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転生生活 竜種討伐 躯

「これは、何があったのかしら」


 パレアさんの言葉に答えられるものはここにはいない。

 最弱と呼ばれる『竜種』とはいえ、僕の雷槍で一撃では死なない存在、その首が切り落とされていた。

 一体何があったのか全くわからない。


「この切り口は、刃物でやすがしかしこれは」

「そうね普通の剣じゃない何かに『切られた』ということは間違いないわね」


 僕の雷槍で貫けない石の鎧を断ち切った存在、とてもいい感じはしない。


「まあ、竜種を倒す手間は省けたわ。

 エリイ、これを影に入れれるかしら?」


 パレアさんの言葉に首肯してエリイは呪文を唱え始める。


『広がれ広がれ闇への入り口

 取り込み取り込めすべてを飲み干せ

 深影の箱』


 エリイが唱え終わるとエリイの影が、みるみるうちに広がって行き石竜の死骸の下に広がる。

 広がり終えると石竜の死骸が、徐々に影の中へ入っていく。


「すごい」


 僕は思わずそうつぶやいた。

 エリイを見ると真剣な表情をしていた。

 思ったよりも余裕はないみたいだ。

 流石に大きすぎたのだろうか?

 なんとか影に入ったのを見てエリイに尋ねる。


「大丈夫か?」

「うん」


 エリイは息を少しだけ乱しただけだった。

 しかし、影魔法は凄いな。

 あんな大きな物を影に入れることができるとは、馬車を影に入れることもできそうだ。


「さあ、帰りましょうか」

「そうでやすね。

 必要なものが手に入りやしたし長居は無用でやしょう」


 パレアさんの言葉に竜種があった周りで何かを調べていたウィグラさんが同意する。


「さっさとずらかりやしょう」

「そうねずらかったほうがいいかもしれないわね」


 帰れると思ったら普通空気が緩むと思うのだけど、どうも目的が終わったにしては緊張感がむしろ高まっているように思える。


「さあ、帰るまでは気を引き締めましょう」


 パレアさんの言葉に一同頷くのだった。



----------



 帰り道は、緊張感とは裏腹に何も起きなかった。

 ただし、帰りの道も森は薄気味悪いほど静まり返っていた。

 それでも無事村にまで戻ってきたことに胸をなでおろす。


「さあ、村まで帰ってきたから後は、馬車で戻るだけね」

「お戻りになられましたか」

「あら、村長さんお出迎えありがとう。

 何かあったかしら?」

「何かと申されますと?」

「いえ、何もなかったのならそれでいいわ」


 釈然としないパレアさんの言葉に村長は顔をしかめる。


「森の方で何かありましたかな?

 何やら騎士様が増えているように見受けられますが」

「ええ、そうね。

 竜種の死体があった。

 それも割と最近仕留められたやつね。

 ああ、この騎士が倒したってわけじゃないわ」


 その言葉を聞いた村長の顔の色がなくなる。


「まさか、それほどの存在がここらにいるということですか」

「流石にそこまでわからないわ。

 私達は調べに来たわけじゃないからね」

「そうですか」


 しかし、竜種を切ってしまうほどの存在がいるのは確かだ。

 村長の顔色はすぐれない。


「じゃあ、私達は一旦帰るわ。

 少なくともこのことは冒険者ギルドに報告しておくから調査は来るはずよ」

「そうですか。

 それは仕方ありませんな」


 村長は、完全に納得した様子ではないものの了解の意を示す。


「それじゃあ、馬車を出してくれるかしら」

「わかりましたしばらく待っていてくだされ」

「ウィグラ」

「へい」


 パレアさんの言いたいことを汲み取ったウィグラさんが前に出る。


「馬車は自分が動かしやす」

「そうですか馬車の場所は来たときと同じ場所にあります」

「了解しやした」


 村長は、こちらに軽く頭を下げると立ち去る。

 村長が立ち去ったと同時に一人の青年が僕たちの前に出てきた。


「パレア様」

「わかってるわよ」


 パレアさんとボリスのやり取りに首を傾げつつ青年に目を向ける。

 青年の姿は、至って普通の村人といった感じだ。

 ゴツゴツとした手に都会の人のような細さはないが村の仕事に従事している割には線が細い。

 顔も整っているとは言えず周りに人がいれば溶け込んでしまいそうな人だ。


「何か用かしら?」

「イえ、都市の方から来たと聞いたので、少しだけでもいいので聞かせていただけませんか?」


 最初の言葉のイントネーションがややおかしく感じたが、癖みたいなものだろうと気にしないことにする。

 それに都会のことについて聞きたいと言うのも理解できる。

 こんな村では、娯楽が少ないのだ。

 都会の話を聞きたくなるのはどの世界でも似たようなものだろう。


「そうね。

 何を聞きたいのかしら?」

「ソうですね。

 都市には人がたくさんいるんですよね?」

「ええ、数えきれないくらいいるわよ」

「ナるほど、じゃあ、都市では何が流行っていますか?」

「そこら辺は詳しくないわね」

「はいはい!」


 パレアさんが困ったように考え込むと割り込むようにイブが手を挙げる。


「何かしら?」

「今は、魔法都市クラゲ灯が流行ってるよ」

「魔法都市クラゲ灯?」

「そうなの贈り物としてよく使われてるみたい」

「ああ、そういえば変わった形のランプが送られてきてたわね。

 あれのことかしら」


 そんなランプ僕は知らないよ。

 流行に疎いとはいえそれは一般人に流行していないものであることはすぐにわかった。


「他にはなにかありますか?」

「あー、一つだけあるな」


 クーデルが魔法都市の流行についてわかっているなんて思いもしなかった。

 僕は、流行について全くわからないためどんなものがあるか密かに耳をそばだてる。


「比較的最近できた店で、名前は優しい魔王亭とか言う名前だったな」

「変な店ね」

「ああ、そうだな。

 聞いたことないか?」

「ええないわね」


 パレアさんに賛同するように僕とエリイ、イブは頷く。


「おかしいな行列ができるほど人気だったみたいなんだが、まあいいか」

「ナるほど優しい魔王亭ですね」


 青年は、納得したように頷く。


「アりがとうございました」


 そう言って青年は満足したように去って行った。


「なんだったんでしょうか?」

「村で過ごしてると刺激が少なくて都会に憧れるんですよ」


 僕の発言にパレアさんはぎょっとするが、何か思うところがあるのか僕の言葉に相槌を打つ。


「そうね。

 けど、子供の口からそんなことを聞くなんて思わなかったわ」


 がらがらと馬車が近づいて来るのが見えた。


「これでようやく帰れるわね」

「遠足みたいだったけどね」

「そうね。結局本物と戦わずに済んじゃったからね」

「お待たせしやした」


 御者台からウィグラさんが声をかけてきた。


「さ、乗り込んで」


 パレアさんの言う通り子どもたちクーデル、パレアさんボリスと乗り込んでいく。


「それじゃあね」

「また機会があれば、よってくだされ」

「そうするわ」


 パレアさんと村長が別れの挨拶のようなものをするのを見た後、ウィグラさんが手綱をしならせ馬車を走らせ始めた。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

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