転生生活 フレアふきふき
エリイとイブは、学校が終わると即座に帰ってきた。
フレアのことが気になっているのは火を見るより明らかだ。
そんな二人が、フレアの部屋に飛び込むのは必然のことだっただろう。
そして、丁度二人が飛び込んだのは、パレアが、フレアの服を脱がしているところだった。
「あ「あああああああああああああ!」
イブが、何を言う前にエリイが叫ぶ。
「あら、おかえり」
エリイの叫び声にどうじた様子もなくパレアは挨拶をする。
「お邪魔してるわね」
「な、な、な」
エリイは、なを言い続ける機械に成り下がってしまった。
「なんで、パレアさんがいるんですか?
というか何をしようとしてたんですか!?」
エリイの言いたいことを代弁するようにイブが前に出る。
「ほら、私の依頼が終わったあとで倒れたとか言われたら気になるじゃない。
服を脱がせているのはほらこうやって汗を拭くためよ」
そう言ってパレアは、タオルを絞るとフレアの体を拭き始めた。
「私が、代わります!」
「エリイも!」
二人が役目を交代するように要求する。
「どちらが代わるかしら?」
パレアの質問に二人は目を見合わせる。
心なしか二人の間に火花が飛び散っているように見えた。
「あら、困ったわね?
それじゃあ、三人で拭きましょうか?
そうすれば早く済むし何より争わずに済むでしょう?」
パレアの提案に二人はやや困惑しながらも頷く。
話が決まるのを待っていたかのようなタイミングで扉がノックされて老執事のフォーミュが入ってくる。
その腕にはタオルが掛けられていた。
「タオルは必要ですかな?」
「ええ、丁度良かったわ。
二人の分が欲しかったのよ」
「ではこちらを」
そう言ってフォーミュは、エリイとイブにタオルを手渡す。
「本当にタイミングがいいね」
「ありがとう」
イブは、少し訝しそうに受け取り、エリイは素直に感謝の言葉を送る。
「仮にも執事ですからね。
それでは失礼します」
フォーミュはそう言って立ち去る。
「さあ、拭いちゃいましょうか?」
パレアの言葉に二人は同時に頷くのだった。
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なにか柔らかいものが顔に押し当てられているのを感じた。
体の他の部分にも柔らかいものが感じるが、顔に感じるものには妙な重量がある。
温かいそれがあたっているだけでなんだか心が安らぐような気がする。
遠くの方で声が聞こえたかと思うと顔にかかっていた重量がなくなった。
なんだか残念な気分になる。
「あら、気が付いたようね」
その声は、聞き覚えがある声だった。
しかし、エリイでもイブでもない。
誰だろうと思い瞼を開こうとしたが、眩しくて、うまく開くことが出来ない。
「あ、ほんとだ。
大丈夫、なわけないよね」
「おはよう」
僕を見て、イブは自分の質問を自分で消化したようだ。
まあ、イブの質問には、大丈夫って答えただろうけど大丈夫とは思わないだろうね。
エリイは、心配そうに挨拶してくれる。
「おはようございます。
あれ?
皆集まってどうしたんですか?」
「あら?
見て分からないかしら?
貴方が心配でお見舞いに来たのよ?」
僕は、目が慣れてきたのところで女性を見る。
そして、納得する。
「そうでしたか、パレアさん心配させてすみません」
「気にしないの。
親しい人が倒れたら心配するのは当然でしょ?」
パレアさんが親しい人か疑問に思ったけど、親しみを覚えてくれてるならそれは良いことだろう。
「そうですね」
僕は、パレアさんの目を見て同意する。
そんな僕を見て満足したようにパレアさんは頷いた。
「パレアさんばかりずるい!
私にも喋らせてよ!」
「エリイも!」
「はいはい、病人がいるんだから騒がないようにフレア君の負担になるわよ?」
「わかってるよ」
「うん」
二人がパレアさんと入れ替わって二人並んで座る。
「二人とも心配かけてごめん」
「いいよ、別に重たい病気ってわけでもないし」
「うん」
「ところで、僕が服を着てないのって」
ここで、こっそり気になっていたことを口にする。
「当然、皆でフレアのことを拭いてたの」
「うん」
「皆でって事は、パレアさんも?」
「ええ、嫌だったかしら?」
「いえ、悪いなと思って」
「いいのよ(役得だから)」
「いいのよの後に何か言葉が続いてるような気が」
「気のせいよ?」
「そうですか」
まあ、看病しにきてくれたのだ。
ここは、素直に感謝しておこう。
「ありがとうございます」
「私も拭いてたのに」
「エリイも」
「ごめんごめん、二人ともありがとう。
嬉しいよ」
「そ、そこまで言うなら頑張った甲斐があったわね」
「エリイは、もっと拭きたかった」
「私だって……あ」
勝手に語るに落ちてるな。