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短編集

底辺(じごく)少女 ~底辺作家通信への書き込み~

作者: 星馴染
掲載日:2016/02/07

深夜、一人の少女が、ある小説投稿サイトへとアクセスする。

『書籍化きまりました!よしみ』

『おめでとー、よしみちゃん!』

『すげえ、俺絶対買うわ!』


そのついた活動報告に、一人の少女は書き込みをする。

『こんな糞みたいな小説誰も買わないって』


そう書き込んで、一人の少女は一年前の事を思い出しながら涙を零した。


「ねえ、伸子。あんたさ、すっごく小説読むの好きじゃない?書いてみたら?プロになれるかもよ?」

そんな良美の話に、首を振る伸子。

「そんな事ないよ、良美。読むのと書くのは全然違うよ」

「じゃあさ、私と一緒に書こうよ。伸子と一緒に何かしたいし!」

「そ、そう……じゃあ一緒に投稿しようか」


そして……。


『伸子 全五十二作品。総合ブクマ4。総合ポイント18』

『良美 全四作品。総合ブクマ3500超え。ポイント1万超え』


「……ごめんね、伸子。私の方が表現下手なのに」

 そういう良美に、伸子は八つ当たりする。

「そうよ、どうして……どうしてこんな誤字だらけの小説が、日刊に入るのよ!おかしいわよ!」

「ご、ごめんね伸子。チッターでフォロワーさんがいっぱいポイントくれたみたいで」

「も、もう知らない!」


そして、良美とは卒業と同時に疎遠になってしまった。


「良美さえ、良美さえ居なければ!良美がフォロワーに私を応援する方向にさえ持って行ってくれれば!」


そして、伸子は都市伝説のサイトへとアクセスする。


『底辺なろう作家通信』

 ほ、本当にあった!こ、ここに炎上させたい作家の名前を入れれば……。


「読んだ?」


「ひっ……!?」

 パソコンから一人の少女が浮き出てくる。

「私はナレー・アイ。永遠のなろう作家よ……」

 そして、西洋人形のようなナレー・アイと名乗る少女が現れたのだ。


「永遠のなろう作家……。それって本を出せないって事ですか?」

「私はまだ本気を出していないわ。昔、某出版賞に最終選考まで残った」

「へえ……凄いですね」


「その後、付いた担当に、私の作品が佳作にも入らないなんて、選考者は見る目がない。

貴方達は中華のゴムロボなの?と応募賞をディスってから作家の道は無くなっただけよ」

「……」


 冗談よ、とナレーは薄く笑った。

 先行者とか、かなり古いネタを出すナレーの顔を良く見ると、化粧でごまかしていたが小ジワが見え、伸子は黙った。


「お、お願いします。良美を、良美を叩いて!」

「どうしてこの人を叩きたいのかしら」

 

「良美は、良美は私よりも作品が低俗で……チッターのフォロワーを使って私よりもランクが上なんです」


「どれどれ……この人の作品は、『悪役令嬢gaパンツdeサンバ』……ね。確かに低俗だわ」

「そうなんです、そんな低俗な作品なのに私よりも上のランキングに居て、ブクマもポイントも上なのが許せない!」

「まず、貴方の作品を見せて貰おうかしら。『唯我独尊女神のねじ式叫び』これが代表作?なのね……?」


 はい、といい返事をする伸子に、くそつまんなそう……と呟くアイ。

「……仕方がないから読むわ。えっと、良美さんのは40話完結か。結構長いわね」

「駄作の癖に、何でこんなに長い話を書くのかしら。アイさんもそう思いますよね?」

「……まだ、読んでる途中だから黙ってて」


そして、二十分後。作品を流し読みして良美の作品を読み終える。


「次は、伸子さんの作品ね。えっと、全2986話……しかもエタってる……?」

「エタってません!まだ小説の神が降りてきてないだけで休載中なんです!」

「二年更新無しで、他の連載もしてるのに?」

「エタってません!休載中なんです!」

「……ま、まあいいわ」


 そして、伸子はカチカチとマウスをスクロールさせて読むアイを待つ。

 ふう、と一息ついて、アイは二つの作品を批評し始めた。


「良美さんの作品は、恋愛物ね。

悪役令嬢を使いつつ、パンツでサンバを踊る残念イケメン王子はキャラクター魅力が満載よ。

そして、物語の要所に出てくるさりげない場面や言葉遣いからリア充っぽさを感じるわ。

毎日更新を護ってる中で、意味が通じる程度の軽い誤字が沢山って感じね」


「そ、そうよ!良美はリア充なのに、小説を書くしかできない私よりも上に立っているの!誤字だらけの馬鹿の癖に!」


「良美さんのはきちんとした構成よ。起承転結もしっかりしてるし、オチも解りやすい。

何よりリア充っぽい内容で進むストーリーにリアリティがあるわ」


「私の作品はどうなんですか?」

「……自分で自分の小説を作品って呼ばないで。作品に対して失礼よ」

「え、私の小説ってそこまで酷いの!?」


「伸子さん。貴方の作品は、何だか……臭いわ」

 鼻を摘みながら、アイは汚らわしそうに手を振る。

「臭いって、何を言ってくれてるんですか?」


「何、この王子。どこかで見た設定。それに性格もそのまま」

「そ、それはパクりじゃないです。インスパイアです」


「……そう、あと文が繋がってないし」

「余韻です、余韻を残してるんです。行間を読んで下さい!」


「誤字も多いし」

「誤字じゃないんです!それは言葉遊びです」


「適当な造語が常識のように出てくるし」」

「そのための設定集が、私の小説リンクから飛べます!280話でそっちは完結してます!」


「……貴方、ブクマが欲しいのよね?」

「ブクマよりも自分が満足できる作品を書くのが重要だと思います」


「底辺に流して晒すわよ……?」

「ひっ!?」


「なろう作家って生き物がかわいそうに思えました。

辛い現実から逃げようと、過去のまぐれあたりにすがって

到底叶いそうにない書籍化を追っていたり。貴方の場合はまぐれ当たりもないけど」


 酷いと叫ぶ伸子に蔑んだ目でアイは伝える。


「ランク外に集いしし哀れななろう作家よ……。人の作品を傷つけ貶めて自分を棚上げし批評の魂。

いっぺん死んでみる?(ネット社会的な意味で)」

「や、やめて下さい!?」


「本当の地獄は人の中にある。あなたの中にもね……この駄作、なろうの底へ流します……」

 数日後、伸子の作品は、運営へのクレームが大量に入り、伸子は逃げるようにアカウントを削除した。


「人を呪わば穴二つ。底辺作家達の嫉妬は無くならないわ」

 そして、今日も小説を書かず、底辺作家通信へのPOSTを待つアイであった。

スロットで大負けして書きました。

インスパイアでオリジナル作品です!

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