タクシーの運転手
「おはようございまーす」
あたしはドサっとカバンを机においた。
「おはよう。」
長崎さんは笑顔で挨拶した。
あたしは最初、苦手だった。
長崎さんのコト。
だけど、次第に尊敬するようになっていった…。
「長崎さん、健ちゃんってまだきてないんですか?」
「あぁ、ノリならさっき出かけたよ。」
ノリ。
健ちゃんは班の人にノリってよばれてる。
晪原のノリ。
「え?!どうしてですか?」
捜査班は事件の事柄について取材や科学捜査班に訪れたりする。
「昨日、入った仕事が気になったらしくて…。」
だから、昨日電話で仕事のコトいろいろ話したのか。
「…そうですか。」
「どうしたの?」
「いえ…なんでも。」
あたしはイスにゆっくりと腰をかける。
「あ、これ…秋人さんとこに届けてくれる?」
「あ、はい!」
長崎さんから、資料を受け取る。
秋人さん、とは、科学捜査班のリーダー的な人。
タクシーを止める。
「会議科学警察官のとこまでお願いします。」
あたしはタクシーの運転手さんにいった。
「了解です。」
ペラっと紙をめくる。
わぁお。
見たとこ、自殺と判断されたものが違うんではないかという内容だった。
ようは、もう一度よく調べろというコトだ。
「…警察官の方?」
え?
運転手さんが話しかけてきた。
「はい。…そうですけど。」
「名前、
聞いてもいいですか?」
「麻子です。」
あたしは躊躇なく答えた。
「…夏目 雅人って覚えてる?」
「あぁ、高校の同級生でいました!雅ぴょんですよねっ」
雅ぴょんの友達?
結構、雅ぴょんとは仲よかったんだ。
「あ、すいません。つきましたよね?仕事中なので、失礼します。
また会えるといいですね!」
あたしはお金を払ってタクシーを降りた。
なぜあの時気づかなかったのか。
タメだったこと。
雅ぴょんと友達だとしたら、知ってる?でなく覚えてる?と聞いたこと。