転生生活11
朝、起きると見知らぬ少女が自分の上にまたがっていた。
っていうか人の上で跳ねていた。
「痛い!」
「あ! やっと起きた!」
短髪の少女はどうやら僕を起こしに来てくれたらしいが
「痛いって、人の上で跳ねるな!」
「だって、全然起きないんだもん!」
またがる少女を押し倒して座り
「いや、そんなことをするほど熟睡してないだろ」
とつっこむ、そして、そもそも誰だお前はと言おうとしたとき、ドアが開く音がしてエリイが部屋に這入って来た。
「フレアくんおっは・・・・・・よ・・・う」
そして、部屋に入って来たエリイはベッドに座っている僕と寝ている短髪少女を見比べて
「誰よその女は!」
とすごい形相で聞いてきたので慌てて釈明する
「朝起きたら僕の上に乗っていた知らない子だよ」
しかし、エリイ聞く耳を持たずに
「フレアくんのバカ!」
というなり出て行ってしまった。
何だってんだ全く。
朝からなんてフラグを立てやがるこの短髪少女
「へえ、フレアくんっていうんだ」
押し倒された短髪少女はうぇっへっへと不気味な笑い声を上げた。
僕はため息をついて
「で? そういう君は誰だ?」
「え? 私の名前? 教えようかな? どうしようかなあ?」
すごく面倒くさいな。
「えへへ、そんな蔑んだ目で見ないでよぉ」
と言って押し倒されたまま起き上がらずに体をくねらせる。
訂正、すごく気持ち悪い。
「いい加減にしないと怒るよ。 朝から人の上で飛んだり跳ねたりしやがって、終いには人のベッドの上で体をくねらせるな」
「わう、わかったわかった」
「で、名前は?」
「私はイブリス=アインギル=イグニス=エルヴォルト=ドラッケンだよ」
長っ!
「みんなはイブって呼ぶんだ」
「わかったよ、イブ。 ところでなんで僕部屋に這入ってきたの? っていうかなんで人のうえで跳ねてた!?」
「朝ごはんだから起こしてあげようというのと、同じくらいの年の男の子がこの館に来たの初めてだから嬉しくてつい」
「前半はまだわかるが後半結局、『つい』でやってるんじゃないか!」
なんか質が悪いなこの子。
イブは勢い良く後ろに倒れると、勢い良く足を上にあげて逆立ちして新体操の選手よろしくベッドから飛び降りて足で着地して
「じゃあ先に食堂に行ってるねぇ」
と言って走り去っていった。
身体能力高いなとちらりと思ったがそれより朝からなんて騒がしいんだ。
いや、主に一人のせいだが、ひとまず起きて今日は、昨日見て回ったドアゴン街にまた行くことになるだろう。
寝間着なのだが、食事ならばひとまずこの格好のままでいいだろう。
そう思いながら通路に出るとちょうどフォーミュさんが扉の前で待っていた。
怖っ! フォーミュさん怖っ!
「ふふ、何分こういった執事が私の好みなもんですから」
コスプレ感覚か!
「こすぷれ感覚でございます」
ん? フォーミュさんコスプレ知ってるの?
「ええ、知っていますとも、まあその話はおいおいということで、朝ごはんが出来てますよ」
そう言ってフォーミュさんは一礼すると先に一階に降りて行った。
食堂に着くとイブとエリイの他に見知らぬ男性が座っていた。
そしてすごい勢いで食事を口に運んでいた。
「誰だ!」
何だ?俺ら以外にも人がいたのか?
「はい、その通りです」
そういいながらフォーミュさんは、食事を運んで来たようで右側の扉からワゴンを押してきた。
そして後ろにも何台も引き連れてきている。
「相変わらずすげえなフォーミュさんの魔術!」
先客の男性が叫ぶ。
いちいち叫ぶなっての
「すみませんフレア君」
フォーミュさんは心の声を拾うんだったよな。
「お? おおすまんいつものことだからつい癖でな」
いつも? 毎回あの反応を? 多分テーブルの上にすでに食事があることを考えると毎回だろうな。
「毎回あの反応ですな」
「おお! まあ感動することはいいことだとばあちゃんから聞いたからな出来る限り感動できることにはしていこうと思っている。 ばあちゃん曰く長生きの秘訣だとか」
フォーミュさんは男性の方をみて頷くと
「ふむ、紹介しておこうかフレア君、こちらの男性はアルヴァンス=グリフィスこの館に住んでいる魔法士だ。 アル、こちらフレア君、来週から学校に通うことになる」
「ほう! 魔法「はい、そのとおりでございます」
すげえフォーミュさんが若干苛ついてるのがわかる。
フォーミュさんはコホンッと咳ばらいをして
「お見苦しいところを見せて申し訳ありません」
と頭を下げる。
「いや、館の主が頭を下げないで」
「いえ、主だからこそでございます」
なるほど、執事としての矜持というものか?
「言っちゃまずかったか?」
「まあ、フレア君なら大丈夫でしょう。 しかし、慢心は持たないほうがいいのですよ。 そこら辺はあなたもわかっているでしょう」
気まずそうに、頬をかくアルヴァンスさん
「まあ、とにかく食事にしましょう」
そう言って、フォーミュさんは手を振り上げるとワゴンに乗っていた皿がテーブルに飛んで行く。
「はあ、すごいな浮遊魔術」
ある意味、アルヴァンスさんのほうがすごいよ。