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転生生活 未知なる病2

 翌日、目が覚める自分に驚いた。

 いつの間にか眠りに落ちていたようだ。

 思った以上に体が消耗していたのだろう。

 倦怠感があり、まだ魔力制御がうまくいかないが、今日はまだ動けそうだ。

 とはいえ下手に動いて症状が悪化すると困るのでとりあえずじっとしていることにする。

 魔力の流れに意識を集中していると扉が軽く二回叩かれる。


「おはようございます。

 入ります」

「どうぞ」


 入って来たのはこの館の主フォーミュさんだ。


「気分はどうですか?」

「昨日よりはましかな。

 ただ、相変わらず魔力がうまく制御できない」

「なるほど、まだ魔法は使っていませんでしたか」

「そうですね。

 魔法を使うのは少し怖いです」


 魔法の制御を失敗すると大きな事故につながる。

 魔法の威力、方向、性質などの要素が絡み合って作られるのが魔法だ。

 威力は小さ過ぎれば発動しないし大きすぎれば周りを巻き込んでしまう。

 方向が出鱈目になってしまうと当然のごとく目標に当てることすらできなくなる。

 性質はそもそも付与することができなくなる。

 なので魔力が制御ができないときは魔法を使うべきでないのだ。


「魔力制御がうまくいかない理由について、私の知る限りでいいなら教えましょうか?」


 フォーミュさんの言葉に少し驚く。

 それと同時にこの人ならその程度なら知ってそうだと納得する。


「はい、お願いします」

「それでは、そもそも魔力とは何かですが、残念ながら今のところ多くは分かっておりません。

 生命エネルギーという説が一番有力ですが、神から与えられた力だと信じる勢力もあります」

「神から与えられたと信じる勢力?」

「聖勇教会がその最たるものです。

 この教会では、魔力制御に聖水を用いたりする特殊な技術がありますが、秘匿されているため残念ながら参考にすることができません」


 聖勇教会、何度か耳にしたことはあるけど宗教に興味はないからスルーしてきた。


「話を戻しますが、魔力制御において障害となるものはいくつかあります。

 まず、魔力の量、魔力の量が多い者はどうしても細かい魔力制御が難しくなります。

 フレア君ほどの若さで魔力量が大きく制御がうまいのはなかなかいません」


 今は魔力制御できてないけどね。

 しかし、褒められるのは素直にうれしい。


「次に、魔力の質が変わったときに魔力がうまく制御できなくなるという現象が確認されています」

「魔力の質が変わる?」

「ええ、主に瘴気と呼ばれる空気のような物を吸ったりしたときにみられる症状です」

「解決方法は?」

「瘴気が体から抜けるまで待つか、聖水を使うか」

「聖水って手に入るものなんですか?」

「少し手間はかかりますが、手に入らないものではないです」


 瘴気が原因なら聖水を飲めば治るのかな?


「おそらく、パレアさんが持ってきてくれるでしょう」

「他に、魔力制御がうまくいかない原因となる事は何ですか?」

「これは、意外と少ない症例ですが、心が衰弱しているときも使えなくなるということがあります。

 しかし、これはおそらく関係ないでしょう私が見る限りフレア君の心が衰弱いているようにはみえませんからね」


 たしかに関係ないだろう。

 自分の心の状態は自分が一番把握できることだ。

 フォーミュさんの謎の力で心の状態が分かるのは、まあいいか。


「あと、考えられるのは、はやり病の一つ魔法士風邪、魔力制御を乱す薬の服用及び成分を含んだ食べ物の摂取、悪霊などが憑りついている憑依状態、魔力枯渇状態、他にもありますが、どれもが原因が不明のものです」


 魔力の制御がうまくいかない理由か。

 どれにしても厄介なことに変わりはない。


「魔法士風邪に関してはいくつか効く薬がありますが、必ず効くとは限らないので直す方法が定まらないものです。

 どうも、魔法士風邪の中でも原因が複数あるようです」


 そうだろうね。

 風邪と言うくらいだ。

 千差万別人により症状が違うのに対処法が同じなんてことはあってもおかしくない事だろう。


「とりあえずパレアさんが戻ってくるまでどうしようもないってことですか?」

「ええ、情けない話ですが」


 申し訳なさそうにするフォーミュさん。


「いえ!

 そんなことはないですよ。

 原因についても教えてもらえましたしありがとうございます」

「そう言ってもらえて助かります」


 申し訳ないのはこちらなんだよね。

 ただでさえお世話になっているというのに迷惑までかけてしまって。



----------



「困ったわね」


 そう呟くパレアの手には、試験管が握られていた。


「聖水が効かないなんて」

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