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【書籍化・コミカライズ】呪われたモフモフと追放聖女のもぐもぐ辺境暮らし  作者: りょうと かえ
森の聖女

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35/36

35.戦い終わって

 そのまま私は気を失っていたみたいだった。


「んぅ……」


 髪を優しく撫でられる感触で、私は目を覚ます。

 愛しい声が耳元から聞こえた。


「……起きた?」


「シュバルツ……! だ、大丈夫なの?」


 私はシュバルツの首元に抱きついていた。


 彼の顔は血色良く、身体も力強さに満ちている。

 さっきまでの死相は綺麗さっぱり消えていた。


「うん、あの光のおかげかな……」


「本当に? どこからも血が出てない?」


 シュバルツの腕を取ってみる。確かに、傷がすっかりなくなっていた。

 乾いた血さえもない。


「さっき自分でも確かめたよ。すこぶる快調だ」


「……良かった」


 心の底から安堵の息がこぼれる。

 夢みたいな光景だった。白い光が天へと舞い上がって、何もかもを覆って……。


 今はもう魔力の気配は全て消えている。

 シュバルツは助かった。彼自身もまだ、自分が助かったことが意外だったようだ。


「本当に奇跡だね」


「……きっと森の加護よ」


 私には確信があった。最後のあの輝きは、森そのものの光と救いなのだ。

 もちろん証拠はない。でも私はそう信じることができた。


「そうだね、あの時に感じたのは……君の力と深い森の優しさだった」


 私のすぐ近くでシュバルツが微笑む。


 その顔が本当にまぶしくて、私は吸い寄せられてしまう。

 今の私は昂っていた。彼が好きで好きでたまらない。


 彼もきっとそうだ。だって、シュバルツの瞳にも熱が宿っている。

 私と同じ、心の奥からの熱がある。


 いなくなってしまったと思った彼がすぐ近くにいて、私はおかしくなっていた。


「エリーザ……?」


 彼が小首を傾げて私の名前を呼ぶ。

 赤く、魅力的な彼の唇――。


「ごほん、えほん!」


 後ろから聞こえてきた、これ見よがしの咳払い。

 それを聞いて、私はばんっとシュバルツから飛びのいた。


 咳払いをしたのは、私たちの背後にいたランスターだ。

 そして気が付く。私たちを取り巻く人の気配に。


「み、みんな!」


 なぜこんなにも人がいて気が付かなかったのか、自分でも不覚の極みだった。

 私とシュバルツを遠巻きに狩人たちが集まっている。


 全員ではないが、何十人もいる。

 その中にはクララもいた。両手を自分の頬を当てて、真っ赤だ。


「はわ〜、大胆……!」


「クララちゃん! 何もしてない! 私は何もしてないってば!」


「……意識のほうはしっかりされているようですね。正常そうです」


 意味深に微笑むのはランスターだ。


 彼もしっかりと自分の足で立っている。

 多分、大丈夫なのだろう……ということで心置きなく抗議する。


「ランスターさんも! どうして静かにしていたんですか!」


「失礼、邪魔かと思いまして」


 ランスターの紳士振りが仇になるとは。


 すやぁっと寝ていただけなので、肩を揺さぶってでも起こして欲しかったのに。

 シュバルツはとても上機嫌でにこやかだ。


「あはは……喋りかけるタイミングが難しかったね。いつ目を覚ますか、わからなかったし」


「ずっと待っていたんですね!? しかもさっきのやり取りまで……!」


「……ぴぃ」


 とことことオーリが歩いてきて、重々しく頷く。


「うわーー!!」


 その答えの恥ずかしさに、私は膝から崩れ落ちてしまった。



 それから私は、気絶していた間のことをシュバルツから説明された。

 私やシュバルツ自身のことは彼から言ってくれたのだとか。


「聖女? なにそれ?」


「人の姿? 大変だなぁ」


 皆の反応は拍子抜けするものだったらしい。

 カサンドラのキャラバンの人だけが飛び上がらんばかりに驚いたそうだけど。


「本物……本物の聖女ってマジかい?」


 まぁ、説明する時間はこれからもたくさんある。


 私はともかく、シュバルツがすんなり受け入れられたのはこれまでの活躍のおかげだ。

 今さら、シュバルツを咎める人間なんていない。彼はとうに森の同胞なのだから。


 で、塔にいた人たちについて――。

 ヌラウは死んだが、その死体はあの白い光に呑まれ消えてしまったらしい。


 角だけが残されたのだとか。


「配下の人たちは?」


「……彼らも死んだよ」


 シュバルツが首を振る。思ってもみなかった答えに私は唾を飲み込んだ。

 ベレー帽を深く被ったベッセルが説明してくれる。


「誓って、殺すつもりはなかったんだけどな。捕まえてふん縛ってたんだが……この塔が光りだしてから、なにやら痙攣し始めてよ」


 外では狩人とヌラウの配下の戦いが行われていた。


 クララが隙をついて挟み撃ちにしたおかげで、全員が捕縛されたのだという。

 でも塔が――聖女の光が満ちた時に、ヌラウの部下は全員死んでしまった。


 ヌラウもその配下もこちらを殺す気ではあったけれど。

 でも全員死んでしまうなんて……。


 心に重いものを感じていると、シュバルツが私の肩を抱いた。


「気にしなくていい。彼らはとうに、死んでいたから」


「えっ……?」


「森の力を奪って一体化した時、彼らは本来持っているはずの命を手放した。それが代償だ。森からの力を失えば、命も失う運命なんだよ」


 シュバルツの瞳には憐れみが浮かんでいた。

 自分と似て、でも真逆に行ってしまった者たち――しかも同じヘクタールの人間。


「馬鹿だよね。そんなことをしなくても、森は俺たちに与えてくれるのに」


「……そうだね」


 彼らは間違えたのだ。


 森に住みたいなら、森から授けられたいなら、もっと別のやり方があったはず。

 森は分かち合うものなのに。


「それで、この建物はどうするの?」


「破壊したいところですが、すぐという訳にはいかないでしょうね」


 肩をすくめたのはランスターだ。彼の手には古ぼけた冊子があった。


「全ての部屋を探して出てきたのが、このノートだけ。しかも暗号だらけですぐには解読できません」


「物資の入搬出や研究資料……それらの記録があるはずだよね。隠し部屋とか、金庫とか」


「仰る通りです。破壊する前に、時間をかけて徹底的に捜索すべきかと」


 その点については狩人たちにも異論はなかった。

 背後関係がわからないうちにこの砦を壊すのは得策ではない。


 とりあえず残して、用済みになってから破壊しても遅くはない。

 あの台の狼はいなくなって――森全体の不気味な気配も消えたことだし。


 砦を出ると、夜になっていることに気付く。

 ただし月はまだ満月には程遠かった。なのにシュバルツは人の姿のままでいる。


「あれ……?」


 そうだ、彼は人の姿ではいられないはずなのに。

 私がシュバルツの髪の先から足元まで見て疑問を感じていると、シュバルツが私の髪をそっと撫でた。


「どうやらご褒美みたい。森のご加護さ」


「ぴぃ……!」


 シュバルツの肩に乗ったオーリが頷く。その顎をシュバルツがもみもみした。


「オーリもありがとう。本当に助かったよ」


「……ぴ」


 私は何もしてない、と答えた気がする。


 ヌラウが残した角は二本あり、そのうちの一本はランスターが持ち帰ることになった。

 残りの一本は……私の背にある。これも結局、私が持ち帰っていいことになったのだ。

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