転生生活 逃走とゴーレム軍団
「わかった!」
僕は思わず叫んでしまった。
「へえ? 答えは?」
「三回です」
「ふむ、その理由は?」
「まず六個ずつ秤にかけます」
「うん」
「もし秤がどちらかに傾けば重たい方の六個を三個ずつにして再び秤にかけます」
「うんうん」
「そして傾いた方から二つを秤にかけどちらかに傾けば傾いた方傾かなければ残った玉が重たい玉です」
「うんうんうん、で、六個ずつ秤にかけたってことは四個残っているわけだよね?」
「はい、もし最初の六個ずつがどちらかに傾かなければ残り四個を二個ずつ秤にかければそれぞれ三回でわかります」
「うんうんうん」
お姉さんは、何度も満足そうに頷く。
これはいけるのではと思った時、
「残念! 答えは0回!」
そうドヤ顔で言いました。
「え?」
あまりにも正解と言いそうな雰囲気だったので思わず面食らってしまった。
「フフフ、困惑してるね?」
自分の答えに自信があっただけに何故不正解なのか。
「分からない? 本当に? もう一度問題を思い出してみて」
確か、問題は、
1つあたり一キロの16個の玉がありますその中に一つだけ一キロ重たい玉があります。
その重たい玉を見つけなければなりませんそのために秤を用意しました。
さて、最低何回秤を使って重たい玉を見つけることが出来るでしょうか。
という問題だった。
1つあたり一キロか、一キロ思い玉を見つけるために秤を使うとして。
一キロ増えたら丁度二つ分だ。
……一キロ、ああ! そうか、しまった。
「手に持ったらわかるのか」
「ふむ、正解、うまく引っかかってくれたみたいでお姉さん嬉しいよ」
そう言って回りの魔法障壁を解く。
「楽しかったよ。 次は逃げられないと思うけど頑張ってね?」
お姉さんはウインクをして歩きだす。
お姉さんの言葉の意味もわからず困惑する。
「えっと? あの」
「二敗一勝ってことで私の負けだからね―」
お姉さんに困惑する声が聞こえたようでこちらを振り向き手を振りながら図書館の奥へ消えていった。
つまりは、行ってよしってことか。
てっきり全問正解しないとダメかと思ってたよ。
フェアな人なんだろうか?
とりあえずお姉さんが消えた方に頭を下げて図書階を歩いて抜けたのだった。
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図書階で地味に時間がかかったおかげが次の階におりた時、そこは、鎧地獄と化していた。
というのも、階段を中心として鎧の人たちが扇状に待ち伏せしていたからだ。
……いや、どうしろと?
まあ、逃がすつもりは無いということなのは一目瞭然だが
「フフフ、あの二人では止められなかったようね。
私の名前はライラ・グリッター!
ここを通りたくば私とゴーレムたちを倒してから通りなさい」
鎧の人たちの真ん中に立つ鎧の人。
他の鎧たちとは違い装飾が凝っているように見える。
鎧の人が喋るところを見たのは初めてだ。
しかし、鎧の人たちはゴーレムだったのか。
道理で動きがぎこちないような気がしてたんだ。
喋る鎧の人が剣を抜きながら警告を発する。
「おとなしくしていれば命は助けてあげる」
「助けてあげるとか言いながら剣を抜くのはどうかと思うんだけど」
「む、それもそうだな」
そう言って剣を鞘に納める。
スナオダナー。
「どうしてもだめですか?」
「うむ、師匠からの厳命だからな。
例え可愛い子供だろうと容赦はしないつもりだ」
つもりって言ってる時点で甘くなる可能性があることを示唆しているんだけど……。
しかし、どうしたものか。
鎧の人は実はゴーレムだったわけでだから目くらましも効かなかったわけだ。
たぶん喋る鎧の人は効いたとしても他のゴーレムたちが動くのであれば意味が無い。
他の攻撃魔法も使ったとして鎧のゴーレムに通じるか怪しい。
そう考えている合間にも徐々に鎧のゴーレムたちが迫ってくる。
これは考えるまにぶっ放してしまう方がいいか。
『百条の雷の矢よ敵を撃ち抜け』
「え?」
呪文を唱えると間の抜けた声が聞こえた。
しかし、気にしている余裕はない。
ここを抜けるには包囲しているゴーレムたちを何とかしないといけない。
雷の矢を鎧を人以外の鎧のゴーレムにぶつける。
「わっわっわっ!」
鎧の人はわめきながらうずくまる。
ゴーレムたちに雷の矢が炸裂する。
一瞬ゴーレムたちが止まったように見えたが気のせいだった。
ゴーレムたちの包囲網が狭まってくる。
「お、驚いた。
見た目に惑わされるな、か。
なるほど、その歳で魔法士として十分な実力を有しているのか」
そう言って喋る鎧の人は持ち直し
「これは、穏当にはいかないな。
仕方がない。
発射用意!」
鎧のゴーレムたちに指示すると鎧のゴーレムたちが一斉に腕をこちらに向けてきた。
嫌な予感に身を構えているとゴーレムたちの手が一斉に上がり空洞の腕を見せてきた。
とっさに呪文を唱える。
『無数の雷の刃よ敵を切り裂け』
「撃て!」
喋る鎧の人がそう言うとゴーレムたちは一斉に白い塊を撃ち出す。
次の瞬間それらは広がり網になった。
それと同時に僕の魔法も発動する。
無数のワードは発動が早く大量の魔法を展開できるが制御ができないのが難点で自分を中心に放射状に雷の刃が飛んでいく。
自分にも被害が出かねないぐらい魔法を放ったが、ゴーレムたちが放った網に触れたとたんに霞のごとく消えてしまった。
「な!」
「ふふ、無駄無駄!
師匠が作った対魔法士用の捕獲道具だからね魔法ではどうにもできない」
見事に多重の網に捕まってしまった。
逃げようともがくがむしろ網同士が絡まり徐々に動けなくなっていく。
「しかし、クーデルも情けない、油断したとしてもこんな小さい子にやられるなんて」
捕まった僕を見て失礼なことを言う喋る鎧の人。
「まあ、いい、これで師匠の命が果たせた」
「あの」
抵抗を諦めひとまず喋る鎧の人に話しかける。
「ん? なんだ?」
「スフィリアさんも僕のことを通してるんだけど」
「ま、まあ、それは仕方がないんじゃないかな」
顔をそむける喋る鎧の人。
疑問に思いつつもしかし、これからどうすればいいか考える。
多分この人の言う師匠は、マリコさんで間違いないだろう。
そしてその人の前から僕は逃げだしている。
いや、逃げるべきでないのは分かっていたんだけど体が勝手に動いたというか。
ほら、誰にだってあるでしょ?
思考とは関係なしに体が勝手に動いてしまうときが、……あるよね?
まあ、とにかくこれから僕はどうなってしまうのか。
鎧のゴーレムに引きずられながら思案するのだった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
登場人物の名前を変更しました。