勇者と少女の小噺
「ねえ、少女」
「何だい少年」
「お嫁さんになって」
「少年が勇者にでもなったらな」
「うんわかったー。約束ね」
「ねえ少女、じゃーん」
「何それ」
「勇者の聖剣だよ! 抜いてきた」
「はああ?」
「お嫁さんになってくれる?」
「えっ」
「約束ちゃんと守ったよ」
「いや、えーと」
「でもね、魔王討伐に行かなきゃなんだって」
「……そのための勇者でしょ」
「そうだけど。少女と離れるのやだなー」
「自分で決めたんでしょ。頑張りなよ」
「うん頑張るー」
「あっ少女! 来てくれたんだ!」
「まあ幼馴染みだし、見送りくらいは……」
「今なんて?」
「何でもない」
「ねえ少女、俺頑張るからお守り欲しいなー」
「?」
「ほっぺにちゅー」
「!!」
「いたっ。叩かないでよ」
「叩かれるようなことを言う方が悪い」
「えー」
「これ貸すから」
「少女のリボン?」
「ちゃんと返してよね」
「……うん。行ってます」
「少年なんか、嫌いだ」
「帰って来るって言ったくせに」
「嘘つき」
「勇者なんて柄じゃないのに」
「……」
「なんで」
「約束守れないじゃない」
「返事くらい聞いて行ってよバカ……」
「えっ何々? なんて言ってくれるの?」
「!? で、出たぁっ!?」
「ひどいなぁ。帰ってくるって言ったでしょ」
「だ、だって……勇者は魔王にやられたって」
「あーそれ、デマだよ。ほら元気」
「……」
「少女? 泣いてるの?」
「誰のせいだっ」
「へへ。俺のせいか」
「笑うなあっ」
「うん。ごめんね」
「大嫌い」
「俺は好きだよ」
「……バカ勇者!」
「うん。借りてたリボン返すね。ねぇ少女」
「なんだよ」
「いつ式を挙げようか?」