あるゥ日、森の中、スライムに、出会った
「じゃあ森に行こうか!」
小さなシエルの張り切ったかけ声に、薬草草原の向こうにある森に向かって歩き出した。
おおよそだが、真っ直ぐに薬草の草原を突っ切って2〜3km向こうから森が始まっている。
遠いなぁ…………
……歩くか。
ってかそれしか移動手段は無いな。
「なあシエル。」
「なあに?」
「テントとかってこのままでいいのか?」
「……あ〜…まだ…………覚えれるまで……が上がって……らなぁ……うん。このままで良いよ。」
シエルの言葉の前半は小声すぎて良く聞き取れなかったが、このままでいいなら問題ないな!
30分程で森の端に到着した。
小さなシエルは俺の肩に腰掛けている。
座ってる感触はあるのに重さは感じない。
こういう所よく分からない仕様だよな…
まあ、重くないので特に気にはならないのだがね!
たどり着いた森は所々に木漏れ日が差していて、奥の方も明るい感じだ。
「ここでは木の実、キノコ、草原では生えていない薬草や毒草を見つけて採取するわよ。」
「毒草?」
そんなの素手で触って良いのか?
「毒草や毒茸も薬の材料になるのよ?覚えておいて損は無いわ。」
「なるほど、じゃあ手袋とか何か採取用の道具が要るんじゃないのか?」
「ん〜……そうね。うん、Mamazonに良いのが有るって!」
検索中の小首傾げからのMamazonか〜いッ
可愛いから良いけど!
スマホを開いて早速Mamazon︎︎を見る。
ちゃんと森の採取セットが売っていた。
『毒になんか負けないッ薄手採取用グローブ、うすうす兄弟』
『 そっとだ!そっと抜いてくれ!頑固な根っこも優しく抜きます、スッポン太郎』
『私はどうなってもいい!でもまだ熟してないあの子は切らないで!太い枝もスパッと切ります高枝鋏、ギロチン娘』
『アレもこれもちゃんと仕分けてよね!異空間BOX、仕切り屋ちゃん』
……ネーミングよ……
届いた採取セットにはベルトも付いていて、全ての道具が腰周りに収納出来た。
何よりも驚いたのは異空間BOXだ。
BOXなのにリング状のキーホルダーになっていて、ベルトを付けた状態で採取物を持ちながら「BOX」と言えば収納出来るらしい。
すごい!
なんか本当に異世界だ。
異空間ってどうなってるのか興味わくわ〜
「よっし!準備完了!いざ森へ!」
俺は薄手グローブ『うすうす兄弟』をはめた手をパンッと叩いて森に足を踏み入れた。
目に付いたきのこをむしっとむしり、ふと考える。
こういう時、鑑定とか出来たら楽じゃね?
「なぁシエルさんや」
きのこをじっと見ながら喋りかける。
「なあに?」
俺の右肩の上に座っているシエルが返事する。
「これ採る前から鑑定とか出来たら楽なんじゃね?」
ポンッ!
肩の上で掌に拳を打ち付ける軽い音がした。
「…………ヲイ」
「えーっとねェ…スマホに確か……鑑定くんexっていうアプリがあったかなぁ……」
「あったかなあ……じゃねえよ!そんな便利なアプリ入ってるなら最初から教えとけよ!」
「やぁぁぁん、ごめんってぇ!」
シエルは肩から降りてちょっと離れたところから謝ってくる。
俺はスマホを取り出してアプリを探すと確かに『鑑定くんex』というアプリがあった。
さっそくタップするとアイコンが2つ並んでいる。
瞳にダウンロードする
ウィンドウにダウンロードする
…………どういうことだ?
「ちょっとシエル、コレどういう違いがあるんだ?」
俺は画面をシエルに向けて説明を求めた。
「あ〜、瞳にダウンロードは文字通り優耶の目に鑑定機能を付けるってことね。じっと見つめると脳裏に鑑定結果がわかるって仕組み。ウィンドウにダウンロードは鑑定って唱えると目の前に半透明のウィンドウが現れてそのウィンドウ越しに対象物を見るとそのウィンドウに鑑定結果が出るのよ。」
「それって面倒くさくねぇ?」
「ウィンドウだと、他人にも見せれるの。この世界の人が鑑定をする場合はこの方法でみんなやってるわ。」
ふうむ…いずれ文明のある場所に出た時に目立たない方を取るか、こっそり知る方を摂るかって事か。
……でもさ、鑑定眼ってチートくさくてロマンじゃね?
俺はふむふむとうなづいておもむろに、瞳にダウンロードの方をタップした。
すると目の周りがじんわり暖かくなってきて視界が真っ白の光で遮られた。
「ぉぉおおお…」
バリンッ…!
突然、ガラスが割れるような音が辺りに響いた。
「えッッッ!?そんな……バカなッ!!」
焦ったようなシエルの声が聞こえる。
俺の視界はまだ真っ白で何が起こったのか全然分からない。
「えッッッ?どうした?なんかあったのか!?」
シエルの焦った声と見えない事に若干の恐怖を感じ、うろたえて大声でたずねた。
「ユウヤはそのまま鑑定眼をインストールしてて、私はちょっと見てくるから。大丈夫。そこから動かないでね!」
シエルの声が遠ざかる。
「ぇぇぇぇぇ…」
そんなに時間がかかっている訳では無いのに、視界が戻らないもどかしさと、何が起こっているのか分からない不安と、シエルがそばに居ない心細さで立ちすくむ。
鑑定眼……まだか?……クソっ
ガサッ
後ろから何か音がした。
見えないのに振り返る。
「だ、誰だっ!?……シエルかっ?」
返事は無い。
……気のせい……だったか?
そう思った時、目の前に
『インストール完了
使い方を説明します。』
と、文字が出た。
文字が出たが、その向こうに森と
真っ青な膝ぐらいの高さのデカいゼリーが震えていた。
「……え…?」
『鑑定眼は意識をする事で出来ます。』
目の前の青いゼリーの前に文字が出る。
『広範囲の鑑定は鑑定したい物が何かを意識してください』
ゼリーのプルプルが大きくなっていく
『また、対象物を詳しく鑑定する場合は』
プルプルが大きくなり膝丈だったゼリーが縦長に変形してきた
『対象物をじっと見つめて』
ソレは人の形になった
『鑑定、と意識してください』
「鑑定ッッッ!!」
思わず叫んだ!
人型のプルプルは全裸女性の形になり、こちらに両手を伸ばしてきた
ピッ
『……スライム』
その文字が目の前に出た時には、俺はそのプルプル女性に押し倒されてた。




