20.討伐が終わって
それから血抜きをしながら北の討伐隊が来るのを待った。
合流できたのは翌の昼過ぎのこと。
地面に倒れるマーコールを見るなり、大歓声が巻き起こる。
北の村の人からはかなり感謝された。
「本当にありがとう! あんたらは村の恩人だ!」
「白狼の子は本当に良い狩人を育ててくれた……!」
そのままマーコールの解体から宴会になりそうだったけれど、私たちは固辞して村へと帰ることにした。理由は単純で、早く無事な姿を見せたかったからだ。
ランスターも帝国への報告で一旦帰国するという。
馬に乗った彼が私とクララを見やった。
「今回の活躍は帝国中枢にも轟くでしょう。何らかの褒賞があるかもしれません」
「あはは……私たちだけの活躍ではないですけれどね」
謙遜ではなく、これは本音だった。
ランスターが奔走してくれたからこそ、村々の連携がスムーズに進んだ。
北の村の人が森を焼き、包囲網を形成したからマーコールは南下した。
もちろんベッセルやクララ、シュバルツやオーリがいなければ逃げられていたと思う。
「望みはありますか? 期待に沿えるかは確約できませんが」
「もし何かもらえるなら、白狼の村全体で使えるものを望みます」
「……欲がないことです。わかりました、ではそのように」
ランスターを見送り、ベッセルとも別れる。
彼は台車にマーコールの肉と角付きの頭を積んでいた。
「さーてと! 俺も帰ってこれを家族や村の連中に見せないとな!」
「ベッセルさんもお元気で。本当にお世話になりました……!」
「世話になったのはこっちのほうさ。あんたらは俺の双子だ!」
双子、という比喩を使うにはベッセルと私たちの年齢は離れすぎでは……?
「……双子?」
隣のクララも戸惑っている。
「おっと! すまん、今のは岩の村特有の言い回しだ。真の同胞くらいの意味さ」
「それならベッセルさんも白狼の子です。これも――真の同胞という意味なので」
「ありがとな。もし困ったことがあったら、何でも相談してくれよ!」
ベレー帽を取り、笑いながらベッセルが台車を引いて去っていく。
私たちもマーコールの魔石と大きな肉塊をもらい、帰路についた。
「わふふぅー!!」
私とクララはシュバルツの背に乗り、村へと急ぐ。
もう危険はないのでかなりの速度だ。
来るときに通り過ぎた、境の塔の近くでクララが微笑む。
「主の気配で、あの西の山全体が重苦しかったね。それもこれからは薄れてくる……かな?」
「うん、森の獣もきっと戻ってくるよ」
こうして白狼の村に戻って報告すると、村全体がお祭り騒ぎになった。
主の肉の一部を白狼の像に捧げ、そのまま宴会に突入する。
村に戻ったのはお昼時だけれど……嬉しい時はお祝いするのが狩人の流儀だ。
カサンドラもキャラバンの食料や酒を大解放してくれた。
「さぁ、めでたいね! こんな時は騒がなきゃ!!」
様々な野菜や果物、ハムやチーズが並ぶ。一番の獲物はマーコールの肉だ。
全員で分けると、ちみっとした量しかないけれど。
それでも分かち合うことが嬉しい。
私はたくさんの果物とハチミツを載せた、太陽のように綺麗なパンケーキを頬張っていた。
歯を使わなくても噛める柔らかさ。小麦と卵の味の幸せ。
そこにちょっと赤ワインもセットで飲んでみる。
ワインの酸味とハチミツの甘さが交互に広がり、頬がとろけてしまった。
「……にしても、カサンドラさん。こんなに大盤振る舞いしていいんですか?」
「問題ないさ。ウチは帝国とも取引があるからね」
カサンドラは大ジョッキで淡いビールをごくごく飲んでいる。
「この代金は帝国に払ってもらうから! 主の討伐料としちゃ、安いモンだろ! なぁ!」
カサンドラが立ち上がってジョッキを掲げると村人が歓声で応じる。
「おう! よくわかんねぇが、飲んでいいなら飲んでやるぜ!」
「白狼に感謝を! エリーザちゃんとクララちゃん、ありがとう!!」
「ぴぃ……!」
オーリも決意を秘めて頷く。どんな料理も残さず食べ切るという目だ。
クララは私の隣でクッキーをじっくり味わっていた。
「うぅーん……この風味、再現できないかなぁ……?」
「勉強熱心だね、クララちゃん」
「うん、こんなに食べられるなんてめったにない機会だもの。あ、エリーザちゃんのパンケーキ……ちょっと食べてもいい?」
「もちろん! 一緒に食べよう!」
こうして盛大な宴は何時間も続く。
私もお腹いっぱい、食べて飲んで満足した。
暗くなりかけた空を見上げると――見事な満月が輝いている。
ふと見ると、シュバルツがいなくなっていた。
(そうか、人の姿に戻っちゃうから……)
きっと気を利かせて、シュバルツは先に帰宅したのだろう。
飲み潰れたり、満腹で眠り出した村人の間を縫って、オーリを回収する。
「すぴー……」
丸々となったオーリは笑みを浮かべながら寝ていた。
オーリは抱えながら、私は家へと戻る。
「…………」
思った通り、青年の姿のシュバルツが小川のそばに座っている。
私が近付くと、彼はにこりと微笑んだ。甘い笑みに私の心臓が高鳴った。
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