異世界から帰ってきたとして、あなたはそれが自らの現実だと受け止める事が出来ますか?
青信号が点滅する。
もう二度とあんなに苦しくて、辛くて、悲しくて、楽しくて、嬉しくて、喜ばしいと感じる事はないだろう。
全てをおいて戻ってきた。
共に同じ時を過ごした人々も、深い絆で結ばれた仲間も、愛した人でさえも……。
気がつけば異世界に行く前に、異世界に行く数分前にいた横断歩道。
もう二度とあんなに苦しくて、辛くて、悲しいのはごめんだ。
でも……あんなにも楽しくて、嬉しくて、喜ばしくて、何より愛おしいのなら。
ふと横を見れば俺を殺した、俺を異世界へと連れて行ったトラックが。
あれに轢かれればまたあの世界に行けるんだろうか、戻れるんだろうか。
行けないかもしれない、戻れないかもしれない。
ただ痛いだけかもしれない、ただ死ぬだけかもしれない。
それでも……。
それでも俺は赤信号の横断歩道を渡る。
さあ待ってろ俺の世界、さあ待ってろ俺の夢。
「今行くよ」
短編はいつも思いつきで書きます、どうも高辺ヒロです。
今回も愛犬の散歩中に思い浮かんだ話しみたいなものを、文章にしてみました。