魔法〜lesson1
俺はエアーベッドの上でゴロリと転がり、暮れなずむ空を見ていた。
お腹は特盛汁だくねぎだく紅しょうが盛モリの牛丼で満腹ぷーだ。
このまま目をつぶってもいいが、よく考えたらこのまま暗闇になるとヤバいのでは?
今の今まで動物を見てないけど、ここは異世界。何か知らない動物が来るのでは?
いやむしろ魔物とかいるのがテンプレなのでは?
日が沈んだら暗闇って怖すぎるだろ?
考え出したらキリが無くなってきた。
ポチッとなーーースタンド付きランタン
ポチッとなーーー設置楽々テントタープ付き
ポチッとなーーー折りたたみテーブル&イス
やっぱ何かで囲われてないと寝れねぇからな!
ガンプラ(エントリーグレード&プチッガイ)も作ったことあるし、テントぐらい設営出来るだろ!
…………………
テント……何とかなったな…
ちょっと3回くらい振り出しに戻ったけどな!!
テント設営とエアーベッドの再設置が終わった頃には、辺りはすっかり宵闇の中だった。
ランタンの灯りがマジでありがたい。
ペットボトルのお水を飲みながら一息ついて、俺はシエルに話しかけた。
「あのさ、こんな草原のど真ん中で半日居て思ったんだけど…ここって安全なのか?」
「えっ?今!?」
ガチで驚かれた。
「いや、だって、そういう流れだったじゃん?」
「優耶って実は……いやいいや。うん、今ここは女神の箱庭でしかもチュートリアル中だから任意の生物しか入って来れないのよ。」
「チュートリアル中……じゃあチュートリアルが終われば?」
「チュートリアルが終わるとこの草原は無くなるから、そこからはサバイバルかなぁ〜」
「サバイバル……それじゃあ魔物とかいるってことか?」
「魔物はいないけど野生動物は居るよ。優耶はアプリでご飯を買えるけど、普通の人達は動物から肉を取ったりしてるから。」
「普通の人達……ってことはどっかにこの世界の人間が暮らしている場所があるのか?」
「有るよ〜」
「おお!行ってみてえ!」
「チュートリアルが終わったらね〜」
「ヨッシャア!なんかやる気出てきたわ!今から魔法の練習しようぜ!どうせこんな早くに寝れねえし!」
「いいわよ!じゃあまずはスマホ出して。」
スマホ?
「今の残りの電池マークの数字いくつ?」
「ん……90%だ。」
「それが優耶の現在の魔力の残量ね。その数字が0%になると強制的に充電体勢になるから気をつけてね!」
お、おお…数字で見れるんだ……
「強制的に充電体勢?」
「そ。つまり意識不明で倒れて昏睡しちゃうからね。足元が不安定な場所で倒れちゃうとそのまま帰らぬ人に……って事もあるからね〜。」
「お、おお…」
「まあでも、倒れれる場所で魔法の練習をするのはいいと思うわよ!つまり寝る前とかね!」
「なるほど……じゃあまさに今じゃん!?」
「そそ。」
「どうすればいいんだ?」
魔法ッ魔法ッ
マジテンション上がるぜ!
出来れば無詠唱とかかっこいいよな!
あと攻撃魔法はやっぱ王道だとして、生活魔法とか必須じゃね?
クリーンとかピュリフィケーションとか!
英語で言うのかな?
日本語の呪文かな?
イギリスのあの映画の魔法使いみたいに全然関係ない言葉かな…
ああああッ!
ワクワクが止まらねぇぇ!
完治してたはずの中学二年生の病気が再発しちゃうじゃん!?
「ココ、このアプリだよ!」
シエルが俺のスマホの画面から『魔』と表示されているアプリをタップする。
懐かしの魔法少女アニメみたいなロード画面のあと、一覧表が出てきた。
「……なんだコレ?」
一覧表のほとんどはグレー表示で明らかに対象外っぽくなっている。
上から3つ位は使えるのか白抜きになっていた。
「『灯り』『清潔(小)』『回復(小)』?」
ーーーインストール Yes/No ?
魔法の種類を読み上げたら画面に表示が出た。
俺は戸惑いながらも『yes』を押す。
軽快な電子音が流れて、俺の身体がかすかに光る。
なんだコレ、すっげえ…
音楽が終わったと同時に身体の光も消え、画面もインストール完了の表示が出た。
「インストール完了したね!じゃあ早速使ってみよう!」
「おおぉぉぉ…」
「このアプリのすごいところは、口で唱えてもいいし、強く意識してもいいし、スマホの画面からでも魔法が発動するところよ!」
「マジで!?」
画面を見ると
灯り 1h/ -10%
清潔(小) -20%
回復(小) -30%
ふむ……
じゃあ先ずは灯りからいってみるか。
俺は灯りのアイコンをタップした。
ぽわん と丸い光源が浮かぶ。
手に取ろうと腕を伸ばすとススッと手の上に移動してきた。
触っても熱くない。
「これ、もうちょい上で照らして欲し…」
そう言った途端、俺がこの辺って思ったところに灯りの玉が移動して行った。
「おぉぉ……」
ランタンの光も悪くないが、この魔法の灯りはなんと言うか……LEDライトの様に明るい。
「良く見えていいな……このライト、もっと明るくしたり暗くしたりムーディーな感じにしたり出来るのかな?」
………………
結果、明るくはならないが、暗くする調節は出来た。
明るくしたり、色味を変えるためには新しく魔法を発動させる必要があると分かった。
「同時に何個も出せるのは有難いな。」
スマホを見ると電池……もとい魔力残量は60%まで減ってた。
「次は『清潔』魔法だな!」
スマホの清潔魔法の所に説明が隠れていたのでタップして読む。
1回の効果範囲……魔力量に比例する。現在手のひら1個分。
……手のひら1個分……ちっちェぇぇ…
手のひら1個分で綺麗にしたい場所……
っっっはッ!?
そうだ!歯だッ!!
俺は口の中を綺麗にしたいと思いながら『清潔』のアイコンをタップする。
すると口の中にさぁ…っとそよ風が撫でたような清涼感が生まれ、なんだか綺麗になった気がした。
「うわっなんかこれいいな!うん、歯の裏もつるつるじゃん!」
1回で手のひら1個分……身体全部やる前に魔力が無くなるな。
残量は40%……
寝れば回復するからもう2箇所行けるかな…?
「っていうかさぁ〜魔力少なくね?」
俺の魔力マジで少なすぎ!
自分の身体すら満足に綺麗に出来ないじゃん!
「シエル〜コレどうにかできない?」
気分はのび太くんだ。
できるか出来ないかはさておき、万能AIのシエルに泣きつきたくなってもしょうがないよな?
「魔力量を増やす方法?う〜ん…ひたすら魔法を使ってって言われたよ?」
「ひたすら魔法を使う……?あああ!アレか!?限界まで使うと総量が増えるっていう謎仕様か!?」
「優耶の場合はそうみたい。レベルアップすれば消費魔力が減るはずだから…まあ、地味に頑張って!」
しょうがない。
そういう事なら!
俺は両手で頭を覆い叫んだ。
「『清潔』!!」
ソワァァ…っと気持ちの良いそよ風を頭皮に感じながら、俺は意識を手放した。
「……思い切りがいいと言うか……微塵も疑わない所とか、嬉しいけど……先が思いやられるなぁ。」
魔力残量0%で気持ちよく意識を手放した優耶をヤレヤレと少し呆れながらも優しい眼差しで見ながらシエルはつぶやく。
エアーベッドに腰掛けたままで大の字になって気絶している優耶の足をよいしょとベッドに上げて、上半身を寝やすい場所までずらす。
枕を挟むために持ち上げた頭を優しい手つきで撫でながらつぶやく。
「……変わらないね……」
ひっそりと囁かれたその言葉は誰にも聞かれることなく夜の闇に溶けていった。
´,,・ω・)ω-。)ピトッ♡




