はぁ〜…ビバノンノン
俺はネフの涙の水晶を見つけれる限りみんな拾った。
「そういえばシエル、さっきのなんか割れる音?はなんだったんだ?」
スライムショックで忘れかけてたけど、ガラスが割れるような音が響いて、それをシエルが調べに行ってたはずだ。
「あ〜……優耶にはここが『女神の箱庭』だって説明したよね?」
「ああ。」
「優耶以外誰も入れないように結界が張ってあったんだけど、それを、何処かの、スライムが、無理やり、壊して入ってきたのよねっ!」
シエルがネフの顔を指でつつきながら説明した。
「えっ!?女神様が張った結界を壊した!?ネフって実はすごいスライムなのかっ!?」
「…………」
シエルは指をネフのほっぺにほぼ埋め込んだままフリーズした。
いや、絵面が酷すぎる。
「えっ…、ち、違うの?」
「……違わない……けど、認めたくないっ!」
ぷくっと頬を膨らませてそうつぶやき、ふいっと横を向くシエル。
うん。
可愛い。
「まぁ認められなくても事実は変わらないんだし……っていうか女神様の結界が無くなったら俺、大変なんじゃ?」
「しばらくは大丈夫だと思うけど……」
「けど?」
「そのうち動物とか魔物とかが来るようになるから、襲われた時用に対戦訓練もしないとね。」
「それって剣とか弓とかって事か?え、やれる気がしないんだけど?」
「だから今順番にレベルアップさせてるのよ。筋力上げて魔力の総量アップさせて、順に優耶を強化しようとしてたのに……このッ!スライムがッ!無理やりッ!入って来たからッ!」
説明しながらイライラが高まってきたのか、またもやネフをつつき始める。
つつかれてるネフはスライムらしく何処吹く風だが…
「そっか…そういえばチュートリアルって言ってたもんな。俺の為だってことはわかるから頑張るよ。でも出来るだけ巻きでやるしかないな。」
それにしても……シエルって感情豊か設定だよな。
俺の為にスライムにあんなにイヤミ言うなんて。
俺の事好き過ぎじゃネ?
俺専用のAIだからこんなもんなのか?
ま、テキスト通りのコメントしか言わないとか、冷静な反応しかしないよりは全然マシだけどな!
俺は鑑定眼を使って色々と試しながら森の採取を始めた。
レベルアップする為には経験値を貯めないといけないのは、ゲームだろうがリアルな生活だろうが変わらない真理だからな。
視界全体に鑑定をかけたら目の前が文字で埋め尽くされ軽くパニックに陥ったのはご愛嬌だ。
ちゃんと食べられる物とか、
薬になる物とか、
価値の一定以上の物とか、
鑑定に条件を付けたらソシャゲの探索画面っぽくなって楽しくなった。
この森は本当に色々な物で溢れている森だと思った。
食べられる物を取っても俺に料理はほぼ出来ない。
ならば薬になる物を採取しようと鑑定眼を調節した。
キノコを取り収納する。
木の実を切り取り収納する。
だが1番多いのは根っこだった。
根っこの採取って……草むしりの親戚だよな……
俺は『スッポン太郎』を駆使して色んな根っこを採取した。
「ふぅ〜……そろそろ帰ろうか。」
森に差し込む日差しが傾きだし、光の色が黄色味を帯びてきた頃、俺はそう言って腰と背中を伸ばした。
「そうね。そろそろ帰らないとね。」
シエルはそう言って俺の左肩に座る。
ネフは結局ずっと背中に張り付いていた。
どんな仕組みなのか分からないが、シエルは触れるけど重さは無い。
スライムのネフも背中に張り付いて腕と足…いやコレは触手だな、を俺の身体に巻き付けている。斜めがけショルダーバッグっぽくもないこともない。
…………自力移動する気は無いんだな…
それから小一時間かけてテントの有るところまで帰ってきた。
そして俺はおもむろにスマホを手に取りある物を検索した。
うむ。
いい物があるじゃないか。
「優耶、どうしたの?」
「ん?…いやさ、もう我慢の限界なんだよ。」
「「?」」
シエルもネフも首を傾げる。
そんな二人を置き去りに俺は届いたある物を取り出した。
「じゃじゃーん!!アウトドア用バスタブだっ!!」
そう。
俺はもう風呂に入りたい気分が最高潮に高まっていた。
昨日は突然の異世界と魔法でびっくりしてそれどころじゃなかったが、今日は森への往復で適度に汗もかいたし、ネフに倒されて地面に寝たし、まるで草むしりのような薬草採取もしたから、満足に出来ない清浄魔法より湯に浸かってさっぱりしたいんだ!
購入したアウトドア用バスタブは大人1〜2人ぐらい入れる大きさのバスタブで、横に上と下の2ヶ所に穴が空いていてそこから外にパイプが出ている。そのパイプが鉄製でグルグルと螺旋状になっていて、その螺旋状のになった真ん中で火を炊けばパイプの中の水が温まり、バスタブの中の水が循環され、最終的にお湯が沸くという仕組みらしい。
アウトドア用品だけあって、焚き火の上で料理も出来ると有るが、俺は料理はしないからまあ、そのまま眺めるだけだな。
「水は…近くに無いから買うか…」
俺がつぶやくと、ネフがポンポン、と俺の注意を引く。
「ん?」
ネフを見ると腕をバスタブの上まで伸ばして、だぱっと水を出し始めた。
お風呂用の水もネットで買おうと思ってたからこの水は有難い……無害ならっ!!
俺は一応鑑定をかけた。
ネフの事はまだまだよく分からないからな。
『炭酸水素塩泉。別名美肌の湯とも言われる。古い角質や毛穴の汚れを取り、石鹸で洗ったように肌をさっぱりさせてくれます。』
めっちゃ詳しく鑑定結果が出てきた。
っていうか、これ、めっちゃ温泉水じゃネ?
「おおおおおっ!すっっっげぇ……」
ネフがバスタブいっぱいに温泉水を入れてくれたから、早速購入した薪で風呂を沸かす。
説明書によると1時間ほどかかるらしい。
ボタン押して15分で入れる家庭のお風呂の素晴らしさに思いを馳せながら、水平線に沈んでいく夕日をじっくり見てしまった。
いや、めちゃくちゃ綺麗だったけどさ。
風呂が沸くまでの間に森で収穫してきた物を簡易テーブルに出した。
「なあシエル、コレって薬草みたいにあの道具に置いていけばいいのか?」
「そうよ。でも状態で買取額が変わるのは薬草と一緒だから工夫してみてね!」
試しに傘の破れたきのこを置いた。
次に同じ種類の傘が綺麗で汚れを軽く落としたきのこを置いた。
……1.5倍で買い取られた。まじか…
俺はきのこを分別してB級品はそのまま、A級品は布で軽く磨いていった。
少しでも高く買取ってくれるならその方がいいじゃん!
…って思うのは俺が貧乏性だからなのか?
果物はスーパーで売られていた状態を思い出しながら軸を整えコレも布で軽く磨く。
1番多い根っこごと引き抜いた薬草は根っこだけが必要だったらしく、上の葉っぱはほぼ要らなかった。早く言ってくれよ……
しかも土は洗い落とした方が高いから地味に1個1個手で洗った。
全て終わった頃にはライトが無いと何も見えないくらい暗闇だったが、お風呂はいい感じに沸いていた。
バスタブの横にザラ板を置き、着替えとタオルを入れた籠を濡れない場所に置き、
いざ入浴ターイム!
何の躊躇いもなく全裸になり手桶で頭から湯を被る。
「〜〜〜ッッッ!」
いい湯!!
いい湯だっ!
バスタブに飛び込みたい気持ちを抑えてシャンプーで頭を洗う。
身体を洗ってから湯船に入るのは当たり前の入浴マナーだからな!
俺は1人で入浴する時もそこは譲れない。
両手でわしゃわしゃしてると俺以外の手もわしゃわしゃし始めた。
「お、手伝ってくれるのか?サンキューな!」
俺は目を閉じたままお礼を言った。
そして頭を流そうと桶に手を伸ばすがーー桶が無い。
「おん?」
探そうと片目を開けた時、上から適温のお湯がダバダバっと降ってきた。
「んぁっっ!…」
慌てて目を閉じ下を向く。
シャワーではなく蛇口から出てきたという感じのお湯に有難いが…惜しいっ!と思ってしまう。
っていうかネフは水だけじゃなくお湯も出せるのか…………早く言ってくれよ……
石鹸成分が流れ落ちた手応えを感じてお湯を止めてもらう。
「ぷはァ…!あ〜助かったよネフ。ありがとう。」
バスタブのヘリに掴まって上からお湯をかけてくれたネフにお礼を言った。
ネフは嬉しそうにぷるぷる揺れている。
そう。
バスタブのヘリに掴まって上半身だけの女性フォルムの半透明スライムがぷるぷる…
俺の目の前にちょうど有るのは半透明とはいえしっかりした大きさのおっパイ…ぷるぷる…
「ぶはッ……ちょッ、ネフ、ネフさんやっ!」
俺は吸い寄せられる自分の視線を無理やり顔を横向けることで離して慌てた。
「あ〜ッッッ!ネフッ!あざとい事やってユウヤを誘惑するのはダメって言ったじゃない!」
俺が風呂に入るために服を脱ぎ始めた時、慌てて後ろを向いたシエルが、異変を感じて振り返り叫んだ。
「……!!」
腕を振って抗議してるネフ。
バスタブから離そうとシエルが近寄って来る。
そしてシエルはネフの首根っこを掴んで持ち上げ、バスタブから勢いよく剥がす。
シエルがネフを持ち上げこちらを向きながら、
「優耶、このハレンチスライムは私がしっかり捕まえておくから、ゆっくり…はいっ……て……」
全裸の俺をバッチリ視界に入れた。
「きゃぁぁぁぁッ……!!!!」
叫ばれた。
何そのリアルな女の子みたいな反応。
すげぇプログラミングだなぁ
俺は満天の星空を見ながら最高の露天風呂を堪能した。
[風呂]*ノ∇ノ)キャッ♪




