転生生活裏 とある貴族邸にて
遅れてすみません。
ストックが切れて涙目です。
たすけてドラ〇も~ん
「で、どうだった?」
その男はとある屋敷の執務室でワインを飲んでいた。
貴族でも上位に所属するのだろう、上質な衣服を身に纏っている。
「はっ! そんな者は来ていないと白を切っているようです」
兜をわきに抱えたフルメイルの男が答える。
フルメイルの男の顔は慣れごとに親しみながらも信念を持っている者特有の顔つきだった。
その答えに上位貴族であろう男が鼻を鳴らす。
「ふん、魔女め、まあいい、あのぽっと出の女に痛い目を合わせる口実ができたな」
貴族の男は口を歪ませる。
「あの魔女に手を出して大丈夫なのですか?」
フルメイルの男が言うのも無理はない。
曰く一人で万の軍を破った者
曰く一人で万の軍を作り出す者
曰く竜を従え空を駆る者
その功績を挙げれば片手では足りない。
「ああ、あくまでも同じ国の人間に『破軍』の魔法は使えんだろう。
それにゴーレムどもは倒す算段がある。
あとは、子爵や男爵どもに声をかければかなりの数が揃う。
それで、勝てば査察団を入れることが出来る。
そうなれば隠し切ることはできんだろう」
貴族の男は確信したように言うが、フルメイルの男の不安は払拭されない。
何せ矢面に立たされるのが自分なのだ。
まさしく竜と戦うのと同じものだとひどく意識してしまう。
「自分の国の兵士を極端に減らすような戦い方はできんはずだ。
もしそれをするのであればこの国でのあいつの立場はなくなる」
フルメイルの男は貴族の男の浅はかさにため息をこらえつつ
「では、私は用意をいたしますのでこれで」
「ああ、よろしく頼んだ」
そう言って部屋から出てこらえていたため息を吐き出した。
「どうしたの?」
そう声を掛けられ驚く
「大丈夫か? 団長さん」
そう言われて、フルメイルの男が声の主を確認するとまだ十五、六歳ほどの少年が立っていた。
「ああ、大丈夫だ」
この少年は、貴族の男が囲っている食客だ。
この少年は先日、フルメイルの男を倒しているためその力は確かだ。
しかし、それだけだ。
将来とても強くなるだろうが実績が足りなすぎるため実戦では使うことはできない
冒険者などの個人技能が重視される職業ならまだしも軍は集団がものをいう戦いだ
個人の力がどれだけ強かろうと命令を聞かないものは無用なのだ。
「そうか、まあ、髪の毛には気をつけろよ?
無茶苦茶な人の下に付いてるまじめな人って大抵禿げるから」
そう言ってフルメイルの男とすれ違いに執務室に入って行った。
「しかし、侯爵様もよく身元がはっきりしない少年を屋敷に入れたな」
いくら息子の命の恩人とは言えよく信用する気になったものだそう思いながらフルメイルの男はその場を後にした。
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