ。

 相変わらずだな」

「どうも」


 喧嘩を吹っかけてもらうために敢えて火種を預かったということか。


「まあ、実は他にも理由はあったりする。解るか?」


 他にあった大きなことと言えば、


「紋章術ですか?」

「おお、その通りだ」

「巨人クラスで初めて習うとかスフィリアさんから聞いたんですが」

「それは正しい情報だ。

 巨人クラスになると詠唱術だけでは追い付けない部分がある。

 だから紋章術の習得をするわけだ。

 紋章術と詠唱術両方を使える物をわが国では魔導士と呼んでいる。

 と言うのは知っているだろう?」

「ええ、それを証明するための試験があることも知っています」

「うんうん、話が早くて助かるね。

 下手な貴族より頭が回る」


 そうかな? まあ、自分のことを周りがどう評価するかなんてわかったものじゃないからね。


「ところで、アルヴァンスさん」

「なんだ?」

「僕がまたあのファブリオン家に狙われないということはありますか?」

「正直、わからんだろうな」

「え?」

「最初はな流石に高位の貴族がそんな馬鹿な真似をするとは思わなかったんだ。

 だが、何を思ったかガスト・ファブリオンは実行した」

「それって、ファブリオン家がどう動くか分からないってことじゃないですか!」

「けどまあ、そこも大丈夫だ」

「もしかして、また釣りですか?」

「ああ、そういうことだな。

 まあ、餌は取られないよう注意するが」

「はあ」


 僕はあまりの前途多難さにため息をつく。

 なんだってこんなに面倒臭いんだ。

 魔導書なんて本物を触ったことすら無いのに、


「まあ、なんだ。

 元気出せ」


 僕を励ましてくれるアルヴァンスさんには悪いけどやはり気が重いものは重い。

 これで、エリイに何かあったらと思うと自分がどんな行動をとるか自分でも想像がつかない。

 そんなことを思い浮かべて振り払うように首を振り明日の事を考えるのだった。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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