転生生活 22 土魔法
出欠を取った後、軽く土魔法に関する説明に入る。
土魔法は大地を利用する強力な魔法という印象を勝手に持っていたのだが、実際のところは違うらしい。
土魔法の基本は構築であり、例えば壁であったり堀であったり、砦や建物を作るのにおいては一番力を発揮する。
しかし、攻撃に使うには適性がない場合はあまり強力なことができないとのこと。
「というわけで、土魔法の基本となる構築を練習してもらおうと思います」
そう言ってアリコス先生が取り出したのは人の形をしたオブジェだ。
「土魔法の中でも一番汎用的なものである魔法を知っている人は手を上げてください」
アリコス先生が尋ねる。
僕にはわからないので周りを見渡すと何人かが手を上げていた。
そのうちの一人ミーミア・グラスの名前が呼ばれる。
「はい、土魔法で一番使われるのはゴーレムです」
「はいその通り、ありがとう座って、そう、土魔法はゴーレムに始まりゴーレムに終わると言っても過言ではありません。
ゴーレムと言っても色々あり一番大きい例で言うと都市そのものがゴーレムであることがあるほどです」
ゴーレム都市ハーヴェスト
詳しくは知らないけど説明を聞く限りは都市のあらゆるものが魔法によって制御されている都市だ。
ゴーレム都市の説明を終えたアリコス先生は
「ゴーレム自体を媒介にして魔法を使うことも出来るため土魔法を覚える上では必須です。
しかし、みなさんは土魔法の適性を持っているわけではありません。
その時のためにこの魔法を覚えてもらいます」
『土人形よ踊れ』
そう言うと机の上の人型オブジェがくるくると回転し始める。
なんだか不出来なからくり人形のようだ。
「このように予め用意していた土人形を動かすだけならば土魔法の適正持ちでなくとも簡単な動きをさせることは可能です。
ただし、予め自分の魔力と親和性をもたせる必要があります。
自分の体の一部例えば髪の毛であったり爪であったりをゴーレムの中に入れておくことで多少繋がりができます。
繋がりのあるモノは魔力の親和性を持たせることが可能なのです。
土魔法使いには必要ありませんがしかし土魔法使いの中にもゴーレムを強力にするために使うことがあります。
この親和性を持たせるものを使った場合には明確な弱点を持ちます。
親和性をもたせるものは魔力媒体といいこの魔力媒体を使っている場合はこの魔力媒体を抜くことにより」
そう言って先生はオブジェの頭に指をツッコミ何かをつまみ上げる。
すると何かを抜かれたオブジェは踊るのをやめ崩れ落ちただの土と化した。
「このようにゴーレムが崩れます。
魔力媒体を使わずともゴーレムを使うことは出来ますが」
『大いなる大地よ我が意に従い模れ』
アリコス先生が呪文を唱えると土が盛り上がりさっきのオブジェと似たような形を取ろうとするが完全には象れず崩れたような形で落ち着いた。
「このように完全には制御することは難しくなります。
では各自、髪の毛か爪を用意して下さい。
用意した後は各自土を配りますんで前に取りに来て下さい」
そうして土魔法の練習が始まった。
その日の授業ではオブジェを造るだけで苦労した。
雷の槍一本造るより制御が難しい。
感覚的に言うならおハシで豆をつかむような感じだ。
因みにエリイはある意味すごいことになっていた。
土が平面の形しかとらないのだ。
どれだけ精巧に作ろうとしても平面なので一向にオブジェにならない。
先生曰くイメージの定着が問題らしい。
放課後、魔法の練習用に使用できる学校のグラウンドでエリイと一緒に土魔法を練習する事になった。
練習を始める前にエリイが疑問を投げかけてきた。
「フレアくんはなんで土魔法を選んだの?」
「僕の得なのは雷魔法だからねその魔法の制御に金属を操る事ができる土属性を選んだんだ」
当然のごとく前世の知識である。
出来れば金を使えればいい。
「へえ」
「そういうエリイは?」
「私は、影魔法を使うからそのサポートにゴーレムを使えればと思って」
「ゴーレムの影から攻撃できるようにみたいな?」
「そう! その通り。 よくわかったね」
「効率的だからね」
「フフッ」
ん? なぜ今笑った?
首をひねる僕の疑問に答えるエリイ。
「ほらフレアくんよく効率とかいう言葉を使うから。 なんだか嬉しくって」
「なるほど、ってそんなに効率効率って言ってた?」
「うん」
マジか、次から気をつけよう効率厨は非効率だ。
「まあ、兎に角今は出された課題をこなしてしまおうか」
「うん」
因みにではあるが他の先生からも課題が出されている。
雷魔法は他の人より進んでいるからいいとして、光魔法そのものがいまいち使いこなせていない。
光魔法は適正がなければただの光源としてしか使えないが、適正を持つものは光線で攻撃したりや迷彩光学的に姿を隠したりすることが出来るのである。
みんな大好きレーザーは自然界にある光、とりわけ太陽光を使って攻撃する収束すればするほど強力になるのである。
水魔法を使えない僕には関係ない話ではあるが、水魔法の中には擬似的に光魔法と似たような効果を持つものがある。
水鏡と呼ばれるワードを使った魔法だ。
光を反射するだけでなく屈折させることも出来るので、光魔法サポートとしてとても優秀である。
迷彩光学のサポートに使えるし、レーザーのサポートも出来る。
雷魔法とも相性がいいしね。
……ウガーーー全く何で水魔法が使えないんだ!
と、まあ取り乱しても仕方がない。
その御蔭でエリイと同じ授業を受けれるんだから良しとしよう。
兎に角授業で使った自分の髪の毛を使ってゴーレムを作り出す。
『大いなる大地よ我が意に従い模れ』
とりあえず丸にちょこんと頭が出てごつい腕と脚を持つゴーレムを作り出す。
大きさは手のひらに乗るくらいだ。
エリイは普通の人型だ。
造形は細かくなればなるほど制御が難しい。
お箸で豆をつかむ感覚と言えば想像付くだろうか?
手でやれば簡単な作業をわざわざハシでやるのだ。
一見非効率だが、大きいものになればなるほど魔法でやるほうが効率が出てくるのだ。
……今は非効率なのは変わらないけどね。
「エリイは細部の造形も鍛えてるんだね」
「うん、出来れば一見人に見えるくらいのゴーレムを作りたいの」
「ふうん? なんで?」
「え? 覚えてない?」
「ん? 何のこと?」
「教えてあげな~い」
なんだ? 何か忘れてるのか?
全然思い当たらないが何かエリイ言ったことを忘れているんだろう。
残念、だけどまあ、理由があるならその理由を知る時が来るかな?
そんなことを考えていると聞き覚えのある声で呼びかけられた。
「お、こんなところで練習してるんだ関心関心」
拙作をご覧いただきありがとうございます
今年最後の投稿になります。