転生生活 マリコ・ペンドラゴン伯爵
街の中に入ると外で見た門番ゴーレムから中にもゴーレムがたくさんいると思ったのだけれど、至って普通の街並みであった。
むしろ、ゴーレムは見当たらない。
そんな街の中、馬車を走らせて、街の真ん中にあるお城と形容するには少々異形な建物を目指す。
異形の建物というのも普通、建物は仕方ら上に向かって細くなっていくのが普通なのだが、その建物は上に行けば行くほど広くなっているのだ。
しかも他の街で見かけた建造物とは根本から違い全体的にのっぺりとしていた。
よくあんな構造で倒れないなぁとぼんやり見ていた。
「驚きの連続だろ? ここでは驚きに事欠かないからな」
イタズラに成功したような声色で話すアルヴァンスさん。
「そうですね。 何であんな形をしているんでしょうか?」
「聞いて驚け、空から降ってきたからだそうだ」
「はい?」
「だろ? そうなるよな」
アルヴァンスさんは少し笑いを堪えた後、盛大に声を上げて笑う。
「あの城は空から落ちてきた天空の城らしい、信じられないだろ?
俺も信じられない」
僕の目にも前世の知識なしではただの異形の建物としか映らないだろう。
城として見ると異形だが、船としてみればなるほどわからないこともない。
まるで空の青が海で、重力に逆らってプカプカと逆さまに浮いていたというのなら納得できるところだった。
「ああ、絶対あの城に対してきのことか言わないように、死にたくなけりゃあな」
僕の中ではマリコ・ペンドラゴン伯爵は、気難しそうな人物であるという評価になっている。
禁止ワード多いからね。
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お城に着くと城門の前には、屈強な体躯の城兵らしき人と短い赤い髪が印象的な執事服の人が立ってた。
城兵は置いておくとして執事服の人は出迎えだろうか?
「ようこそ、ペンドラゴン邸へ」
「おお、久しぶりだな」
「これは、アルヴァンス様、お久しゅうございます」
「この人はヘリオス・ハーグ、ペンドラゴン領の執事でこんな感じで終始固い口調なんだ」
アルヴァンスさんはやれやれといった感じで肩を竦める。
ヘリオスさんは少しシワの入った顔を緩ませてアルヴァンスさんに尋ねる。
「相変わらない様子で安心いたしました。
そちらの方が?」
「ああ、神童フレアだ」
面白そうに口角を釣り上げる。
そんなアルヴァンスさんを見て僕は、少し首を傾げながらも否定を入れる。
「神童は、村で呼ばれてただけで魔法学校に入ってからいやというほど自分の未熟を思い知りましたよ。
同年代ですら僕と同じぐらいの人がいるぐらいですし」
「こんな感じだ」
「なるほど」
アルヴァンスさんと執事服の人が頷きあっているのがよくわからず、自分の頭の上にクエスチョンマークが浮かんだような気がした。
「あの、どういうことですか?」
「天才は得てして凡人の視点がわからないものだということだな」
「そのようですね」
「えっと?」
「そんなことは置いといて中へ入らせてもらおうか」
「ふむ、それもそうですね、どうぞ」
「え? ちょ、ちょっと? アルヴァンスさん?」
そう言ってヘリオスさんは、城内へと案内をする
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城内には、たくさんの鎧が置かれていた。
まず扉を挟むように二つ、そして通路を形成するように均等に広間に並べられた鎧がざっと数えて十位ある。
廊下には均等な間隔で剣を腰に帯びた鎧が設置されている。
数えるのも億劫に成る程の鎧の数だ。
しかもそのどれもが同じ鎧であり、規格があることがわかる。
しかし、城内にこれほどの鎧を配する意味を僕は理解できないでいた。
「鎧がたくさんありますね」
「驚きだろ? これ全部……」
「アルヴァンス殿?」
大きい声ではないがはっきりと冷たいヘリオスさんの声に驚いた。
「おっと、そうだったな失礼」
「どうしたんですか?」
「いや、何、何処にでも秘密というものはあるもんだ。うん」
アルヴァンスさんの挙動に不審なものを感じつつもそれを聞いたところで答えてくれないのは解りきっているので、あえて追求はしなかった。
「そうですか? まあ、いいでしょう。
それよりもマリコ伯爵様はどのような方なんですか?」
「どのような、ですか説明するには少々難しいですなぁ」
「だから言ったじゃねえか合えばわかる」
「うむ、主の良さを説明できない不甲斐なさはありますが、合えばわかります」
それほどなのだろうか。
マリコ・ペンドラゴン、ペンドラゴンは英雄にふさわしい家名であるが、英雄が良いものとは限らないからなあ。
しかし、マリコ……、マリコかぁ。
そんなことを考えつつもヘリオスさんの後に付いていくのだった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
さて、どんな人にしようか。
容姿だけは決まってないんだよね。