とある地下で
文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:デパ地下
「いやいや、間違ってんだろ」
「間違ってねーよ、ホラ。どこ見ても食品売り場だ」
実にムカつくドヤ顔で、コイツは意気揚々と手をそちらに向けて言い張った。
「店舗がいくつも出てるけど、やけにスペース広いぞ」
「そら、最近多い足の不自由なご老人に、少しでも不自由なく行き来してもらいたいからな」
なに言ってんのと言わんばかりのキョトンとした表情に、俺は辛うじて殴るのを堪える。
「いや、理念は分かってんだよ」
コイツの考えに賛同したからここにいる。それは確かだが、問題はその後だ。
俺はこの広場を指差して「でも、これがデパ地下だって言うのは無理があるだろ」と言った。
「ちゃんと試食品コーナーもあるんだが……はっ。まさか、お年寄りやお子さん用にとても低い位置に、それでいて食べられ過ぎないように、やや大き目の音が鳴るピンポンを押したらガラス張りのHOTウォーマーから店員がローラーに載せて取り出し口に滑らせる仕組みが機械的過ぎるからとっつきにくいと言うのか!?」
「長えよ! しかも問題点はそこじゃねえよ」
売り出し文句はまあいい。なあなあになりがちだが、共同出資になろうとする相手には、まあ色々と訴えたい事もあるんだろう。
「じゃあ、お年寄りがより長く歩かなくていい様に、エレベーターの横に長椅子一杯の簡易休憩スペースを設置したのがダメだと? 簡易でも土地の無駄遣いと看做されたのか、それともやるならもっと豪華にしろと……」
「それはいいよ、その程度でいいよ!」
書類には書いてなかったが、ここに来て見た時点で大体評価はしてる。
「じゃあ、お年寄りがそれぞれ最寄のルートを選べるように出入り口を外周四つ内周四つの合計八つ用意したのもOKか!?」
「OKだよコンチクショウ! ついでに部屋番号カードでの清算システムももっとやれって思ってるよ!」
それに、夕方になったら室内液晶モニターに売り場の様子が分かる様にリアルタイム配信が始まって、電話での注文は外部で捌く事によって渋滞軽減も見込めるのも認めてるよ。
「なんだ、じゃあ少し変則的だが問題ないじゃないか」
「老人いっぱい抱え込んだ、バリアフリーマンションの地下をどう読んだらデパ地下になるって言うんだお前は!」
老人の最大の敵は孤独だ。それを解消する手段だというのは分かる。
商業施設の近くという立地で基本的な買い物は容易だろう。
ネット注文に不慣れな人が多い中でも、電話でも宅配サービスも充実している。マンションとの契約だから配達側もあちこち飛ばされる心配はない。
けれど、どんなに効率的でも、日常の賑わいがないと心が死んでいく。
だがこれなら、夕方になると足元がかつての地元の商店街のような活況に包まれるだろう。近場に家族がいれば、買い物のついでに様子をみることだって出来るだろう。
思い出の場所を奪ったせめてもの償いに、思い出の空気を蘇らせる。それはいいさ、いいだろうさ。やりたいことは分かるし、助けてやりたいから金を出すさ。
これをデパ地下だと言い張るような変な誤魔化しがなければな!
「なに言ってんだ?」
と、この期に及んでまた殴りたくなる表情をみせてくれやがる。
「い、いや、だってマンションは豪邸って意味だろ? まあ、コンセプトは間違ってないが、正確に言うなら、ここってラージ・アパートじゃん」
は?
という顔をしているだろう俺に構わず、コイツはムカつくドヤ顔で……
「つまり、デカいアパートの地下だからデパ地下で良いんだって」と、言ってのけた。
よし。
殴ろう。
金があればできること。
できても、それをやることによるデメリットが未知数すぎること。
でも、どっかで叶ってて欲しいこと。
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216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 21:57:19.86 ID:t52uBnFn0
も一つお題下さい
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 21:59:34.53 ID:qeFX6/GNo
>>216
デパ地下
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 22:11:38.26 ID:t52uBnFn0
>>217
把握