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転生生活 洞窟探索

 幾何学模様は、ユウと名乗る少年に習って魔法陣と呼ぶことにした。

 ただ、僕の記憶にある魔法陣は『九個の枠に数字を並べて全てのビンゴした和が同じもの』だったので違和感があるが、しかし、彼は、この魔方陣についてよく知っているようなので彼を真似て魔法陣に乗る。

 すると魔法陣が光り次の瞬間風景が変わった。


「お、来たな」


 どうやら、先に行って待っていてくれたようだ。

 少しだけホッとするが、次の瞬間ぎょっとした。

 着いた場所は小部屋になっていて彼の後ろにとても沢山の緑の人が倒れていたからだ。

 そしてそれ以上に剣が緑の人に刺さっていたり、転がっていたりしている。


「俺が先に来てよかったな。

 モンスターハウスになってたぞ」


 意地悪そうな笑みを浮かべる金髪の少年、


「これ全部一人でやったんですか?」


 こちらにワープして僕が来るまでの間に殲滅したとなれば竜クラスの魔法士レベルの力を持っていることになる。


「ああ、そうだ。

 どうやったかは、あ~、そうだなしばらくこのダンジョンを一緒に進むことになるだろうし直接見る機会もあるだろうから説明はしない。

 まあ、百聞は一見にしかずってやつだな」


 イタズラな笑みを浮かべたまま先に進もうとする金髪の少年。

 心強いけど、得体が知れなすぎて怖い。

 小部屋から一つだけ奥に続く道になっていた。


 しばらく、ユウからこの世界のことを聞かれて僕が分かる範囲で答えていると分かれ道に行き当たった。

 分かれ道の間には看板があり入り口と出口と書いてあった。


「ん? なあ、これなんて書いてあるんだ?」

「読めないの?」


 魔法陣は読めたのに?


「ああ、そうだな読めない」


 苦笑いを浮かべるユウを首を傾げつつ見つつ。


「左が入り口、右が出口って書いてる」


 と答える。


「じゃあ、右だな」


 当然そうだろう。

 そうでなかったらここでお別れになるだけだけど


「しかし、ここは面白いな」


 唐突にそんなことを言うユウに対して疑問を投げかける。


「何処が面白いんですか?」

「これほど多彩な魔法陣を仕掛けるのは骨が折れるだろう」


 その言葉に僕は首を傾げる。

 魔法陣はこの人が出てきてから一つしか見ていない。

 多彩と言うほど魔法陣はなかったと思うんだけど。


「ああ、お前が来る前にめぼしい魔法陣は排除したから何を言ってるかわからなかったか」


 僕の沈黙に対してユウは、すぐに気が付いたのだろう、僕が疑問に思ったことを的確に答える。


「君って一体、

『ゲギャギャギャー!』


 何者? そう尋ねようとしたとき

 耳障りな声が聞こえてきた。


「この声は」

「ああ、ゴブリンだな」

「ゴブリン?」

「なんだ、知らないのか? いや、この世界では呼び方が違うのか。

 何て呼んでるんだ?」

「緑の人?」

「緑の人って多分違うと思うな」


 ユウは、困ったように笑いながら頬を掻く。


「まあ、便宜上ゴブリンとひとまず呼ばせてもらうが、知らないってことはこの世界には、ゴブリンが蔓延っているわけではないのか?」


 何か納得したように頷いている。

 しかし、言い方が気になるこの国やこの地域ならわかるけどこの世界って妙な言い方だな。


 そんなことを考えていると、さっきの声の主であろう緑の人、もといゴブリンが現れた。

 五匹の集団だ。


『雷の矢よ敵を撃ち抜け』


 先制して敵を雷の矢で仕留める。


「なるほど呪文詠唱か。 ゴブリンはまだまだいるようだし俺の番だな」


 ユウの言う通り倒したゴブリンの後ろから違うゴブリンが出て来る。


『剣よ』


 ユウがそう唱えると右手を頭上に掲げる。

 すると彼の右手に幅広の西洋剣が現れる。

 大人用の剣のようでユウの背丈からすると大剣を持っているような感じだ。

 しかし、彼は大きさや重さを物ともせず平然と駆け出すと次々にゴブリンの頭をかち割ったり首を飛ばしたり心臓を貫いたりして倒していく。

 あまりの光景に絶句する。


「ふう、やはりゴブリンの相手は楽だな」


 ユウは西洋剣を倒れたゴブリンに突き刺しながら呟いた。

 さっきのゴブリンたちもこんな風に倒したのだろうか?

 いや、それでもあれだけのゴブリンを倒しきるなんて無理だ。


「さっさと進もうぜ」


 ユウは剣を抜いて肩に担ぐとそう言った。

 剣にはゴブリンの血がびっしりとこびりついていた。



----------



 その後も何度かゴブリンとの戦闘になったが、難なく仕留めていく。

 しばらく進んでいくと少し大きな部屋に出た。

 部屋の真ん中に大きな魔法陣が設置されている。


「ふうん、ここがボス部屋か」

「ボス部屋?」

「ああ、ここで強力なボスが出てきて倒すと外に出られるはずだ」

「ユウってここのこと詳しいの?」


 思わずそう聞いてしまった。

 色々知りすぎているのが気になったからだ。


「いや、ここのこと詳しくない」

「じゃあ、何でここがボス部屋ってわかったの?」

「魔法陣だ」


 そう言えば魔法陣を読めるって言ってたのを思い出した。


「魔法陣にそう書いていたの?」

「まあ、似たようなことをな、っと来るぞ!」


 ユウが言い終わるが早いか魔法陣が光りだす。

 そして、光が収束していき一つの形を作り出す。


「オーガ、下手なやつだと死にかねんのが出てきたな」


 ユウがつぶやく。

 光りが収まると体長三メートルほどの大きさをした人型のモンスターが現れた。

 顔は常時怒りに染まり頭から角を生やしている。

 角の人だ。


「まあ、ちょうどいい、見とけ」


 そう言うと持っていた剣をオーガに投げつける。

 見た目からは想像できない膂力で投げ出された剣は勢い良くオーガに迫る。

 しかし、オーガは、ハエでも落とすかのように剣を叩き落とした。


 カラーンと音を立てて剣が地面に落ちる。


 オーガの矛先が剣を投げてきたユウの方へ向く。

 そして、一度咆哮を放つとこちらへ走ってくる。


「っく、

『雷の刃よ……

「ちょいまち」


 そう言ってユウは僕の前を遮る。


「けどこのままでは!」

「まあ、見とけ」

『剣よ』


 ユウが、唱えるとそれに呼応するかのようにさっき投げた剣がオーガの後ろから突き刺さった。

 勝手に動く剣なのか、僕の知らない魔法なのか。

 剣を使っているからあの剣がなければ同しようもないと思ったがそうでもないようだ。


「あの剣は一体……」

踊る剣ダンシングソードという名前だ」


 イタズラが成功したかのように笑うユウ。

 しかし、僕はわかっていなかった。

 オーガは本来、専門の職業の人が4,5人がかりでようやく仕留めることが出来る大物だ。

 剣が胸を貫いただけでは完全に仕留めることが出来る程度の生命力ではない。


『ガアアアアアアアアアアア!』


 怒りの咆哮が部屋を包む。

 僕はわかっていなかった。

 しかし、ユウはわかっていたようにつぶやく。


『剣よ』


 彼が呟くように唱え右手を頭上に掲げると彼の回りに魔法陣が展開しオーガに刺さった剣と同じものが五本切っ先をオーガに向けた状態で浮かびあがる。


「じゃあな」


 イタズラな笑みを浮かべながら右手を振り下ろす。

 するとそれに連動したように彼の回りに浮いていた剣たちが一斉にオーガに向かっていきオーガをメッタ刺しにする。


「ちょっと、オーバーキルだったか?」


 オーガに刺さった五本の剣がオーガの突撃を封じ込めた。

 とんでもない力だ。


「ボスも倒したし進もうぜ」


 僕に声をかけて進んでいく。

 どこに行くのかと思ったらオーガが出てきた魔法陣に近づいていく。


「ちょっと待って、その魔法陣は敵が出てくるやつじゃ?」

「いや、そんな単純なものじゃない。

 細かい説明はできないけどざっくり言うとこの魔方陣から出てきたやつを倒すと魔法陣が変わって転移の魔法陣になるんだ」


 こちらの質問に対して律儀に立ち止まってユウは、答える。


「そうならよかった。

 けどまた何か出てきてるのって何?」


 僕の質問に首を傾げて魔法陣の方を見るユウ。


 今、魔法陣の真ん中に一つの西洋甲冑が立っていた。

 全体的に白の鎧は何処か神秘的ですらある。


「早! 出て来るの早!」

『剣よ』


 ユウが少し喚いた後、剣に向かって唱えるとオーガに刺さっていた六本の剣が彼の回りを回り始める。


「こいつは俺に用事がある。

 お前は関係ないから適当なタイミングで魔法陣に飛び込め!」


 甲冑が歩き始めたと思うと一気に駆け出しユウに向かって腰に挿して引き抜いて斬りかかる。


「あの魔法陣は本当に大丈夫なのか!?」

「転移でこの白い鎧が飛ばされてきただけでオーガとは全く違う大丈夫だ!」


 ユウは浮いた剣で白い甲冑の剣を受け止める。


「今のうちに飛び込め!」


 白い甲冑が何なのかわからないが兎に角今がチャンスだと思い魔法陣へ飛び込む。

 おそらくユウの声だろう。


「ガー……」


 視界が真っ白になっていく時にそういう声が聞こえた。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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