転生生活 竜種討伐 異変
それは突然のことだった。
日課である薬草摘みに森へ出かけていた。
ここ最近の森は静かで薄気味悪いが、薬草摘みをすることが日課であり自分の食い扶持である以上やらないわけにはいかなかった。
薬草摘みは、それなりに薬草が生える場所が決まっておりそして動物の縄張りなどのこともありいく場所は決まっていた。
それでも大きな生物は幾度も無く見たことはある。
見つかっても運が悪くない限りは、問題があることは無かった。
いざと言うときのために剣を持ってはいる。
そして、その剣をまともに使うことは一度も無かった。
動物たちは剣を抜く音を聞くだけで逃げ出すからだ。
それが村に伝わる護身術だ。
たまに自警団が、山へ行って金属音とともに凶暴な動物を狩ることが重要と聞いたことがある。
しばらくして、武器庫を連想させるとともに生臭い臭いが漂ってきた。
血の臭いだ。
獲物を捌く時に良く嗅ぐ臭いだったため容易に思い至った。
しかし、これはとてもまずいことだ。
動物が捕食しているところに近づくのはとても危険だ。
自分の獲物を横取りされると思われると剣を持っていても襲い掛かってくる。
いったん息を潜め捕食の音がするほうに耳を澄ませる。
何も聞こえないことを確認すると先へ進む。
もうすぐで薬草が生えている最後の場所だ。
何も居なかったらすぐに摘んで帰れば大丈夫だと思った。
早く帰ることが出来るのはいいことだ。
長く森に潜ることは良くない。
そして、生臭いものの正体が分かるところへ出る。
それを見たときありえない状況に絶句した。
大きな生物が屍を晒していた。
それはこの森の主とも呼べる存在だった。
ただし、その姿は、捕食されたことを物語る。
体中の肉が何者かに食べられたようにえぐられて骨であろう白いものが所々見えている。
彼に恐怖心を抱かせるには十分なものだった。
「ひぃ!」
草が揺らされて音がしたので驚いて情けない声を上げてしまう。
その時姿を現したのは兎だつた。
捕食される側である兎が現れたことに安堵するが、その兎が妙に警戒心が薄いことに疑問を抱く。
しかし、折角ご馳走が自分から出て来てくれたのだ。
捕らえないという選択肢はない。
自分は食べれそうにないが、仲間には大いに喜ばれることだろう。
早速彼は、鎌を構える。
高警戒心が薄いのであれば、捕らえるのは簡単だ。
そう思って近づいていく。
突然、右足が空を踏む。
突然のことに彼の思考は一瞬停止した。
地面に転がり森の木々の草葉を見つめて我に返る。
いくらご馳走のチャンスとはいえ慌て過ぎだろう。
自嘲して前を見る。
相変わらず目の前にはあたり一面を赤く染める凄惨な森の覇者の姿が目に映る。
流石に兎は逃げただろう。
立ち上がろうと右足に力を入れる。
そこで、彼は右足の感覚がないことに気がつく、疑問に思い右足を見ると自分の足が、膝から下が無くなっていた。
「うわぁあああああああああ!」
彼は思わず声を上げた。
あまりのことに叫ばずにはいられなかった。
しかし、彼は自分の視界に移る一匹の動物が咥えている物を見てしまう。
彼の足を奪ったのは、他でもない獲物と思っていた兎だ。
いや、それは、兎とは違うものだった。
「ひ、だ、誰か!」
無機質な瞳が逃げようとする彼を見つめる。
そして
「ガブフゥ」
背中から衝撃を受けた男性は、悲鳴を上げることすらできず喉から血を流して意識を失った。
兎のようなモノは、それをしばらく見つめると男性の屍の上に座り込みそして突然痙攣し始めた。
そして、目や鼻、口や耳から黒い液体が流れ出した。
黒い液体は、男性の屍の口から入り込む。
痙攣していた兎は、しばらくして倒れる。
そして、屍だった男性が動き始める。
「イア」
男性はそう口にして自分の足を取りにいく。
足を繋がっていた場所につけるとそのままくっつく。
兎に切り裂かれた喉が何も無かったかのように戻っていく。
「イあ」
男性は、言葉を発して森の奥に進んでいく。
「サて、薬草摘みだったな。
コの奥か」
元の男性のようでそうでない何かになって。
拙作をご覧いただきありがとうございます。