転生生活 19 傲慢な者
魔法学校の生活もなれた頃、ではあるのだが問題が起きていた。
この時は一つだけと思っていたのだが意外とヤバイことになっていたのである。
「おい、ピカピカ野郎」
このように同じ妖精クラスであり先輩である人に目をつけられたのだ。
おそらく授業で実戦形式のときに強い光を利用して勝ったからだろう。
プライドが傷つけられたからかちょくちょく絡んでくるようになっていたのだ。
「何でしょうか」
振り返ると15歳ぐらいの男子が取り巻きを後ろにつけて絡んできたようだ。
「庶民が大きい顔して歩いてんじゃねえ、魔力が多いから調子に乗ってたらぶっ潰すぞ」
というふうに、まあ、貴族のお坊ちゃんであることは間違いないだろう。
後ろの取り巻き達もそうだそうだとか同調したりあるいは面白そうに見ているのだ。
「はい、気を付けます」
そう言って集団の横をすり抜けていく。
小さい声で、かわいそうやら、腰抜けやら聞こえるが年下相手に集団でしかものを言えないのか。
と辟易してしまった。
まあ、その時はそれで終わったのだが、ここは魔法学校だ。
魔法を使った実践訓練もある。
魔法の制御方法を知ってから『雷の矢』を三本まで同時に自在に扱えるようになった。
僕が敵なしになるのは不思議なことではなかった。
実際の所、いい勝負をした人もいたが、複数の魔法効果を発動できる人は僕以外にいなかった。
さっきの人も魔法実戦で倒したのだ。
気に入らないったらありゃしないだろう。
ひとまず寮に戻るか街に出るか迷っていると
背中に衝撃を受け、そして耳元で
「フレアくんおっひさー」
とささやかれた。
「イブ、お久しぶりです」
振り払おうと前に進むが、きっちりひっついて離れない。
あの、離れてもらっていいですか? と言おうとした途端にそれは起きた。
注目する人の中にエリイの姿があったのだ。
笑顔だったエリイの顔がみるみる悪くなり、頬をふくらませるとフンッといった効果音が聞こえるような不機嫌な足取りで女子寮の方へ向かっていったのだ。
それをみた僕は足の力が抜けて地面に倒れた。
イブさんに押し倒されるように。
「ありゃ、大丈夫?」
「背中に乗ったまま聞かないでください」
「おう、ごめんごめん」
そう言ってイブさんがどくと僕も立ち上がる。
そして、もう一つ厄介な人物が目に入った。
何時か、調子に乗るなとか言って絡んできたやつだ。
「おい! お前、調子にのるなっていっただろうが!」
とすごい剣幕で詰め寄ってきた。
一応すぐに臨戦態勢を取る。
すると、そいつは、突然呪文を唱え始める。
それに対応するためこちらも呪文を唱える。
『雷の剣よ敵を貫け』
『雷の壁』
相手の魔法をとめればいいだけなので目の前に雷による防壁を張るほうが早かった。
それを見たイブさんが止めに入る。
「何をやってるんだ! ムスト! 退学になりたいのか!」
「イブリス、そんなやつと馴れ馴れしくするな」
「誰と関わるかは僕の自由だほっといてくれ」
何なんだよ全く、
「こんな大勢の前であんなことをやるようなやつと一緒にいるなんて貴族の恥だ!」
「だから、そんなもので僕にいいがかってくるな」
言い合いが始まるかと思うと
「どうした! 何があった!」
という声が聞こえてきた。
先生だろうか。
「ちっ、覚えてろよ」
そう言ってムストと呼ばれた男子は逃げていった。
どう見ても小悪党です。 ありがとうございます。
「イブ、あの人と知り合い?」
「うん、そうだよ。 僕が一年で精霊に上がったけれど彼は上がれなかったんだ。 今年上がらなかったら卒業だからね」
妖精クラスは二年しか居ることが出来ない。
毎年入ってくる人をさばくためでもあるだろうし才能の無いものをいつまでも置いておく余裕もないのだろう。
魔法学校を卒業したとき妖精でなれるものは、騎士だ。
もちろん、士官学校で出てくる騎士の方が近距離戦闘は優秀だけど、中距離戦も行うことも出来るということで意外と重宝される。
しかも、精霊で卒業するまで四年はあるのでその間に騎士として鍛えたり士官学校に入学し直したりすることもあるそうだ。
精霊は当然、魔法士に取り立ててもらえる。
魔法士は基本的に中距離から遠距離戦で活躍する。
戦場での花形でもある。
魔法士一人で形勢が逆転するなどよくある話だ。
そして巨人、ここまで来ると魔導士だ。
巨人クラスで卒業した者は殆どが魔導士として扱われる。
竜は言うに及ばず歴史に名を残す人物だ。
「イブ、彼は卒業することになるんでしょうか?」
「んー、精霊に上がると思うんだけどどうだろう。 最初は才能あったんだけどね~? 何でかとても弱くなったんだよ」
十五歳で魔法をあんな風に使えるんだ。
少なくとも今使える最高の威力のある攻撃は『雷の矢』を三本合わせた魔法だ。
威力的には、あの『雷の剣』に劣っているんだよな。
あれでも魔法士になれる精霊クラスに上がれないのか。
僕もヤバイかもな。
しっかり研究して魔法の使える種類を増やそう。
拙作をご覧いただきありがとうございます。
魔法学校における悪役登場です。