転生生活 逃走と大広間
全力で廊下を走り抜ける。
ここで捕まればエリイに会えなくなるかもしれないそんな焦燥感を覚えながら。
なんとか逃げようとするが、しかし、あのゴーレムが動く可能性を思い浮かべると絶望的な思いがこみ上げてくる。
それに、ここで逃げたとしてどうするかなど思いつかない。
そもそも逃げれるような気がしないのだ。
少なくともあの部屋からは絶対に出ないといけないというのは分かったが、そのあとそのまま戻るわけにもいかず最初の紋章エレベーターに向かうが一向に見当たらない。
もうとっくに紋章エレベーターがあった場所を通り過ぎているような気もする。
どうしようか、今からでも戻って謝るべきだろうか?
しかし、戻ったらあの誓約書を書かないといけない。
あの誓約書に書く気がしない。
もし、もしもエリイに何かあった時にここに縛られるのは避けないといけない。
しかし、おそらく師事するマリコさんに頼めば案外そういったことを許してくれるかもしれない。
まあ、あの殺気の篭った魔力の放流を向けきた理由がいまいちわからないけど、僕が逃げ出す時に見たマリコさんの顔は楽しげだった。
そんなことを考えつつ廊下を進んでいると前からマリコさんの部屋に行くまでに何度かすれ違った鎧の人がガシャガシャ音を立てて歩いてきた。
そのまますれ違おうとしたが、
「うわ!」
思いっきり抱きついてきた。
いや、捕まえようとしたのか?
「まさか、もう連絡が通っているのか?」
そう問いかけてみるが鎧の人は答えない。
『光よ』
再び閃光を飛ばし鎧の人の視界を奪い逃げるが、鎧の人は何もなかったかのように追いかけてきた。
「え? 何で効かない?」
不思議に思ったけど深く考える余裕はない。
ひとまず逃げに徹する。
しばらく逃げていると何度か鎧の人とかち合うが、動きはそれほど早くはないためあっさりと通り抜けられる。
----------
しばらくして、ようやく階段を見つけて降ると大広間に出た。
右手には人形の的が用意されていて、まるで射的場のようになっていた。
左手には藁人形が円形になるように設置されている。
円形に設置されている藁人形の中心には一人の青年が立っていた。
服装は質素なもので白いズボンとシャツを着ているだけだった。
しかし、手には普通の剣とは違う形状をした独特な握りの片刃の剣が握られていた。
青年は息を大きく吐いて動く、その後の動きははっきり見えなかったが次々と藁人形が切られていった。
少しばかり困った。
と言うのも下の階に降りるにはこの広間を抜けなければいけない広いとはいえ見晴らしがよく、しかも人が一人しかいないため一発で気づかれてしまう可能性が高い。
光魔法の中には姿を誤魔化すものもあるがまだ実用段階ではない。
どうしようかと思いつつ階段の壁を利用して姿を隠していたのだが、
「お? 誰だお前?」
と大きな声で、こちらを向いて尋ねてきたのだ。
さて、どうしようか。
この城から抜けるには少なくともこの広間を通り過ぎなければいけない。
しかし、ばれないで通り抜けるのはもう無理だ。
ひとまず顔を出して挨拶することにした。
何となく悪い人じゃないようにも見えるし
「こんにちは! 僕の名前はフレアと言います」
「(フレア? また厄介なのを引き取ったりしたのかあのババア。)
ああ、こんにちは! 俺の名前はクーデルだ! ちょっとわざわざ声を張り上げて喋るのもなんだからこっちに来いよ!」
そう言って手招きをします。
まあ、どちらにしろこの広間は抜けないといけないのである程度まで近づいて
「すみません、少し急いでいるんで後でいいですか?」
と聞くと
「ん? ああ、試験か。 いい……」
クーデルさんは、唐突に何かに反応して言葉を止める。
「はあ、いきなりだな。
すまんなフレアくん、ここが第一関門らしい」
そう言って剣を構えるクーデルさん。
「ええ!?」
ついさっきまで気のよさそうな感じだったのに急に戦う気になったクーデルさんに困惑する。
「まあ、そうなるわな。
仕方ない、こちらからは仕掛けないさ。
(しかし、なんだってこんな幼い子が)」
そう言って剣を肩に掛け指をクイクイっと動かし手招きする。
地味にかっこいい。
しかし、邪魔をするなら容赦はしない。
「分かりました」
『光よ』
そう言って本日三度目の目つぶしからの鎧の人みたいに効かない可能性もあるので
『光の矢よ敵を射抜け』
と唱える。
雷だと威力が高すぎる可能性があるので普段あまり使わない光の矢を使った。
「ぐわっ」
っと声が聞こえたので、今のうちに階段の方へ走る。
もしかしたら追いかけてくる可能性もあったので
『雷の壁よ敵を封じろ』
と唱えてクーデルさんの周りに雷の壁を出す。
そしてそのまま階段まで付くとそのまま降りて行った。
上手くいったようだ。
さっき見た動きを警戒してたから拍子抜けした感じだ。
まあ、この調子ならこの城から抜け出せそうな気がする。
……抜け出せたとしてどうしよう。
そこのところ考えてなかった。
助力を頼む相手もいないし、向かうべき先も思いつかない。
フォーミュさんのところへ戻ったとしても迷惑になるだけだろうしね。
しかし、死ぬつもりもないので戻るわけにもいかない。
本当にどうしよう。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
自分で書いてて苦しいなあ、と思ってはいるのですがどうにも……。
改稿しようか悩んでます。
エタらなければどうということはない……はず……。