転生生活5
魔法適正が判明する回です。
「ごめんね、黙って付いてきて」
幼なじみは落ち込んだ様子で話す。
その様子が、少し不憫に感じて、自分の本音を漏らす。
「いや、いいよ、実は、付いてきてたらいいなとか思ってたりしてたんだ」
「本当?」
「ああ、村のことがあるから僕一人で行こうと思っていたんだけど、護衛の人たちが楽しい人達だけど、やっぱり少し寂しいのも確かだったんだ」
まあ、これから魔法を学べるから、そのことを考えると寂しさなんて吹き飛ぶんだけど、やっぱりお父さんやお母さん、幼なじみと別れるのは辛いものがあった。
「そう、だったの」
「ああ、だから、帰れなんてことは口が裂けてでも言えないよ」
「あ、今、言った~」
「む、例えだよ例え」
「ふふ、わかってるわよ」
ちょっぴり意地悪な幼なじみに心を癒やされつつ、馬車の中で本を広げる。
「それは? いつも読んでるのと少し違うわね」
「うん、メイさんから魔導書の写しを借りてるんだ」
「魔導書ってあの?」
「うん、未熟な魔法士が読むと発狂するというあの魔導書」
「読んで大丈夫なの?」
「ああ、魔導書の写しは、魔導書の簡易版みたいなもので、大きな効果はないんだ」
「じゃあ、なんで読んでるの?」
「この魔導書の写しでも読む者に多少の精神ダメージが入るんだ、だけど、まあ魔導書を読むための予行演習みたいなものなんだよ」
「へえ、けど魔法士なのになんで魔導書なんだろう」
「ああ、魔法士と言うのは一般的に魔法を扱う者の称号で実はいくつか階級と種類があるんだ」
「そうなの」
「うん、基本的な魔法士、魔法士の先生の魔導士、そして最高レベルの魔導師、階級はそんな感じ、そして魔導師が創るから魔導書と呼ばれるんだ。あと例外的な存在の魔術師というのもいる」
「ふーん」
「まあ、僕があったことがあるのは魔法士だけなんだけどね」
「けど、フレア君の魔法ってすでに魔法士レベルあるんでしょ?」
「そうみたいだね」
「そこは間違いないよ」
不意にメイさんが話に入ってくる。
「私が会ったことのある魔法士の中でも中レベルの魔法を使っているから、とても優秀だよ」
「さすが神童だね」
「もう、それは言わないでって言ったじゃないか」
神童とか恥ずかしい。
天才でもこそばゆいのに
「魔法士になるには最低限『始解の魔導書』は読めないといけないけどね」
「メイさん、『始解の魔導書』を読むと、魔法士として一段上のクラスに行くとかいう話でしたよね?」
「ええ、魔法学校の存在理由の一つが『始解の魔導書』よ」
「ふーん」
「まあ表立って置いてあるものは偽物の魔導書なんだけどね」
「「え?」」
「そう言えば、エリイは魔法の素質があるかどうか調べたい?」
「ちょ、ちょっと待って」
僕が待ったをかける。
「偽物の魔導書って何!?」
「うん? みんな知ってることだよ? 試験にも使うし、本物の魔導書はおんぼろだし奇麗なほうが威厳もあるでしょ?」
衝撃の事実……ではないのか。
「まあ、そんなことよりエリイちゃん魔法の素質があるかどうか調べたい?」
「え? そんなことできるの?」
「できるよ。 フレア君、魔導書の写しをちょっと返して」
「……はい」
そう言えば旅の魔法士から似たようなこと聞いてたな。
メイさんは、僕から魔導書の写しを受け取ると馬車の床に置く、馬車はガタガタ動くので本もがたがた動く。
「まず、魔導書の写しに手をかざします」
「動いてますけどいいんですか?」
「気にすることはないよ、魔導書解読じゃ無いんだから」
「この魔導書の写しを書くためにやることが魔導書解読だね」
「そう」
メイさんの話に補足を付ける。
「少し怖いかな」
「じゃあ、僕が先にやろうか?」
「フレア君、君はやらなくても、……まあ比較は必要かな? それならまず私から手本を見せようか」
そう言ってメイさんは魔導書の写しの地の部分を自分に向けて両手を本にかざす。
すると魔導書の写しが燃えるように輝き出す。
「魔法の属性適性もついでにわかる優れものだよ、魔法の勉強にも使えるし最強の1冊だ ちなみに私の適性は炎だよ」
「売り文句みたいですね」
「まあ、じっさい売り文句だしね」
売っているのか魔導書の写し
「まあ、魔法触媒にも使えるし万能の一品だよ。ただの写しなのにね」
「一応、魔導書の凄さを謳った話は聞いたことありますが写しだけでこれですか」
すごいな魔導書!
「だからこそ、厳重に管理されてるんだよ。 はい、次はどっち?」
「僕がやります」
僕がそう言うとメイさんは魔導書をこちらに向ける。
「はい、両手をかざして」
言われたとおりに手を魔導書の写しにかざす。
するとさっきより明るく光るっていうか眩しい。 真っ白に光る魔導書の写しを見てメイさんは驚きの身動ぎで鎧を鳴らした。 ブライトさんやグレイさんの驚いた声が聞こえた。 顔は光で見えない。
「どうしたんですか?」
「ふむ、適正は、光かな?」
「疑問形?」
「そうだね、属性の種類は基本的に炎、風、水、雷、土の5つで、特殊な光と闇があるんだよ、ただ光の魔法士は意外と少ないし、まあそれはともかく多分魔法士の中で一番魔力が多いね君」
「やったね」
「うん」
「リアクションが軽いなぁ、まあ実感がわかないか」
「フレアくんが天才なのはわかっていますから」
「絶大な信頼感だね、最後にエリイ君の番だ」
メイさんは魔導書をエリイの方へ向ける、疑問形?と聞いたのはスルーされた
「はい、手をかざして」
「はい」
エリイが手をかざすと魔導書の写しから黒いモヤが出てきた
「きゃあ!」
「ほう!」
「む!」
「ん? どうした?」
どうやら、さっきよりみんな驚いているようだ。
ブライトさんはエリイを凝視して、グレイさんは目を見開いている。
そして、メイさんは鎧の兜を外す。 メイサンビッジーン
オブライエンさんは騒ぎを聞いて馬車を止めた。
「黒! 闇の適正!」
メイさんは遂に見つけたと言わんばかりに叫びます。
「おいマジかよ」
「まさか! なんとも意外だな」
「ほう! 闇の適正か! なるほど、これはとんでもないことになってるな」
あの、みなさん置いて行かないでください。
一応、魔法については学んではいるのだが、いかんせん旅の魔法士からの聞きかじりと横流しの魔法に関する書物しか読んでないのでみなさんの反応についていけません。
「どうしたんですか皆さん」
一番最初に黒いモヤに驚いたエリイは、むしろみんなの反応に気圧されての驚きに変わったようだ。
「闇の適正って驚くことなんですか?」
「フレア君は、知識が不安定だな、まあその通りだ」
オブライエンさんは、目を輝かせていいました。
「女性の闇の適正が今のところ君だけなんだよ、エりイ君」
「え! そうなんですか?」
「そうなんです!」
「落ち着け、メイ、そして兜をさっさとかぶれ」
「わ! わっわ!」
メイさん慌て過ぎだろう。
ひとまず騒ぎが収まり再び馬車を動かすオブライエンさん
「メイさん美人なのになんでそんな格好を?」
エリイがメイさんに問います。
「美人だからこそだよ。 冒険者は下手をすると命にかかわるからね。 美人なら集中して狙われるなんてこともあるみたいだ」
「でも、それだったら兜とかじゃなくても顔を隠せばいいだけじゃないの?」
「接近された時のためでもあるみたいだよ」
さっき気付いたことを言ってやる。
「そうそう」
「ふーん、魔法士って全員、ローブ姿なんだと思ってた」
「正式な服装はそうだよ」
「それっていつ着られるんですか?」
「魔法学校卒業後だよ」
魔法士の資格のようなものなのかな?
「まあ、魔法士と言っても本物と偽物がいるからね」
「偽物ですか」
「うん、この盗賊魔法士はおそらく資格を持っていない、けれど魔法を使える以上、魔法士と便宜上呼ばれるんだ」
「じゃあ、僕も魔法士と呼ばれることもあるんですか」
「うん、君の村では、どうも国に認められる魔法士だけにしか言わないと思っていたみたいだね。 だから、最近、魔法士の細かいランクを決めようとか言う話も出てきている」
「確かにややこしいですよね」
「そうなんだよ、魔導書を読めるレベルまで上げるのが魔法学校の目的なんだけど、いまのままじゃ読めた者と読めない者の差がわからない」
「けれど、そんなことしたらイジメとか出てこないですか」
「イジメ? うーん考えたことなかったな。 そうか、上の階級の者が下の階級の者を蔑む状況は確かに好ましくないね」
ふと、エリイの方を見ると面白くなさそうにしている。
「どうしたのエリイ?」
「別にー」
語尾が上がっているので明らかに拗ねていることがわかる。
やっぱりかわいいなエリイ。
「あはは、ごめんねエリイちゃん、好きな人取っちゃって」
「そ、そんなんじゃないもん」
拙作をご覧頂きありがとうございます。
よろしければ評価の程よろしくおねがいします。
どうしてそんなに下手なのか