転生生活 紋章術
クーデルさんが到着した頃には魔法陣についての考察をしているところだった。
セバスチャンさんから、ペンと紙を借りて簡単な図形を書いてそれを魔法陣として使ってみたけれど失敗。
魔力を吸収する仕組みはわかったけれどそれ以外はさっぱりだった。
体から魔力を外に流すだけの仕組みなので何の意味もない。
「おお!? もう魔法陣を作っているのか!?」
クーデルさんの第一声はそれだった。
この程度なら誰でも出来るだろうに何を驚くことがあるのか?
「そもそも、この短期間であの洞窟から出てくる事自体おかしいんだよ!」
それに関しては、洞窟で出会ったあの少年、ユウがいたからだ。
魔法陣に関しても似たようなものだ。
魔法陣は基本的に魔法吸収型が基本で同じ構築の場所を紙に書き出しただけで、大したことはしていない。
「で、どのくらい魔法陣を書けるんだ?」
「これだけです」
「まあ、流石にそうだろうな」
魔力吸収陣とも呼べる魔法陣は構造は至ってシンプル。
丸に正三角形を埋めるだけでオッケーだ。
書こうと思えば誰でも書ける。
「だが、魔法陣を習ってないやつが、効果をわかって書くだけでも十分すごいからな」
納得は行かないけど誉められているようで悪い気はしなかった。
「あの洞窟はもしかして訓練場ですか?」
待っている間に思いついた考えを口にする。
「ああ、その通りだ。
だが、一日で出てこれるとは思いもしなかったがな」
そう言ってクーデルさんは快活に笑う。
「俺の時は、一週間はかかったからな。
どうやってあの罠だらけの場所を抜けたんだ?」
「僕は何も洞窟の中で僕と同じぐらいの年のユウと名乗ってた少年のおかげです」
正直に話すことにした。
別段、困ることもないし。
「そうか、いや、待て、あの洞窟は師匠が送り込まないと入れないようになってたはずだぞ?」
「壁を突き破って出てきたので多分正規の入り方ではない方法で入ってきたんだと」
「壁を? いや、だってあそこは地下だぞ? どうやって?」
「僕が聞きたいぐらいです」
「で、そのユウとやらは?」
「洞窟の最後の魔法陣の前で白い鎧の人が出てきてそれの相手をしていると思います。
僕がいると足手まといにしかならないと思いましたしね」
今思い出すだけでも異様な雰囲気を纏っていた。
神秘的としか言いようがない独特の雰囲気。
「白い鎧? 俺の時はオーガだったんだが」
クーデルさんは首を傾げます。
「いや、オーガは僕の時も出ましたよ。
オーガを倒した後に白い鎧の人が現れたんです」
僕の言葉を聞きますます首を傾げるクーデルさん。
「まあ、わからないことは師匠にでも聞くのが一番だな。
次点でスフィリアだな」
マリコさんはどうかわからないけどスフィリアさんはなぜか色々知ってそうな気がするので頷く。
「まあ、俺がここに来た理由を説明しなきゃな」
そう言ってクーデルさんは腰に掛けている剣を取り出す。
「俺が使う魔術は、この剣を使うんだ」
僕は、その剣を凝視する。
見た目から普通の剣でないことがわかる。
まず、持ち手が曲がっているのだ。
なぜ、わざわざ曲げているのかは分からない。
だが、その形状が前世で言う銃に近いものになっているのだ。
しかもトリガーまで付いている。
おそらく銃と同じでどこかから弾を発射するのだろうと思い剣の刃の部分を見る。
剣の構造に銃を乗せたような形状をしている。
「名前は、魔術剣『フリード』まあ、特殊な分メンテナンスが大変なんだが、俺にとっては相棒みたいなものだ」
「で、ここに来た理由は?」
「分かってるってちゃんと順をおって説明するから」
盛大に脱線したよね?
「俺の剣は、お前が洞窟で見た魔法陣を利用して作られたものだ」
「ふうん」
「他の二人もそれぞれ魔方陣を利用した物を使っている」
「もしかして鎧の人たちって?」
「鎧の人たち? ああ、鎧ゴーレムのことか。
ああ、もちろんこの魔方陣を応用するとあんなこともできる」
思ったよりすごいことを聞いたので驚いた。
あの鎧の人たちは、魔方陣で動いていたのか。
「もちろん欠点もあるが、まあ、お前がこれからやることは魔方陣の使い方について学ぶことだ」
「魔法学校では魔方陣を習わないの?」
「そうだな、巨人クラスの内容だ。
それでも完全に習得できる人は少ないが、ああ、そういえば魔方陣を使う技術のことを紋章術と言うのは知っているか?」
「いや、知らない」
「詠唱術に関しては?」
「知ってます」
さすがに、普段使いしている魔法の起動方法の名前は知っている。
「この詠唱術と紋章術二つを完全に習得した者を魔導士と呼ぶんだ。
まあ、紋章術に関してはあの学校では機密扱いだからな。
知らなくても気にするんじゃねえぞ?」
「分かりました」
「俺が来た理由は紋章術をお前に教えるためだ
本来は師匠が教えるべきなんだが、忙しいから俺が、基本的な部分を教えることになった。
よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします」
そうして、僕は、新たな魔法の起動方法である。
紋章術を習うことになった。
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