表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/120

転生生活 31 赤い薬の効力

 森の中を一人の少年が走り抜ける。


「ふん、獣一匹にビクビクしやがって、あれでも魔導士かよ」


 彼の服装は銀色の装飾が施された白い服である。

 魔法都市に住むものであれば大抵の者が、彼が魔法学校の光クラスに所属していることがわかるだろう。

 何故、魔法学校に所属する彼が魔の森と呼ばれる危険な場所にいるかというと


「まあ、あの咆哮があった場所に行けば森の主がいるだろう」


 そう言いながら懐から一つの小瓶を取り出す。

 中には赤い液体が入っている。


「性能も試したことだしこれを使えば主ぐらい何とかなるだろう。

 主を倒せば弱腰の魔導士に一泡吹かせてやれる」


 彼は顔を歪ませながら森の奥へと進んでいく。


 彼がしばらく森の奥へ進んで行くと見つけたのは森の主ではなく小さな小屋だった。


「ん? 何故こんなところに小屋があるんだ?」


 当然のごとくその疑問が浮かんだ。

 この森の中は人が住むのは不可能なほど危ない。

 とりわけ小屋を建てることなど本来不可能なはずである。


「……結界か」


 ムストは、外に張られている結界と同じようなものが小屋の周りに張り巡らされていることに気付く。


「なんだってこんなところに」

「おい、こんなところで何をしておる」


 不意に後ろから声がかかる。

 ムストは後ろを振り返りながら距離を取った。


「見たところ魔法学校の学生か。

 さっさと森から出ろ」


 その人物は漆黒の鎧姿だった。

 禍々しい黒をまとったその姿はどこかしら惹かれるものがある。


「おい、聞いているのか!」


 突然現れた黒鎧の男に混乱しつつも何とかかんとか返事をする。


「お、俺はムスト・ファブリオンだ」

「ファブリオンだと?

 ……面倒な」


 くぐもった声は明らかに怪訝そうな雰囲気を孕む。


「俺は今から森の主を退治しに行くのだ邪魔するな」

「何だと? やめておけ、一人では無理だ」

「黙れ! 俺には出来るんだよ!」

「何がそんなに其方そなたの自信を持たせるのだ」


 黒鎧の男は頭を押さえて首を振る。


「ふん、お前には関係ない」


 懐にある赤い薬、魔法増幅薬を使うつもりであるがこれを易々と誰かに話せるわけではない。

 取り巻きに試すときには少し説明をする必要があったのはあるがこれ以上この薬の存在を誰かに話すつもりはムストにはなかった。


「まあいい、その主退治は少し待ってくれぬか?」

「は? お前に関係ないって言っただろうが」

「まあ、そう言うな。 もうじきこの場に其方の言う主が現れる」

「……どういうことだ?」

「森を怒らせたものがどうなるか。

 しかとその目で見る機会ではあるだろう」

「はあ?」

「それに、攻撃するのであれば、こっそり攻撃すればい」

「どういうことだ?」

「姿を隠すから静かにしていてくれという事だ」

「……分かった」

『夜よりもなお昏き闇よ我らの姿を覆い隠せ』


 ムストはこの黒鎧の存在を思い出していた。

 名前は『ダークナイト』、称号がそのまま名前として扱われている。

 その存在は、フェイムほど公にはなっていないが確実に魔法都市における最大戦力の一人である。

 そんな存在が言う事だ完全に無視するわけにもいかない。

 それでもなお森の主を倒す自信はあった。


 しかし、その自信はあっさりと崩される。


 森の主らしきものは一見ただの大きな馬だった。

 もちろん、普通の馬と比べればいくつか差異があった。

 一つはその色である。

 世界を照らすような白、その白色を見た時にこんな存在に勝てないと確信してしまった。

 魔法増幅薬など何の薬にも立たないと理解してしまった。


「ヒヒーーーーン!」


 白い馬が嘶くと辺りの温度が一気に下る。

 ムストは自分の息が白くなっていることに気が付いた。

 そして白い馬の嘶きによって気温が下がったのみならず、小屋に覆われていた結界が凍り付いていく。

 そしてグラスを落とした時と同じような音がして、結界が砕け散る。


 結界が砕け散ると中の小屋が凍り始めると同時に小屋の中から二人の男性が出てきた。

 男性二人は怒声を上げながら呪文を唱える。

 一人は炎を顕現させもう一人が冷たい空気を飛ばすように風を馬の方へ向ける。

 炎は見た目からわかるが一介の魔法士が使うような大きさのものではない。

 もう一人の風の魔法も周囲の木々に影響を及ぼすほどの規模を持っている。


「どういうことだ」


 ぽつりと『ダークナイト』が呟く。

 それもそのはず、小屋の中から出てきた二人が使う魔法の強さは魔法学校の巨人クラスレベルの魔法を使っているからである。

 竜クラスよりは多いとは言え巨人クラスも十分に戦術魔法士と呼ばれるレベルである。

 戦術魔法士と呼ばれるレベルの魔法士は実績がある者が選ばれる以上、その存在はどうしても明るみに出るのは当然である。

 しかし、二人の男の存在を『ダークナイト』は知らない。


「どうしたんだ?」

「いや、なんでもない」


 何でもないと言いつつも『ダークナイト』は驚きを隠せていない。

 ムストはそんな『ダークナイト』を見て内心ほくそ笑んだ。

 有名な『ダークナイト』すら知らないことを自分が知っていることに優越感を感じたからだ。


 そうだ、ムストは気が付いていた。

 男達が強力な魔法を使える理由を、間違いないくあれを使っているという事に。

 しかし、あれほど強くなれるとは、これなら倒せるだろうと思いそして、男たちが自分の父親の部下かなにかと思い『ダークナイト』の結界から出る。


「少年!」


 『ダークナイト』のひっ迫した声を無視して。

拙作をご覧頂きありがとうございます。

作者にもどこに向かって行くのかわかりません。

暴走特急異世界ものっていうジャンルは、……ないですか、そうですか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ