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【書籍化・コミカライズ】呪われたモフモフと追放聖女のもぐもぐ辺境暮らし  作者: りょうと かえ
黒いモフモフとの出会い

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12/36

12.月明かりの下で

 パチパチとキッチンに散る火花。


 まずは大きな鍋に、塩漬けした豚すね肉を大量投入する。

 このお肉自体、香味野菜や香辛料とともに漬け込んだ逸品である。


 もちろん中々のお値段だ。そのまま食べても美味しいが、それをさらに調理する。

 鍋に水を張り、カットしたタマネギ、ニンジン、セロリを入れて沸くまで待つ……。


「ふんふーんふん」


 鼻歌をしながらコトコト、ここからじっくり一時間半ほど煮込む。


「わっふぅ!」


「ぴー」


 いつの間にかキッチンにシュバルツとオーリがやってきて、鼻を利かせる。

 気合いの入った料理というのがわかったのかな。


「もうちょっと待ってね?」


 シュバルツがキッチンから少し離れ、ぺたりと床にお腹をつける。

 煮込みの間に、シュバルツとオーリを愛でたりする。


 で、時間が経ったら鍋から豚すね肉を取り出し、よく水気を切ってオーブンへ。

 カリカリに焼き上げるため高温で数十分……!


「えーと、他にも付け合わせを作らないと」


 鍋に残った野菜はここからでも利用できる。

 刻んだベーコン、塩胡椒を鍋に投下。


 さらにジャガイモに鶏肉、水を入れて再度煮込んでいく。

 ジャガイモは火が通ってきたらヘラで潰して……小一時間煮ながら様々なチーズを加える。


 これで香味野菜とジャガイモのチーズ煮込みの完成だ。


「ぴぃっ……!」


「おっと、お肉も出来上がったね」


 オーリがシュバルツの頭の上からオーブンを監視していた。

 私がこちらに集中している間に、できる子である。


 よいしょっとオーブンからお肉を取り出す。

 カリカリに焼き上がった、豚のすね肉。シュバイネハクセだ。


「うーん、素晴らしい!」


「わーふぅ!」


「ぴっ! ぴい!」


 外をちらりと見ると、雨は過ぎ去ってくれたみたい。

 今はもう夜空に雲はまばらだ。しかも薄い雲から透けるのは満月だった。


「ねぇ、外で食べよっか!」


 シュバルツとオーリもふんふんと同意の頷き。

 ということで家の外に丸いテーブルと椅子を運び、そこで晩餐を始めちゃう。


 買ってきたパイや果実ジュースを並べて……恵みに感謝する。


「いただきまーす!」


「わふぅー!」


「ぴぃっ!」


 メインはカリっと焼き上げた肉料理。皮はパリパリで中はとろけるようなジューシさ。


「これが美味しいんだよねぇ~」


 ぱくりと大口を開けて豚肉を頬張る。


 舌に肉が触れた瞬間、濃縮された塩漬け肉の旨味が舌を突き抜けていく。

 柔らかくて肉と野菜の甘みがしっかり感じられる。


 噛めば噛むほど漬けと煮込みの味が溶け出し、頬がにまにましてしまう。


「わーふっ! わっふ、わっふ!!」


 シュバルツはお皿の上に置かれた肉を骨ごとかじりついていた。

 オーリはくちばしで肉をつまみ、ゆっくりと噛んで飲み込む。


 そして美味しさのせいか、びくっとして止まる。


「ぴー……! ぴっ」


 そのまま数秒止まってまた噛むために動く――見ていてちょっと面白い。


「……わっふわふ」


 シュバルツの目はスープの入ったボウルに移っている。

 私は大きめのスプーンでボウルからスープと野菜をすくい、シュバルツの口元に運んだ。


「はい、あーん」


「わふぅー♪」


 シュバルツは興奮しながらもこぼさないよう、スープを飲んでくれた。


「どう?」

「わっっふっ!」


 シュバルツがうんうんと反応してくれる。

 その口に、さらに数回スープを運んで……私も飲んでみる。


 しんなりとしたタマネギ、ニンジンに潰したジャガイモ……野菜の旨味がしっかり出ている。塩気と脂が混じり合い、しんなりとした野菜と絡む。


 そこにベーコンやチーズを混ぜたので、肉の味もしっかり出ている。

 オーリはスープもじっくり飲んでいた。たまに口から野菜が出ては、頭を上に向けてごっくんと食べている。


 そして最後に肉汁やスープにパンをつけて、口に運ぶ。

 ぱさぱさのパンが蘇り、小麦の味が何倍にも美味しく感じられる。


 孤児院で学んだこの食べ方が、私はとても好きだった。


「聖女である間、これって駄目だったんだよねぇ……」


「ぴっ、ぴい」


 肉汁に浸したパンを私がオーリの口の前に持っていくと、彼女がしゅっと嚙みちぎる。

 オーリもこの食べ方が大好きなのだ。


「あなたも試してみない?」


 肉汁をたっぷりパンにつけ、ちぎってシュバルツの口元へ。

 もぎゅ。シュバルツが柔らかなパンと肉汁の調和を味わい、尻尾を振る。


 どうやら私たちと同じで、この食べ方も大丈夫らしい。

 あとはパイやら甘い物もたっくさん食べて……満腹である。


「ふぁ、食べた〜……」


 椅子に体重を預け、服の紐を緩める。

 さすがにだらしないが、ここにはオーリとシュバルツしかいない。


「ぴっ……」


 オーリはテーブルで膨らんだお腹を夜空へ、仰向けになっている。

 満足そうに星空を眺め、余韻に浸っていた。


「わふー……」


 シュバルツも草原に身体を横たえ、眠そうな声を出している。

 夜空の雲が遠ざかり、空の星は先ほどよりも増えてきた。


 唯一、空に残っているのは満月を隠す小さな雲だけだ。


「……ふぅ」


 満月はいつも見られるわけじゃない。


 雲から出てくる完全な満月を見届けたくなって、私はその場で空を見上げ続ける。

 ゆっくり、ゆっくりと雲が西に流れ、その後ろの月がはっきり姿を現していく。


 やっぱり満月は見応えがある。

 ほどなく、星空の中ほどに満月が躍り出た。きらびやかな月明かりが力強く地上を照らす。


「綺麗だね……」


 星の美しさはどこも変わらない。

 ヘクタール王国から離れて八年になるが、孤児院で見てきた星も今の星も変わらないままに美しい。そんな月夜にうっとりとしていると――。


「わう? わうっ?」


「えっ、シュバルツ……?」


 シュバルツの戸惑った声。彼の身体が淡い、黄色の光に輝いている。

 満月の光が地上に降りて、きらめいたように。


「えっ!? ええっ……!?」


「わうっ……?」


 夜空の光景と満腹感でぼーっとしていた私は、突然の怪現象に驚愕した。


 狼が夜空で光り出すわけがない!

 慌てた私はシュバルツのすぐそばに屈む。


「ちょっと! なにこれ、オーリ!」


「…………ぴぃ」


 オーリはとろんとした瞳で首を動かしただけだった。

 だめだ。眠気にもう負けている。


 シュバルツ自身も慌てて自分の身体を色々と嗅ぎわまっているが……。


「こ、こうなったら!」


 訳がわからないが、もしかしたら何かの病気なのかもしれない。

 今日はまだ聖女の力を残している。


 私は焦る心を落ち着かせ、聖女の癒しを顕現させようと試みた。


「待っててね……っ!」


 身体の奥から癒しの力を引き出す――息を吐いて、自分を落ち着かせる。

 指の先がほのかに純白の光がこぼれてきた。


 そのまま私はぐっと両腕でシュバルツの首を抱きしめた。

 聖女の光が私の両腕から湧き出し、シュバルツの放つ光と混ざる。


「――っ!!」


 太陽よりも強烈な光に、私は思わず目を閉じる。

 まぶたの裏にまで光が到達して――突如、光が消えた。


 夜の闇が静かに戻ってくる。 


「止まってくれた……?」


 私はほっと息をついて、目を開ける。

 ……腕を回した感覚がなんだかちょっとごわごわしている。


 シュバルツの黒毛じゃない。これは服の感触だ。


「そうみたいだね」


「はえっ!?」


 声に驚くと――知らない黒髪の男性が、私の腕の中にいた。


これにて第2章終了です!

お読みいただき、ありがとうございました!!


もしここまでで「面白かった!」と思ってくれた方は、どうかポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて頂けないでしょうか……!


皆様の応援は今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

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