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転 - バスケ

4人の料理部員女子は化学室を出て、靴を履き替え、校舎の外に出た。

日当たりの良い側は運動部が使っているので、日陰側に行く。

コ「寒ーい!」

コアは身を縮めるようにして、ぴょんぴょん跳ねている。

シ「カイロでも使えば?」

コ「うー、電池が減る…」

コアは文句を言いながら、手首から電話を外し、平らに変形させ、カイロ機能を起動した。両手のひらで挟んで暖をとる。


シリマは制服の胸ポケットから、親指サイズの装置を取り出した。プロジェクタである。シリマは手近な植木の幹にプロジェクタを押し付け、スイッチを押した。プロジェクタが木に貼り付いた。


次にシリマはバスケットボールを持ち、メーカーのロゴを指でなぞった。

短い起動音が鳴り、ボール表面の画面にメニューが出た。画面を触って操作する。

シ「プレイヤー登録…っと、はいこっち向いてー!」

ボールの反対側で撮像素子が起動して、シリマが見る画面にはカメラの映像が表示された。シリマは他の3人の顔写真を撮影し、そのあと自分撮りカメラにして自分を撮影した。顔写真の下の枠に手書きで名前を入力する。


シ「ヘルプ、検索、プロジェクタ接続…あった。ここにデバイスIDと…」

シリマが何回かボールの画面を操作すると、木に貼ったプロジェクタから光線が出た。光線は校舎の壁にゴールの絵を投影した。光線は地面にも投射されてラインを表示した。

慣れた様子でボールを操作するシリマに、マリカが問う。

マ「しーまさんって、中学のときバスケ部だったとか?」

シ「いんや違うよ。美術部だった。バスケ部に誘われたこともあるけどさ。でも、背がちょっと高いからって

さ、球技が得意とは限らないじゃないか! ねぇ?」

マ「あー、その気持ち わかります。うちも去年の4月、さんざんバスケ部やらバレー部やらに誘われました。」

長身の黒髪ふたりが頷き合う。


シリマはボールをコアに渡した。

シ「フリースロー、練習してみ?」

コアはボールを持ってフリースローラインまで跳ねて行った。そして

コ「ぅにゃっ!」

コアは頭の後ろにボールを振りかぶり、両手で、猫耳の間を通るように投げた。ボールは低い二次曲線を描き、表示されたゴールよりもかなり下の壁にぶつかった。ボールから外れの効果音が鳴る。

シ「届いてないよー! 手先で投げようとすんな、膝を使って!」

シリマはボールを拾ってコアにパスする。再び

コ「みゃっ!」

2回目のボールはどうにかゴールに届いたが、リングにぶつかったと判定され、外れの効果音が鳴った。

コ「あのさー! なんか体育で使うボールより重いんだけどぉ?!」

シ「ああそうか、部長のだから、男子用の7号なんだな。慣れろよ。」


4人で順番にフリースローを何度も行ったが、成功の効果音が鳴ったのは、シリマが2回、マリカが1回だけだった。

シ「あー、あたしもダメだ。こりゃルールを甘々にしないとゲームにならんな…」

シリマはボールを操作する。

シ「ルール設定…トラベリングは甘め判定、3秒ルール・5秒ルールはOFFで…ゴールは…リングの直径で指定すんのか。どれくらいがいいんだ?」

後ろからマリカが覗き込んで口を挟む。

マ「ボールの軌跡ログとか、見れませんか?」

シ「おう、ヘルプ、検索…よし、あるねぇ…」

ボール表面に、絡まり合った曲線が表示された。4人で練習していたときのボールの動きを記録したものだ。

シ「んじゃあ、これくらいにすれば、ショットの半分くらいは入るかな?」

シリマはルール設定を完了した。


ミ「あのっ、チームはどうしますか?」

ミユウはそう言ったあと、さりげなさを装ってマリカの横に並んだ。

シ「普通に、一年チームと二年チームでいいんじゃない?」

ミ.oO(よし!)


プレイヤー画面でチームを分けたあと、ボール表面にコイントスの動画が表示された。その画面の隅にあるアイコンを見て、

シ「ガイドはONにするね。あたしも完全にルール把握してるわけじゃないし。」

コイントスの結果、一年生チームが最初の攻撃側になった。

ミユウがボールを持つ。ボール表面のカメラがミユウを認識し、ガイドを表示する。

ガイド【防御側チームにボールをパスしてください。防御側チームからボールが返されたら攻撃開始です。】

ミユウの前にはコアが構えている。ミユウは首をかしげながら、ボールをコアに投げ渡した。ボールを受けたコアは即座にそれをミユウに投げ返す。ミユウは危なっかしくボールを受け止めた。


4人ともバスケ部ではない。バスケは体育の授業でやっただけだ。その4人が、実物ではなく壁に投影された架空のゴールを使って、2on2のバスケをやる。それは、高度なテクニックや スピーディーな試合展開などとは無縁の、ボール遊びだった。

それでも、それなりに激しく走ったり方向転換したり、ジャンプしたりする。そのたびに制服スカートのプリーツに埋め込まれた簡易人工筋肉が収縮し、下着が見えない角度までスカートを下ろす。


10分後、試合終了。僅差で一年生チームが勝った。

ミ.oO(私とマリカのチームワークの勝利!)

マ「よっしゃ! うちとミユ、息ぴったりだったね!」

マリカにそう褒められて、ミユウはポニーテールを犬の尻尾のように振らんばかりに、表情を輝かせた。

二年生チームのほうは、

シ「よし、運動した。」

コ「むー! 負けたー!」

4人はプロジェクタとボールを回収し、化学室に戻っていった。


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