魔王再び
駄文、句読点の位置などはあまり気にしないで頂けると幸いです。その時の気分で書いておりますので、肩の力を抜いてお楽しみ頂ける事が出来ればと切に願っております……。
魔族によって支配されている世界を総じて魔界と呼んでいる。
その魔界の最高権力者であった大魔王サタンは、人間界の勇者らとの攻防によって相討ちに散った。
これを好機と捉えた時の魔界権力者達は、こぞって名乗りを挙げることとなる。
新たな大魔王を勝ち取る為の、魔界史上最大の戦乱が幕を挙げ……そして、少年は戦乱の渦に巻き込まれていくーー
「……う、うん……?」
身体がふわふわと、不思議な感覚に包まれているのを感じて、少年は目を覚ました。
「これは……水……の中か?」
少年は自分を包んでいる紫色の液体をぼうっと眺める。服は着ていなく、全身は裸のようだ。
少年が水であると判断した理由は、自分の吐く息が泡となって上へと昇って行くからだ。
だがそれにしては、不思議な事に息苦しい訳でもない。自分はしっかりと呼吸が出来ている。
この事から少年は、自分はまだ夢の中に居るのだと結論しようとした。
と、その時、紫色の液体の向こうから此方を伺っている少女がいる事に気がついた。
少女は目を大きく見開いていて、涙を流しながら何かを叫んでいる。
やがて、少女は手元の機械のように見える装置を操作し始めた。
すると、天井が開いたその瞬間、紫色の液体はまるで元々実体の無かった物質であるかのように、霧の如く上へと霧散していった。
そして最後に、少年を覆っていたガラスがスライド式に開いて、外の空気が直接触れた感触を肌が覚える。
目の前の世界に色彩が宿る。
金色で美しい長い髪の容姿の整った少女が、勢いよく少年に飛びついていった。
「ーー魔王さまっ!サタンさまっ!よくぞ、よくぞお目覚めになられましたっ!」
少女の暖かい柔肌と、花のような心地良い香りに、少年は思わず彼女を抱きとめる。
そこで少年はハッと気がついた。これが夢ではなく現実の出来事であるということをーー
「ーーおっ!おいっ!?」
いきなり飛びついて来た金髪の少女を腕の中に、なにがなんだか理解できずに狼狽する真也。
有永真也。日本産まれ日本育ちで、少々強面な外見以外はごく一般的な高校一年生の男子学生である。
全くモテない訳ではなかったものの、歳近い異性とこのように密着した経験はまだ無かった為、真也は反射的に少女を両の手で突き飛ばしてしまった。
「ーーきゃっ!?」
少女は突然の事に短く悲鳴を挙げた。
驚いた事に、それほど突いた訳では無かったにも関わらず、少女は3メートルほど後方に吹き飛んで行き、石で出来ているらしい壁に激突して崩れ落ちてしまったではないか。
少女は全く動く気配を見せない。
「……お、おい……?」
地面に横たわったままの少女に、恐る恐る話しかける。
「お、おーい……生きてるかー?」
「………………」
「ペンで落書きしちまうぞー?」
「………………」
「……返事がない。まるで屍のようだ……」
そして真也は現実を逃避するべく明後日の方を見上げた。
「ははは……。違うんだ母さん。俺はなにも知らねえ。俺はなにもやってねえんだ……」
頭を抱えることも忘れるほど、真也はピクリとも動かない少女をただ、呆然と見降ろすしか出来ずにいた。
と、その時。
ーーガバっ!!
「ーーいっ!?」
少女が上半身を勢いよく起こしたかと思うと、ジッと無表情で真也を見つめているではないか!
真也の全身に鳥肌が立った。
「し、死後硬直か!?いや、ま、まさか……っ!おおっ、俺を呪い殺そうなどと言うのかっ!?」
真也が慌てふためいている間に、少女はハッと頭を振って状況を確認しようと真也を見つめた。
現実から逃れるべく、身体をブリッジのように、くの字に曲げて発狂している真也を確認すると、
「……え?ええっ!?い、一体どうなさったのですか魔王さまっ!?よ、よもや頭が腐っていて、再生に失敗してしまったのでしょうかっ!?」
と、若干失礼なワードを叫びながら、目にも留まらぬ素早さで真也の身体を抱きしめた。
「魔王さま、もう大丈夫です!わたくしです!妻のイリアです!」
少女が真也を必死に抱きしめてから数秒が経ち…… 真也は少女が普通に話しかけているのに気がついて、正気に戻った。
「な、なんだ、生きてたのか……って、お前は誰なんだっ!?」
真也にとっては至極当たり前の質問をひしっと、己にしがみ付いて離れない少女に投げかけた。
だが、その問いかけた言葉は、少女の胸を強く傷つけてしまったらしく、彼女はヨロヨロと力なく後ずさった。
「そ……そんな……!わ、わたくしをお忘れになってしまわれたというのですか……?」
まるでこの世の終わりのであるかのように、少女はその場に立ち尽くしてしまった。
真也は、少女の反応に戸惑いを隠せなかったものの、なんとかこの状況を理解しようと進んで口を開いた。
「えっとだな、俺は槻山高校の一年生、有永真也って言うんだが……まずはお前の名前を教えてくれないか?」
端的な自己紹介を済ませて、相手の名前を引き出し安くしようとするが。
「ご自身のことも分からなくなってしまったのですね……」
真也の自己紹介は少女にとってよく無かったらしく、表情をさらに暗くさせてしまった。
しかしやがて、何かを納得したのか、姿勢を正して真也の目をしっかりと見据えた。
「……わたくしの名前はイリアと申します。そして魔王さま……わたくしは、あなたの妻でございます!」
「は……?」
少女の口から出たその言葉を理解しようと、頭の中で反覆してみた真也であったが、彼女の言っている意味が全く分からず、首を傾げる事くらいしか出来ることはなかった。
いやその前に、真也は非常に大事な事実にふと気づいてしまったのだ。
「えっと……イリア……で良いんだな?」
「はいっ!」
ハッキリと頷く少女、イリア。
真也はその場で両手でブツを隠す。とても情けないポーズを取った。そう、彼は身ぐるみ一つ纏っていなかったのだった。
「なんか着られる服はないか……?」
「へ?……あっ?わわっ!?す、すいませんでしたーっ!!」
イリアは首まで真っ赤に染めて、顔を手で覆った。そして、「すいません!すいません!」と叫びながら、バタバタと部屋を飛び出して行ってしまった。
このまま放置されてしまったら新たなプレイに目覚めてしまうかもしれない。
「戻って来るよな……?」
一抹の不安を抱えながら、イリアが冷静になって服を持って戻って来る事を切に願う真也。
「さて……ここはどこなんだ?」
真也は依然として、そのままの姿勢で部屋を見渡してみる。
部屋の造りが石を磨き上げられて造られているところを見ると、現代日本の木造住宅ではない事がすぐに伺えた。
部屋はリビングとさほど変わらない程の広さである。
しかし、そんなところは真也にとってあまり重要ではなく、部屋全体を彩っている装飾品の数とその煌びやかさであった。
中世ヨーロッパを思わせる絵画やフル装備の騎士の鎧など、生活に必要な皿までもが優美に施されていた。
「は〜こりゃすげえな……」
普段から芸術なんぞに興味を抱いた事はなかった真也であったが、こうして目の前にして見てみると、その価値がありありと伝わって来る。
「え……これって、俺に似てる……?いや……」
その中でも真也が特に気になったモノは、絵画の中でも一際大きな縁で納まった、少年と少女の絵だ。
綺麗な花畑の中を恋人繋ぎで、少女が少年に寄り添っている。
絵の中の少女は、先ほどの謎の金髪の少女イリアである。これだけではさほど疑問には思わないのだが、問題は少年の方である。
少年の顔は、真也の顔そのものであった。最早似ているという次元ではない。
「……なんで俺が……?」
そんな極当たり前の疑問を抱いていると、扉の方から控えめな声音が真也の耳に届いた。
「あ、あの……着替えをお持ち致しました……」
扉の隙間からイリアは顔を出さずに、掌に洋服を持って此方に差し出している。
「お、おうっ、サンキュー!」
真也はイリアがちゃんと戻って来てくれた事に安堵しながら服を受け取る。
服は現代でも質が高評価されそうな上等な生地であり、彼は早速それを着始めた。
「なあ、一応着れたんだが……なんかこれ変じゃね?」
真也は、イリアに渡された服を着てみたものの自分にはどうにも不釣り合いに思えて、不安な声音で尋ねた。
服は現代の緑色っぽい儀仗用の軍服に、黒色のマントを装着した豪勢な仕立て上げであった。徽章らしきものが取り付けられた軍帽もついでにかぶる。
真也が服を着ている事を確認するべく、イリアは扉の隙間から顔だけを出して彼の有様をうかがった。
するとイリアは、真也の不安を掻き消さんばかりに表情を輝かせた。
「さっ、流石魔王さまです!溢れんばかりの威厳に満ち満ちておりますっ!ああっ……!この日の為に、丹精を込めて仕上げた甲斐がありましたっ!」
「え?そ、そうか?……って、さっきから気になってたんだけどさ、そのマオウって俺の事を言ってんのか?もう一度言うが、俺の名前は真也っていうんだけど」
その事をイリアに再度伝えると、彼女は一転して真顔になった。そして一呼吸おいてから、真也にとって非常に重大な真実を言う為に口を開く。
「失礼致しました……マオウとは、魔の王という意味でございます。その魔王とは、シンヤさま、貴方ご自身のことでございますーー!」
そして少年は魔王となるーー
お前何度目だよ!などと仰る方は恐らくいないと存じておりますが、数々の挫折を重ねて舞い戻って参りました! と、どうでも良いのでスルーして下さい。
はてさて、今後とも精進して参りたいと想っておりますので、ご意見とご愛読のほど(無事に連載出来れば)宜しくお願い致します。




