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魔王決断

「魔王って……そのまんま魔王の事?」


真也は眉をひそめて、金髪の少女イリアを見つめる。


この子はちょっと、絡みづらいオタクとか厨二病の類いなのだろうかと真也は考える。


イリアは真剣な表情を崩さずに肯定する。


「当たり前です。それ以外に何かあるといのですか?」


「いや、何かあるかと聞かれても該当するもんはないんだが……信じられんな。なんか証拠とかあるなら別だけどよ、例えば魔法……とか?」


厨二病にとっては辛いだろうが、彼女の目を覚ましてやらねばならないと、真也は難題を投げつけた。


だが……。


イリアは小首を傾げて、両手を合わせた。


「魔法とはこの事でしょうか?」


イリアは何気無い仕草で手から緑色に光る球体を出現させた。


「ーーは?はあああっ!?」


その光る球体は、ゲームやマンガなどでよく見かける魔法そのものであった。


真也はあまりの出来事に目を疑った。手品なようなものではないかと。


真也の驚いた反応を見たイリアは不思議そうに彼を見上げる。


「あ、あの?まだ術式を組んでいないのですが……ご満足頂けましたでしょうか?」


「え、何?まだ、なんかあるってのか!?」


真也の驚愕に対して、イリアは戸惑いながら応える。


「は、はい。これは魔力そのものなので、このままではただのエネルギー弾でしかありません」


「へ、へえ、そーなんだ」


真也の頭にある考えがよぎる。


「と、ところでさ?ここってどこ?」


なぜこんな大事なことを今まで聞こうとしていなかったのだろうと、真也は冷や汗を垂らした。


イリアはそんな事など、露ほども知らずに素直に応えた。


「今わたくし達がいるのは、西海洋にあるフォルパス列島の中部です」


「へえ、そんな所知らねえなあ……あははは……って!ここは異世界なんじゃねえかっ!?」


真也の当たって欲しくなかった考えが、彼の中で確信に変わった瞬間であった。


「とりあえずここから出ましょうか?城の案内を致しますので」


「そうだな……」


部屋から出て移動するようイリアに促された真也は「もうどうにでもなれ」と、諦めて頷くことしか出来なかった。



部屋から出る際、イリアから銀色の仮面を渡される真也。


「つきましては、こちらの仮面をおつけ下さい」


「え、なんで?」


真也の問いに、イリアは複雑そうな顔つきで頭を下げた。


「申し訳ございません。だいぶ厄介な事になっておりまして……説明は後ほどさせて頂きますので今は……」


畏まって「ご了承ください」と、深く謝られてしまっては、そうするほかない真也であった。


真也はイリアの手から仮面を受け取ってそれをつける。


銀色の仮面は上半分のみで、目と鼻が隠れるだけのものだった。


「こちらです。わたくしについて来て下さい」


真也は黙って頷いてイリアの後を追って部屋を出た。


部屋を出ると、そこは石で作った狭い螺旋階段の通路だった。高さはそれ程なく、階段の上に到着する。


だが、その先は石の壁で遮られており、これ以上は進めないと真也は思った。


すると、イリアはおもむろに右手を壁の中央当たりに据え置いた。そして、先ほどの緑色に光る魔力を創り出し、壁に流し込んでいく。


一瞬無数の緑色に光る線が壁を駆け抜けた。と、思った時には壁は元からそこに無かったかのように、綺麗に消えていた。


そして大きな部屋へと繋がった。


「この部屋がわたくしの自室です」


「結構広いんだな」


魔法の凄さを体験して上手いコメントが思い浮かばない真也。


今来た道を振り返ってみると、そこはもう本棚の一部だった。


「もう一度向こうに行くにはさっきと同じようにすれば良いのか?」


真也の問いにイリアは笑顔で応える。


「はい。今のように鍵となる箇所を触れて行うと開くようになっています」


真也はイリアの応えに「隠し扉のようなもんか」と、納得する。


イリアの部屋は先ほどの部屋とは違い、綺麗に塗装されている。その代わり、部屋の装飾は乏しく広さの割には質素なイメージを覚える。


彼女の部屋の内装を眺めていて、再び疑問に挙がったのは、真也とイリアが並んだ絵画であった。同じ絵画ではないが、こちらの絵画も二人は仲の良さそうに描かれている。


「そういやこの絵画の俺ら、結構良い雰囲気に見えるんだが……まさかそういう関係だとか言う訳じゃねえよな?」


「あ……ああっ!?」


真也が指差した絵画を見たイリアは、顔を真っ赤にさせて自身の顔を覆い隠してしまった。


「すっ、すいませんっ!つ、つい出来心でわたくしの妄想を画家に描かせてしまいましたあっ!」


「妄想かよっ!?」


妄想だったことに何だか若干引きつつも、真也は表情を綻ばせた。なんだかんだで照れるのだ。


「なんだ良かったぜ!付き合ってたとか言われたらどうしようかと思ったぜ!はははっ」


「え……あっ!」


「うん?」


「わたくしと魔王さまは夫婦なのですが……やはり思い出せませんか……」


「……はっ!?」


真也はこけそうになったのを必死に堪えた。


イリアの言葉を聞き、分かりやすく動揺していることを示す。


「ちょっ!ちょっと待て!夫婦ならなんでさっき妄想だとか言ったんだよ!?」


「そ、それはその……」


イリアは悲しげな表情で苦笑した。


「わたくしは第二王妃でしたから。魔王さまのご寵愛はあまり受けることはありませんでした。……この絵はわたくしのただの願望にすぎません」


それでも真也を笑顔で見上げるイリア。


健気な彼女をどうにか励ますことは出来ないものか、と考える真也だったが、彼には気の利いたセリフなんか思いつけなかった。


真也に出来ることはせいぜい頭を下げることくらいであった。


「そ、そうだったのか……なんか、すまないな」


「え……?」


まさか謝られるとは思っていなかったのか、イリアは目を大きくして真也を見つめた。


真也は言葉を続ける。


「確かに、俺はお前の知っている魔王ではないのかもしれねえ。けど、俺にやれる事があるんなら、なんでも力になるぜ」


真也は仮面を外して、眉間にシワのある顔を笑顔に変えてそう言い放ったーー

ここまで読んで頂き実にありがとうございます。


なかなか展開が進みませんが、もうしばらくお待ち下さいますよう、宜しくお願い致します。

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