転生生活 城内
城の扉が開くと中の様子も見えてきた。
外が歪なら、中も少々変わっていた。
レッドカーペットが敷かれ途中に何やら女性を模したように見える紋章が描かれ奥には螺旋階段が上に向かって伸びていた。
「これを登るの?」
「ええ、ここにいらっしゃた皆様、あなた様と同じように面喰った表情になります」
「おいおい、いちいち驚かせないと気が済まないのかよ」
「え?」
「ふふ、そうですね。
つい癖で螺旋階段の手前の紋章があるでしょう?」
「はい」
「そこに立ってください」
「えっと?」
「まあ、言われたとおりにしてみようぜ。
驚くから」
そう言って紋章の上に立つ。
「ふふ、問題無いようですね」
「はっ、回りくどいな」
「いえいえ、この程度のことはできて当然でしょう?」
「まあ、関係がなかったらな」
紋章の上に立つと床がせりあがっていく
「わあ、す、すごい!」
「二回目だが、慣れないな!」
「そうでしょうとも」
床が上がっていく前世の記憶にあるエレベーターのようだけど周りに壁やガラスが無いためヒヤッとする。
さっきのことを質問することでごまかすことにしよう。
「あの、さっきのことは、どういうことですか?」
「ああ、この紋章は教会の紋章だ」
「へえ?」
「だから、この紋章を踏めないやつは教会の関係者でしかも敬虔な教徒ってことになる」
「それほどに嫌いなんですか?」
「はい」
そう言ってヘリオスさんはほほ笑む。
紋章を踏めないものはあの螺旋階段を登らないといけないらしい。
「まあ、教会関係者をこの近くに寄せること自体させませんので、これはあくまでも嫌がらせのようなものです」
微笑みながらも口角を釣り上げるヘリオスさん。
怖い! 怖いよ!
「ですので、この紋章を踏んだ時点で基本的には大丈夫ですよ」
「この紋章を踏んだら大丈夫って、傭兵とか雇って襲ってきたりしたら?」
「大丈夫です。
大抵の傭兵や裏の仕事に就くものは教会の仕事は受けませんし関わらないようにしています。
もしも、そう言った傭兵が来たところでそんな裏の常識も知らない下っ端か情報をもらえない組織の末端の人間ぐらいです。
そんな方々が襲撃に来ても片手間で撃退できますからね」
「僕を信用してもいいの?」
「まあ、そこのところは元々心配していません。
その首飾りが証拠になりますから」
そう言ってヘリオスさんは僕の胸元のあたりを指差す。
一瞬首を傾げたが、すぐに首にかけていたユニコーンの首飾りを思い出す。
「これですか?」
ユニコーンの首飾りを取り出す。
人の悪意に反応する首飾りだ。
ここに来るまでに何度か光って教えてくれた。
特に襲撃を受けるときは強く光ったのを思い出す。
「そう、元宮廷魔術師フォーミュ様のお墨付きです。
あの方にはマリコ様も何度か助けていただいたそうで、あの方の用意したそれがあれば間違いありません」
「偽物とか思わないの?」
「ええ、詳しいことは口止めされて言えませんが、見極める方法ならあります」
そう言ってヘリオスさんは自分の目を指差す。
「この目で見ればわかります」
ヘリオスさんがそう言うと同時にせりあがる床が止まった。
「さあ、マリコ様がお待ちです」
そう言ってヘリオスは廊下を歩き始めた。
見た目は想像した西洋建築の廊下そのものだったので少々驚いた。
「驚きだろう? ここはびっくり箱みたいな場所だからなまだまだ驚くことがあるぜ」
そう言ってアルヴァンスさんも歩き出す。
あれ? 口止めは? とか思いつつも僕はどこまでも続いていそうな廊下を進む二人について行く。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
次回こそマリコさんがでます!
今回出すつもりだったのですが、思ったよりも筆が進まずごにょごにょ……申し訳ないです。