表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】呪われたモフモフと追放聖女のもぐもぐ辺境暮らし  作者: りょうと かえ
黒いモフモフとの出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/36

7.森の一夜

 陽が落ちる。今日はここで野宿しよう。


(癒しの力も使ったしね……)


 聖女である間に、私は癒しの力にはルールがあるのを学んでいる。


 それは癒しの力を使っても特に疲労などはしないこと。

 力が使えるのは一日一回。それ以上やろうとしても光の粒が出ないのだ。


 最後に一度しっかり休んで寝ると、使用回数は回復する。


(魔力とは全然違うみたいだけど……黒狼を回復させるなら、私も休まないとね)


 そのためにはまず焚火を用意しなくちゃ。

 ということで私はバッグから火起こしの木箱を取り出した。


 小さめの木箱には火打石と火打ち金、硫黄を含んだ黒い綿が入っている。


「ちょっと離れるからね」


「ぴぃ……!」


 まだオーリは黒狼の尾で遊んでいる。


 私は小川の近くで燃えそうな、乾燥した落ち葉や草を集めて回った。


 次にきらきらと光る石英の火打石で黄鉄鉱の火打ち金を打つ。

 しっかりと両方を持って、火花が黒い綿に落ちるように。


 カチカチと鳴らしながら石を打つと、小さな火花がこぼれ落ちた。

 黒い綿からほんの少し煙が上がり――火種ができる。


「よしよし、あとは綿を燃やせば……」


 ふーふーと息を吹きかけ、火種を大きくしていく。


 最後に綿をつまみ、さっき集めた葉や草へひょいっと放り込む。

 するとパチパチと音を鳴らしながら、火種が焚火へと変化していった。


 大変なようだけど慣れればほんの数十秒でできる。

 で、焚火が用意できたので……私はバッグからソーセージを取り出す。


 乾いているが、ぎっしりと肉が詰まった一品だ。


「わう……!」


「ぴぃ……!」


 黒狼とオーリが抜け目なくソーセージを見つめる。

 ふたりとも瞳がきらきらしていた。


「怪我は大丈夫? こっちに来れそう?」


「わっふ!」


 黒狼がオーリへと頷く。するとオーリがすっと立ち上がり、私の隣へ飛んできた。

 オーリから解放された黒狼がゆっくりと立つ……。


 おっかなびっくりという感じだけれど、大丈夫そうだ。

 私はそこで黒狼が何かを下敷きにしていたのに気付いた。


「ん? あれ、お腹の下に……」


 普通の物ではない。魔力を持った何かだ。


「わふー」


 黒狼が白くて曲がったソレを口にくわえ、私の元に持ってくる。


 ソレは立派な角だった。もちろん黒狼の角なんかじゃない。


 別の、強い魔力を持った獣の角だ……。

 しかも普通の魔力の大きさではない。見ていると背筋がゾクゾクしてくる。


 私がこれまで見たことがないほど、角には魔力が秘められていた。

 黒狼がどうして怪我をしていたのか不思議だったけれど、私はピンときた。


「もしかして、この角の主と戦って怪我したの?」


「わうっ!」


 黒狼がふんふんと頷き、角をぐいっと私に押し付ける。

 ……受け取って、と私には聞こえた。


「ぴいぴっ」


「お礼として受け取っておきなさい――か。うん、わかった。ありがとう」


「わうー……」


 私が角を手に取ると、黒狼が嬉しそうに尾を振る。

 溝がらせん状に走る立派な角だ。角の感じからすると、ヤギに近そうな……。


「これ、相当な大物だよね……」


 角だけでも結構なお金になりそうだ。

 むむ……一度、村に戻って皆に相談しようかな。


 もしもこれが主なら、対策を練らないと。

 とりあえず角をバックにくくり付けて、料理を再開する。


「……今日は豪華に食べていいよね」


「ぴぴっ!」


 数日間、野宿してでも獲物を探す気でいた。でも角もゲットできたし、その予定はなしだ。


 乾燥ソーセージを串に刺して、昨日のお土産のにんにくチップと胡椒を振りかける。

 あとはパンと酢漬けのキャベツ、ザワークラフトだ。


 ここにドライフルーツも並べる。数日分の食料なのでかなりの量だった。

 あとは順次、火に炙る。まずはソーセージから。


 火が爆ぜ、にんにくと胡椒のよい匂いが充満する。お腹の空く香りだ。

 焦げ目ができたので、まずはオーリと黒狼へ。


 熱々のソーセージをふたつに切って、木の皿に並べる。


「さぁ、どうぞ」


「ぴっ……!」


 オーリがぷいっと横にいる黒狼へ向いて、頷いた。


「わふ、わふふ」


「ぴい!」


 黒狼が首を横に振るが、オーリが脚で木の皿を黒狼へ押し付ける。


「先に食べてって、こと?」


「ぴー!」


 オーリが自分より他人の食事を優先するなんて……!

 初めて見たかもしれない。ちょっとした感動だった。


 黒狼は迷っているようだったが、オーリはずずいと譲らない。

 絶対に先に食べなさいという燃える瞳のオーリだ。


「……わう」


 黒狼はおずおずとソーセージのそばに顔を寄せ、鼻を動かす。


「少し熱いかもだから、そこだけは気を付けてね」


 黒狼が軽く頷くと口を開け、がぶりとソーセージに噛み付いた。


「わう、もぐっ……わふう!」


 噛めば噛むだけ、黒狼の表情が明るくなる。

 その気持ちが私にはよくわかった。美味くないはずがない。


「美味しいでしょ、ソーセージ」


「わう! わっふ!」


 今日の携帯食料を作ったのはクララとその一家だ。

 クララ家の作るソーセージやパンは人気が高い。


 村の外から買い付ける携帯食料よりも美味しいくらいだ。


 続けてもうひと切れのソーセージを黒狼が食べ始める。

 もぐもぐもぐ、ごくん。黒狼のふさふさの尾がゆらゆら揺れる。


 そう言っている間に、他のパンとソーセージもいい感じに熱されてきた。


「よし、私たちも食べよっか」


「ぴー……!」


 待ってました、とばかりにオーリが飛び上がる。

 黒狼は身体が大きいのもあって、ソーセージをもう食べ終えていた。


「あなたも、おかわりはたっぷりあるからね」


「わっふー!!」


 黒狼が嬉しそうに目を輝かせる。


 こうして私たちは星降る夜空の下、楽しい夕食の時間を一緒に過ごした。

 そして後片付けを終え、お腹いっぱいになった私たちは芝生で横になる。


「うーん、もう食べれない……」


「わふぅー……」


「ぴー……」


 黒狼とオーリもきっと私と同じことを言っている。


 だって反応がかなり鈍い。もう眠る寸前の感じだもの。

 ちなみに私は今、黒狼の隣に寝ていた。オーリは黒狼と私に挟まれている。


 ふたりともふもふもで温かくて、とても気持ちいい。


「うーん、このままあなたの隣で寝てもいい?」


「わうっ……」


 私の身体は黒狼にすっぽり収まるので、黒狼の顔は見えない。


 でもこの返事はオッケーという雰囲気だ。にしても、名前がないとなんだか呼びづらい。

 あなた……というのもしっくり来ないし。


「ぴー……」


 好きに名前を付けてあげたら、とオーリがもぞもぞしながら鳴く。

 うーむ、そうしようかな。でも名前か、どんなのがいいんだろう。


「……黒でシュバルツとか?」


「わっふ」


 黒狼が『いいよ』って言ってくれている。


 どことなく、反応が狼というよりは犬のような気がする。

 でも呼び名はあったほうがいいもんね。


 私はシュバルツのもふもふな黒毛に指を通す。


「よーし、あなたの名前はシュバルツね」


 かすかにシュバルツから反応が返ってきて、その後に寝息が続く。

 どうやら寝てしまったようだ。


「ぴぃ……」


 オーリもすごく眠そう、というか寝ている。

 私ももう眠い……でも今夜は気持ちよく寝れそうだった。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ