転生生活 28 魔の森
課外実習です。
その授業をすることを聞いたのは、魔法学校の授業にも慣れ昇級試験が近づいてきたときのことである。
昇級試験は年に二回ありそのうちの一回目が近づいていたのだ。
二回の内どちらかで合格できれば昇級権を得ることが出来、そして一年が終わると昇級することが出来る。
そんな大事な時期に課外学習ということで魔法都市の外に出ることになったのだ。
魔法都市の周辺には魔の森と呼ばれる森がある。
この森には魔力を有した動物が現れる。
この動物を魔物と呼ぶ。
魔物の特性としては他の動物より凶暴ということだ。
小動物でも肉食動物に勝つのだから当然だろう。
そして、死んだどうぶつの躯に魔力がやどりアンデッドとなって彷徨っていたりすることもあるので許可なく入ることは禁じられている。
魔の森周辺には結界が張られており特定の場所からしか入ることが出来ない。
特定の場所には門番ならぬ結界番という人がいてその人が結界の一部を開けてくれるのだ。
因みに、この結界と呼ばれるものは魔法陣を活用しているらしい。
細かい説明を受けたが意味がわからなかった。
「よく聞いてください、これより先に進むのは大変危険が伴いますので、五人ずつグループになってください」
アメリア先生がみんなに声を掛ける。
僕は、最近、比較的仲がいいクリア・メイスン、ドラフ・ボルティ、ミーミア・グラスと一緒になり人枠空いたのである。
他に2グループで来ているムストのグループは全員揃っているようだ。
そして、それぞれのグループに一人先生が付く。
「では、魔の森に入ります。 くれぐれも先生からはぐれないように気をつけてください」
そう言って僕らの班から入る。
担当はアメリア先生だ。
「おい、ピカピカ野郎! 勝負しようぜ!」
ムストだ。
「は? 何でそんなことしなきゃいけないんだ?」
「ふん、受けなくてもいいさ。 お前が弱虫だって言うことがわかるだけだからな」
意味がわからない。
危険だって言われているのわかっているのか?
「勝手にやってろ」
「どんだけ魔物を倒したか勝負だ」
「はいはい」
「ダメです!」
アメリア先生が言い合いに気づいて注意する。
「いいですか! 魔の森というのは大変危ないところです! 勝負なんてものは絶対に駄目ですよ!」
と注意される。
いや、僕はそんなつもりじゃないんだけど……。
「わかりました」
「ふん、臆病者が」
「ムスト・ファブリオン! いい加減にしなさい!」
「フンッ!」
ムストはそっぽを向く。
大丈夫かあいつ。
「言うことを聞けないのであれば、魔の森へ入ることを禁じますよ!」
「ぐっ、わかりました」
ハハッ、ざまーねえな。
「フレアもわかっていますね?」
「はい、わかってます」
アメリア先生も大変だな。
いや、あいつの班のウグリス先生の方が大変か。
まあ、そんな諍いがありつつも無事(?)魔の森に入っていくことになった。
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魔の森の木々は他の森と比べるべくもなく大きいものだった。
魔の森一体は魔力のもととなるものが多く存在すると言われている。
魔の森で取れる木はどれも魔力を含んでいるために魔法道具にするのに最適なんだそうだ。
しかし、そう簡単に手に入れることができないそうだ。
木を数本手に入れるためなら外から取っていけるが、多量の木を切ろうとすると魔物が出てくるらしい。
木の中にはトレントと呼ばれる木に擬態する魔物が存在するため木だと思って油断しているとトレントにやられてしまうこともある。
それと、木を切っていると魔物が近づいて来るということもあるらしい。
当然、そうした魔物の皮や骨なども需要がある。
しかし、奥に進むほど魔物同士が協力して侵入者を排除しようとする。
森全体がまるで一つの意思のように動くのだそうだ。
結果、魔物の出にくい森の浅いところで木を切ったり魔物を狩ったりするしかない。
そんな魔の森に何でそんな都市を作ったかは、むしろ魔の森という資源があるから出来たと思っていい。
魔法道具を造る素材が手に入りやすいのだ。
ただし、魔法都市は、別に魔の森の恵みだけで出来上がった都市ではない
優秀な魔法士を輩出することでも有名で、国内で一番魔法が進んでいる都市であるために人も集まるのだ。
当然魔の森の脅威もあったが、結界を貼って安全を確保できるようになったのも魔法の研究のおかげだ。
因みに、魔法都市の防衛力は、要衝にある要塞都市と同じかそれ以上と言われている。
その理由が魔の森の結界、そして国内で一番魔導士を抱えているということもある。
魔導士一人で一つの町を殲滅することが出来るのだそうだ。
5人いれば都市を壊滅まで追い詰めることが出来るし、10人で一つの国を滅ぼすことが出来ると言われている。
ただし、相手に魔導士がいなければという文言が付くが……。
閑話休題。
まあ、そんなこんなで魔の森に入ることになるわけだ。
先生のが守ってくれるとはいえ本格的に実戦形式になるのは確かだろう。
とか考えていると早速、魔物が姿を表した。
ぱっと見たところ熊だ。
なぜ外見が熊なのに魔物だとわかったか。
熊は本来臆病な動物だ。
その臆病なはずの動物が、こちらにダッシュで近づいてくるのだ。
明らかに敵と認識している。
『光よ我が敵を拘束せよ』
アメリア先生がそう唱えると地面から出た光が熊の魔物をがんじがらめにする。
熊はそれなりに速度を出していたのだが光で拘束されてピタッと止まった。
物理法則ぇ。
「まず敵の把握です。 この魔物の名前が分かる人」
「森熊と言う名前の魔物です」
ミーミアが速攻で答える。
知識は光の妖精で随一の人物だ。
「素晴らしい、その通り森熊です。
森熊は魔の森でも浅いところにも出てくる魔物の中では最強です」
座学で学んでいたところだな。
魔の森でも基本的な部分は普通の森と変わらない食物連鎖で一番体が大きい肉食獣が強いのだ。
もちろん、連携を取る狼のような存在も居るのだが、基本的には変わらない。
ただし、魔の森には特殊な者も居る。
「フォレストベアは槍クラスの魔法で倒すことが出来ます。
ただ、剣クラスの魔法を使う事でダメージを与えることは出来ます。
しかし、剣の魔法をいくつか使うよりも槍クラスの魔法で倒すのが手っ取り早いです。
その差を見てもらうために実際に剣から試します」
『光の剣よ敵を切り裂け』
呪文を唱えたアメリア先生の前に剣が現れ熊を斬りつける。
やべえ、動物虐待だよ。
因みに剣は熊を傷つけたように見えなかったが、熊にはダメージが入らなかったわけではなくうめき声を上げるのだった。
「次は殺します。目を背けないように」
『光の槍よ敵を貫け』
アメリア先生が唱えると光の槍が現れそして熊の眉間に突き刺さる。
「しっかりと弱点を突き仕留めないと死ぬのはこちらになります。 気を引き締めて対峙してください。 次はあなた達に実際に魔法を使っていってもらいます」
そして、課外実習が始まった。
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奥に入りすぎないようアメリア先生の監視のもと順番に魔法を使って魔物を仕留めていく。
グループの皆は少々顔色が悪かった。
動物を殺すのは初めてなのか?
と尋ねると皆頷いていた。
人すらことがあるので今さら良心の呵責なんてモノは僕にはなかった。
殺らねば殺られるんだ、ならば殺るしかない。
なんて事を思いながらも森狼や森兎を狩っていった。
最初は先生の言うとおり魔物を仕留めていったが、徐々に数を増やすワードや巨大化のワードを組み込んで戦うようになっていった。
最後まで魔法を放っていたのはやはり僕だった。
「やっぱり、フレアの魔法量はとんでもねえな」
「うん、最初のあの光で誰でもわかったですけどね」
「いいなあ、私もあんなに魔法力があれば」
なんてグループに鳴った奴らは言っていた。
因みに発言は上からドラフ・ボルティ、ミーミア・グラス、クリア・メイスンだ。
「はいはい、では今日はこれまで明日からまた潜りますよ」
「「「ええ~~」」」
三人は魔法力も切れてくたくたなので明日もこれが続くのかとショックを受けていた。
拙作をご覧頂きありがとうございます。
次回『森の異変』