表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/120

転生生活 魔法都市エディミアル 氷の壁

 一同が来たのは僕が作戦会議の前まで使っていた地下訓練場だ。

 初めて入る四人の内二人は感嘆の声をあげる。

 クーデルとパレアさんだ。


「すごいわね」

「あ、ああ、かなりいい場所だな」

「ありがとうございます」


 クーデルの賛辞の言葉にフォーミュさんが感謝の言葉を返す。


「しかし、これほどの物を造るのはかなり手間と時間が掛かったんじゃないか?」

「確かに大変でしたね。

 しかし、必要に迫られて作った次第でございます」

「ふうん、ここって後付けなのね?」

「左様でございます」

「こんな部屋が必要なことってどんなことかしら?

 何か強力な魔物を閉じ込めたとか?」

「ははは!」


 パレアさんの質問に笑い声で応えるフォーミュさん。

 一瞬だけ纏う空気が変わるが直ぐに元の空気に戻る。


「……失礼しました。

 大変心苦しいですが、秘密にございます。

 ただ、一つだけ言っておきますとこの事を知って良いのは王に認められた者のみとなっておりますのでご了承ください」


 まさか、王が出てくるとは思わずフォーミュさんを凝視してしまう。


「ひとまずこの話は置いておきましょう。

 それよりもまず実力を見るというお話でしたでしょう?」

「そうだったわね。

 釈然とはしないけど取りあえずエリイちゃんとイブリスちゃんに実力を見せてもらいましょうか?」

「それじゃあ私から実力を見せてあげる」


 イブはそう言って杖を構える。


『水よ壁となり我を守れ』『凍れ我が壁触れるもの全て凍てつかせよ』


 いつか見た氷の壁を出現させる。


「なるほど、言うだけのことはあるな」


 がっしりした体格のボリスがそうつぶやいた。


「これならいいんじゃないか?」


 クーデルは尋ねるようにパレアさんを見る。

 パレアさんはイブが作り出した氷に向かって歩いていく。

 氷の壁の前まで行くと何か取り出した。

 そして氷の壁にその取り出したものをくっつけた。


「ぱ、パレアさん?

 それはやりすぎでは?」

「いいえ、このぐらい耐えてもらわないと困ります」


 クーデルが焦ったように言いパレアさんが、頑として譲らないといった感じだ。


「イブリスちゃん一応離れておいて、怪我しちゃいけないからね」

「大丈夫! 私の『氷の壁』は破られたことは一度もないから」

「すまんイブリス、パレアさんの言う通りにしてくれないか?

 頼む」

「どうしてですか?」

「本当に危険だからだ。

 壁が無事なことを確かめれればいいから君が壁のそばにいる必要性はない」

「私がいた方が防御力が高いんだけど?」

「それでもだ。

 頼む」


 クーデルの説得にイブはため息を吐いて首を左右に振り。


「仕方ないですね。

 ですが、少しだけ細工してもいいですか?」

「もちろん」

「では」

『水よ』


 イブがそう言うと氷の壁の周りの地面が水浸しになる。


「はい、準備はいいよ」


 準備ができたようでイブはその旨をパレアさんに伝えて氷の壁から離れる。


「それでいいのか?」


 イブは、こちらに来てクーデルが尋ねると頷き答える。


「大丈夫」

「そうか」

「なら行かせてもらうわよ」


 そう言ってパレアさんは筒状の銃のようなものをとりだす

 記憶に間違いがなければあれは、フリントロック式と呼ばれる型のものだったと思う。


「少々お待ちください」


 いよいよと言ったところで待ったがかかる。


「何? フォーミュ、詰まらない事だったら怒るわよ?」

「いえ重要なことです。

 イブさんの壁が正常に機能するかどうか『守られる標的』を用意しておいた方がいいでしょう?」

「まあ、そうだけど何かあるの?」

「そうですねこういうのはどうでしょう」


 フォーミュさんがそう言うと氷の壁の後ろの地面が膨れあ上がったかと思うと人の形になった。


「これでいいでしょう」

「そうね、ありがとう」

「いえいえ」

「それじゃあいくわよ?」


 パレアさんは銃を構える。


「ええ」


 イブが頷くとパレアさんも頷き引き金を引く。

 甲高い銃声の直後、ドンッと音がしてそれと同時に地面が揺れる。


「なるほど、これはすごいわね」


 氷の壁に一瞬だけひびが入ったように見えたが瞬く間に元に戻って行った。

 それと同時に地面の水がまるで吸い込まれるように氷の壁に向かっていく。

 どうやら、フォーミュさんが用意してくれた標的も無事のようだ。


「これでいいでしょう?」

「そうね認めるわ」

「けど、すごいねあれ」

「そうでしょう?

 衝撃を増幅させる魔石なんだけどまだ調べている途中でね。

 名前も付けてないの。

 試作品としては、十分なんだけどどうも使い勝手が悪いのよ。

 こういうときでもないと試せないし丁度良かったわ」

「え? 私、実験に付きあわされたの?」

「似たようなものだけど、あの衝撃石は一応竜種の一撃に届く衝撃だから決して無駄なことでもないわ」

「そう、ならいいか。

 次は、エリイの番だけど、影に入る容量を教えればいいだけだから危険はない?」

「そうね。あなたが守る以上大丈夫ね」

「よかった」


 そして一同の目はこちらに向く。

 まあ、エリイは僕の後ろにいるのでエリイを見ているんだろうけど。


「エリイ、取りあえず影魔法の入る量を教えてくれないか?」

「たくさん」

「ちょっと抽象的すぎるかな」


 僕は、頬を掻いて苦笑する。

 さて、どうしたものか。


「エリイちゃん、フレア君に付いて行きたかったら隠れてちゃダメ。

 ちゃんとフレアの横に立たないといけないわよ」

「うん」


 パレアさんに言われてエリイは僕の後ろから出てくる。


「それで、エリイちゃん影魔法に入る量もう少し具体的に教えて欲しいな。

 影に入った中で一番大きくて一番重たい物でもいいし一番多く何を入れたかでもいいのよ?」

「うん」


 そう言ってエリイは俯く。

 そしてそのエリイをみんなで見る。

 僕は、いたたまれなくなりフォーミュさんの方を見る。

 エリイは大丈夫なのか?

 そう思うとフォーミュさんは頷く。

 そうか、それはよかった。

 しかし、少し考える時間長くない?

 そう思うと同時にフォーミュさんが一言エリイに伝える。


「エリイさん、物じゃなくてもいいのですよ。

 生き物であったり、人でも構わないのです」


 フォーミュさんがそう言うとエリイが、顔を上げる。


「一番多く入れたのは人が五人」


 エリイは、しずしずと結論を言葉にする。


「五人、それは大人?

 子供?」

「大人が一人と子供が四人」

「なるほど、どう使えそう?」


 パレアさんは、エリイに質問を飛ばしそして癖のある男ウィグラに尋ねる。


「ええ、大丈夫どころじゃねぇ。

 エリイさん一人いるだけで、この人数だとニ、三週間は森にこもれまずぜ」

「そう、分かったわ。

 二人は連れて行く」

「やったー!」


 イブがそう叫んで僕に突撃してくる。

 男としてはしっかり受け止めないと……ぐへぇ。

 は、腹に突撃するのはやめてくれ。

 エリイが右腕をがっしりと掴んでいたから何とか耐えれたけど普通に苦しいから。

 エリイありがとうと言おうとするが、エリイの様子がどうもおかしい。

 なんだろうと思ったが、顔を伏せているため表情は見えない。

 まあ、いいか。


「それじゃあ、持っていくのをあきらめていたものがあるから取りに行くわよ」


 パレアさんはそう言って、歩き出した。

 それに続いてボリスとウィグラも付いて行く。


「エリイは来てもらうとしてフレアたちはどうする? ついてくるか?」

「はい」

「ならついてこい」


 クーデルは、駆け足でパレアさんを追いかけていく。

 僕は、顔を上げてこちらを見るエリイとタックル姿勢をやめてこちらを見るイブを見て頷く。


「とりあえず付いて行こう」

「うん、そうだね」

「はい」

拙作をご覧いただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ