転生生活 竜種討伐 戦闘遊戯・前
次で戦闘に入ります。
今回は準備ということで
パレアさんの声が聞こえてきた。
同じ馬車に乗っている割には、おかしな表現だけど、実際そうとしか言えないものだった。
「もう目を開けてもいいわよ」
パレアさんに言われて、目を開くとそこは何もない真っ白な空間が広がっていた。
「ここは?」
「あの『戦闘遊戯』の中よ」
「「「え?」」」
辺りを見回すが、確かに馬車の中ではないのは確実だ。
今この空間には、パレアさん、ボリスさん、エリイとイブそして僕の五人だけだった。
「あの板の中なの?」
「そうよ」
「もしかして、魔法道具ってやつ?」
「もしかしなくとも魔法道具ね」
「ほえ~」
イブが感嘆すると同時に納得する。
しかし、魔法道具にはこんなものもあるんだな。
一番身近な魔法道具が、ランプなだけありこんな奇妙な物があるとは知らなかった。
「ここで何をするんですか?」
「連携確認よ」
「連携確認?」
「最弱と呼ばれるとは言え対竜種戦なのよ
本当ならイメージトレーニングだけで済ますの。
だけど今回はあなた達がいるから少しだけずるをすることにしたの」
「ずる、ですか?」
「そう、そもそもあなた達は、竜種との戦いをイメージ出来ないでしょう?」
「はい」
「うん」
僕とイブは返事を返しエリイは頷いた。
「だから直接戦った方が良いと思って用意したのよ」
『石竜召喚』
僕はパレアさんの言葉に首を傾げる前にパレアさんが、呪文を唱える。
パレアさんが呪文を唱えると彼女の後ろに光の粒子が集まっていき大きな何かの形を作っていく。
そして光が弾けると光の中から岩の塊が出て来た。
「これが、石竜と呼ばれる最弱の竜種よ」
パレアさんの言葉を聞いて僕は、驚く。
思ったより石竜が大きかったからだ。
最弱の竜種ということで少し舐めてたかもしれない。
「凄い!パレアさんって召喚術使えたんですね!」
イブがパレアさんに質問を投げかけた。
「いいえ、使えないわよ?」
「え? でも現にその竜召喚したじゃないですか」
「使えるならそもそもあなた達を連れてくる必要は無かったわ。
この召喚は、『戦闘遊戯』の機能の一つよ」
「機能?」
「ええ、詳しく教えてあげたいけど機密もあるからそういうものだと思ってくれたらいいわ。
取り合えずこの竜種を相手に戦闘訓練をするわよ」
『仲間召喚』
再び召喚を唱えるパレアさん、すると光が二つ人の形を作り出す。
そして、見知った二人が、光の中から姿を現す。
「あれ?
何でクーデルがここに?」
「それは、クーデルであってクーデルじゃないわよ?」
「クーデルであってクーデルでない?」
僕は、パレアさんの言葉に首を傾げる。
「どういうことですか?」
「クーデル役の人形とでも思ってくれたらいいわ」
「ウィグラさんもそうですか?」
「そうね」
思ったより『戦闘遊戯』の中は凄いようだ。
「ふふふ、その顔を見れただけでこれを持ってきた甲斐があったかも」
僕の顔を見るなり闇のある笑い声を漏らすパレアさん。
しかし、直ぐに元の調子に戻り。
「さて、取り敢えず戦闘の準備をしましょう」
戦闘の準備とは言え何をすれば良いかも分からない。
基本僕の戦闘方法は見敵必殺なので作戦も何もないのだ。
クーデルと一緒にやってたときはいろいろクーデルが考えてくれたのでありがたかったな。
「さて一先ず配置を決めましょうか。
ボリス」
「はっ」
「取り合えずあなたが前衛で竜種の気を集める役ね」
「はっ」
おお、何だか騎士みたいだなボリス。
「そして、イブと私、クーデル人形が防御の補助でウィグラ人形が、竜種の攻撃がボリスに集中しすぎないようにする役目ね」
「そんな難しいことウィグラさんの人形とはいえ出来るんですか?」
「大丈夫よ。
細かいところは気にしないで取り合えず隊列を組みましょう。
ボリスお願い」
振られたボリスは頷き僕たちのほうを見る。
「我輩ボリスとクーデルが前衛でウィグラとパレア様がサポート、フレアには一番後ろで後衛火力になってもらうと言うのでいかがでしょうか」
「さすがに前衛がボリス一人じゃ厳しい?」
「はい、ウィグラのサポートがあるとはいえ前衛はもう一人ほしいところであります」
「そう、わかったわ」
「私は?」
「あなたは、エリイちゃんの護衛ね。
あ、そうだフレア君のことも守ってあげて」
「分かりました」
「エリイちゃんは荷物持ちね」
パレアさんの言葉に頷くエリイ。
「じゃあ、戦闘についてだけどボリスの指示に従うこと」
「ボリスさんの指示に従うんですか?」
思わず疑問を口にする。
今まで主導してきたのがパレアさんだっただけに戦闘もパレアさんの指示に従うものだとばかり思っていった。
「我輩が指揮を執るのに何か問題があるのか?」
僕に対して高圧的な態度を崩さないボリス。
何が気に入らないんだろうか?
「いや、てっきりパレアさんが指揮を執ると思っていたから」
「なるほど、勘違いしても仕方が無いわね。
ボリスが、今回竜種討伐に参加する理由について話してなかったわけだし」
「パレア様、わざわざ言うようなことでは」
「知ってると知ってないのとでは、説得力に違いがあるから説明するわ。
指揮する人物にどこかに疑問を持っているといざと言うときに動きが鈍ったりするからね。
ボリスも経験あるでしょう」
「うむむ」
指揮する人間に疑問を抱いて動きが鈍ったりしたことあるんだ。
「簡単に説明すると竜種を倒したことがあるのよこの人は」
驚いて思わずボリスをみる。
確かに屈強な戦士で戦闘に生きる人物であることは一目瞭然だが、竜種を倒したことがあるというのは心強いことだ。
ただ、このわからず屋が、竜種を倒したことがあるということに少しだけ引っかかりを覚えてしまう。
一応、クーデルにも聞いてみるか。
「さあ、始めるわよ」
パレアさんの言葉に従い僕たちは隊列を組む。
大きい岩の塊の前には、ボリスの壁はとても小さく感じてしまうが、これは予行演習様子を見つつやっていこうと思う。
拙作をご覧いただきありがとうございます。