転生生活 20 裏側
「何なんだあいつはイブリスにひっつきやがって!」
とある寮の一室で叫ぶ人物が一人、彼の名前はムスト・ファブリオン
ファブリオン伯爵の第一子であり将来ファブリオンを継ぐであろう人物だった。
そんな人物が自分の思い通りにならないことがあった場合どうするか。
聡明な、あるいは普通の人物なのであれば、相応の手段を思いつくか諦めるかするだろうが彼は聡明でもそして普通でもなかった。
小さい頃から褒めて褒めておだてられて育ち、自分が望んだ者はなんでも用意された。
そして、光の適正を受けた彼は更に冗長した。
比較的少ない光の適正、そして魔法学校に入りその中でも優秀な成績だったのだ。
そして、彼は魔法学校で我を通すようになる。
魔法に関して勝つものがいなかったのだ。
イブリスはそんな彼と同期であった。
冗長する彼に対抗できる数少ない人物だった。
イブリスのお陰でいつの間にかいたムストの取り巻き達を抑え、ムスト自身、イブリスに喧嘩を売るほど血気盛んではなかった。
そして、しばらく均衡状態になってしばらく経ち昇格試験、イブリスは普段より魔法を練り続けたより良い魔法より強力な魔法を
しかし、ムストの魔法はそれでも妖精クラスでトップクラスの威力があったのだ。
彼は魔法を強化しなかった。
それが決定的に試験において差が出てしまった。
ムストの魔法は強力だが、しかし、攻撃以外使うことができなかった。
一方、イブリスは攻撃だけでなく防御、移動といったものにまで発展させた魔法を使うことになる。
イブリスは魔法学校でも数少ない近接魔法士だ。
いつの間にか付けられた差に憤りムストはイブリスに勝負を挑む。
挑むと言ったがいいが結局は喧嘩をふっかけただけなのだが、ともかく彼はイブリスより強力な威力を持ちながらイブリスに敗北してしまう。
「残念だよ。 そんなにある魔力が無駄になるなんて」
イブリスはそう言ってムストを見下ろした。
ムストは何が悪いのかわからなかった。
攻撃が当たらなかったのが悪いんだ自分が悪いわけではない自分が作った魔法が悪い訳がない。
彼は、グレた。
同期とは言ったが自分より年下に負けたのだそれも仕方がないだろう。
彼は、それまで以上に魔法を適当に使うようになってしまった。
そして、自分のライバルだったイブリスに近づく人物を見て胸が焼けるように傷んだ。
そして、その少年に自分の得意な魔法を叩き込んだがあっさりと防がれてしまった。
もはや、自分が何をしていたのかわからなくなってしまった。
「おや、ムスト様、元気が無いですね。 どうしたんです?」
その声に顔を上げると黒装束の男が窓の前に立っていた。
「だ、だれだお前!」
驚くのも当然である。
そのものがこの部屋に入ってきた気配などなかったのだ。
普通の存在では無いのは明らかだった。
「ふふ、そう警戒しないでください。 私は、あなたの父親に言われてこの魔法薬を届けに来ただけなのですから」
そう言って黒装束の男は懐から赤い液体の入った瓶を取り出す。
「父上が? これは?」
「魔法増幅薬です」
「魔力増強剤じゃないのか?」
「そんな不良品などとは違います。 しっかりと魔法の効果が上がるものです」
そう言って黒装束はテーブルの上に魔法増幅薬を置く。
「次の試験のときに使いなさいとのことです」
「待て」
体を反転させようとする黒装束を止めるムスト。
「あと一つ、いや二つないか」
「ああ、そうですか。 試してみないとどんな効果わからないですからね」
黒装束は懐に手を入れそして二本赤い薬を取り出す。
「では、試験がうまくいくことを祈っております」
そう言って今度こそ黒装束は身を翻し窓から飛び降りる。
追いかけて窓を覗くが黒装束の姿は消え去っていた。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
人物の心情描写ってムズカシイ