転生生活 竜種討伐 村到着
衝撃を受けて我に返るとそこは、馬車の中だった。
前世のゲームを終えた時のような倦怠感が体中を襲う。
「お、起きたな。
しかし盛大にやらかしたな。
完全にオーバーキルだったぞ」
そう言って声をかけてきたのは、クーデルだ。
「見てたんですか?」
「ああ、『戦闘遊戯』の中の状況は、この盤の上にある程度再現されるからな」
そう言われてみると、確かにみんなの位置が最後に僕が見たときと同じような状況だ。
しかし、僕のコマだけが盤の外に出ている。
「お前だけ許容ダメージを超えたらしいな。
他のみんなは大丈夫そうだ」
盤面を見てみると確かに僕以外の駒がしっかり残っている。
しかし、疑問点が一つ。
「この竜の駒は、クーデルが用意した?」
僕は、盤面で砕けていた駒を指差す。
竜を模した頭部が残っていたからそれが竜の駒であることは容易に想像がついた。
「いや、この駒は、盤上に現れた奴だな。
中でパレアさんが、召喚してただろう?」
クーデルの言葉に頷く。
僕が『戦闘遊戯』の中に入る前には無かった駒を指差して尋ねる。
「じゃあ、この余っている人の駒ってウィグラさんなんですか?」
「そうなるな。
流石に俺もやられたみたいだしな」
「もしかして、砂のゴーレムも駒になってましたか?」
「ああ、パレアさんの不定型ゴーレムか。
確かに駒として盤上にいたな。
流石におまえの魔法がすぐ近くに着弾したから耐えきれなかったようだがな。
石竜の駒と混ざり込んでしまったみたいだな」
クーデルの言葉に僕は、盤面を凝視する。
確かにゴーレムの腕らしきものが混ざり込んでいるのが見えた。
「ふう、ひどい目にあったわ」
声がした方を見るとパレアさんが腕を上に伸ばして背伸びをしていた。
「まさかあれほどの魔法を使えるとは思わなかったわ。
なんで一発目にあれをと聞きたかったけれど、最初の雷の矢は必要なものだったのでしょう?」
「はい」
「奇襲では使えないわね」
そのとおり、あの魔法の弱点は、雷の矢で倒せるやつや動けなくなるやつには必要ないし雷の矢を受けてもびくともしないやつには大抵避けられるのだ。
「とりあえずあの魔法を使うのは無しね」
「もしかして中もこんな感じになってましたか?」
僕は、盤面の石竜だった駒を指差す。
「そうねとても素材採集できる状態じゃなかったわ。
一応もう一度やっておきたいけどあなたの魔力は大丈夫なの?」
「はい、魔力だけはたくさんありますから」
「見栄を張らなくていいのよ?
あれだけの魔法を使えば、どんなに強大な魔法使いでも魔力不足を引き起こすわ。
休んでからまたやりましょう」
見栄ではないんだけど、しかし、妙な気疲れがあるため休むことには異論はない。
僕は、エリイの方を見る。
エリイが起きる気配がない。
「あの、エリイが起きないのは?」
「ああ、気絶落ちしたみたいね」
「気絶落ち?」
「ええ、初めて『戦闘遊戯』を体験した人は、疲れから気絶することがよくあることなの」
「それって大丈夫なんですか?」
「ええ、ただ疲れているだけだから大丈夫よ。
それに良いこともあるしね」
「良いことですか?」
「ええ、あなたは体験したことがあるんじゃ無い?」
パレアさんの言葉に首を傾げる。
僕は『戦闘遊戯』をするのはこれが初めてだ。
「え?
てっきりマリコのところで経験済みって思ったのだけど違う?」
「はい、そもそも『戦闘遊戯』という物を初めて知りました」
「おかしいわね?
普通は、疲れで気絶するのよね。
何か心当たりは無い?」
パレアさんご質問に思い当たる節があるか考える。
僕が他人と違う場所があるとすれば、二つある。
一つは魔力の多さである。
既に公になっているしパレアさんに隠す必要はない。
そもそもクーデルがしっててもおかしくはないしさらに、本格的に調べれば分かることだろう。
ただもう一つの特異性、僕が転生したことについては、誰かに打ち明けるつもりは無い。
余りにも異形過ぎるからだ。
この小さな体の中に得体の知れない存在がいるとでも勘違いされる可能性もなくはない。
だから僕が言えることは一つ。
「一つだけあるとすれば、僕が持つ魔力が他の人より大きいということぐらいです」
「本当に魔力に自信があるのね
確かにあれ程の魔法を無理なく放ったことを考えるとあなたが尋常じゃない魔力を持っていることは確かね。
なるほど魔力の大きさに関係するかは、調べてみる価値があるわね」
パレアさんは、『戦闘遊戯』を見て頷く。
そして僕の方を見る。
「とりあえず最初の魔法は何発撃てる?」
「十発撃っても余裕があったので、何発撃てるかはわかりません」
「十発以上あの魔法を放てるってこと?
はあ、とんでもない子ね」
驚いた顔をするパレアさん。
そこで御者台の方からウィグラさんが叫ぶ。
「村が見えてきやした!
降りる準備をしてくだせぇ!」
「わかったわ!
さあ、聞いたわね?
とりあえず今日は村で休んで明日、竜種の素材を獲りに行くわよ」
「はい」
そうして馬車は村の中に入っていくのだった。
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