働かざる者……食べ物無いよ?
「はい。このザルに置いてね!お金になる草なら手元にあるディスプレイに金額が出るから。」
そう言ってシエルはどこから出したのか、平たいザルを俺に渡してきた。
「ザル……コレそんなに載らなくね?」
「ふっふっふ!大丈夫。お金になる草は勝手に送られるから。」
「送られる?」
どこに?
「まあまあ、難しい事は後で知るとして、まずは手近な草から採取してみましょ?」
シエルに誤魔化された気がするが、とにかく直ぐ横にある草の葉っぱをブチッと千切ってザルに載せる。
ピッ
『薬草 最高級』
「えっ!?」
ちぎっただけの葉っぱが最高級!?
マジか!
テンション上がるじゃんっ!!
『100円』
「100円かいッッッッ!!」
つっこむ俺。
「すご〜い!優耶才能あるんじゃない?」
シエルは真面目に驚いている。
「たった100円だぞ!?」
「そう!その2枚の葉っぱで100円も貰えるんだよ!?凄いじゃん!!」
……そっか、そうだよな!
たった葉っぱ2枚で100円って事だよな!?
え、コレめっちゃ良くね?
気を良くしてもう1回千切る
ブチッ
ピッ
『薬草 まあまあ 10円』
……まあまあ?
えっ?
さっきと何が違うんだ?
しかも10円!?
分かんねぇ〜?
違いが分かんねぇよ!?
ブチッ
ピッ
『雑草』
「雑草!?え?マジで違いが分からねえ〜ッ!」
何度見ても置いた草は消えないし、雑草の表示も変わらない。
諦めてザルの上の雑草をぺっと手で払い落とし次の草を千切る。
ブチッ
ピッ
『雑草』
ブチッ
ピッ
『雑草』
ブチッ
ピッ
『薬草 高品質 50円』
「おっ!」
………………
ブチッ
ピッ
『雑草』
「う〜〜ん……」
なんとなく傾向が分かってきた気がする。
ブチッ
ピッ
『薬草 最高級 100円』
「っっしゃあ!!」
ブチッ
ピッ
『薬草 高品質 50円』
「うむ。なるほどな。」
「何がなるほどなの?」
「この形の葉っぱが薬草で、こっちのよく似た葉っぱは雑草。」
「おお〜!よく見分けれるようになったね!」
シエルがぱちぱちと手を叩いて褒めてくれる。
「しかも先端の方が品質が良くなるが、本当に先っちょだけだとそこそこになっちゃうんだな!」
「へぇ〜そうなんだ!」
「だから多分だけど……」
ブチッ
ピッ
『薬草 最高級 100円』
「な?コレが大事なんだよな。」
俺が確信を持って千切った葉っぱは狙い通り最高級。
「…つまり?」
「一芯二葉……って、高級茶葉かよッ!!」
そう、この薬草、先端の葉っぱ2枚目の下で千切ると品質が高くなるのだ。
あとは葉っぱ自体の色や形がランクに影響するみたいだ。
それからは一心不乱に薬草を採取した。
イヤフォンでお気に入りのプレイリストを再生しながら、黙々と作業する。
薬草の見分けも、最初は多少雑草が混じっていたが、段々と違いがはっきり分かるようになり、今では絶対に間違えない。
というか全然別物に見える。
…コレがレベルアップというものかッ!?
やはり経験値は積まねばならないのだな!
HAHAHA…
結果、プレイリストが終わるまで取り続けて本日の金額は10万円近くになった。
腰は痛いが…俺なんか凄くね?
ジーンと充足感に浸っていると、ぐぅぅぅぅ…っと胃袋が空腹を主張してきた。
そういえば昼ご飯前に穴に落ちてから結構時間が経っている。
太陽も結構傾いてきていた。
「シエル、結局食べ物はどうすればいいんだ?」
そうだ。
食材がどうのって話をしてたら薬草採取させられたんだよな…
もういい加減腹減ったんだけど?
「あ、そうだったね!これだけ稼いだから今日はもう大丈夫そうだから……スマホに新しいアプリが届いてるハズだよ。」
言われてスマホを見ると、確かに新しいアプリがインストールされている。
『muber Eats』
ぶはッッッ!!
思わず吹き出してしまった。
『ムーバーイーツ』ってなんだよッ
パクリか!?
パクリなんか!?
何はともあれ中を見てみると、見た事あるテイクアウトメニューが見たことない店名で出ている。
「……っていうか、みんなmshopになってる…」
「あはは!そりゃこの世界に〇ックとか吉〇屋とか無いからね〜でも味は同じはずよ!」
シエルが笑顔でもっともな事を言う。
「さっき薬草採取で稼いだ金額までで買えるから、好きな物頼めばいいと思うよ。」
「……いや、頼めばって……誰が持って来るんだよ?」
「?持っては来ないよ?だって転送されるから。」
「転送……何でもありかよ!?」
良く分かるようなよく分からない仕組みの世界なんだな……
「あ、ついでにテントとか買わないと、今夜の寝る場所がこの草の上って事になるわよ?」
な、なんだとッ!?
「それもmamazonで買えるからね〜」
クッ……もうmくっ付いただけじゃん!?
ってかなんで m?
「ん?ん〜……秘密だって!」
キョトン顔で小首を傾げて……にっこり笑って言い切った。
教えてくれるんじゃないのか〜い!
っていうかその顔ほんとに可愛いなぁぁ!
秘密ならしょうがない。
きっと聞いてもしょうもない理由かもしれないし……もう、なんか考えるのが疲れた。
いや、ホントにお腹すいたし、疲れたし、今すぐゴロゴロしてぇぇぇ!
俺は ポチッとな! と、スマホのアイコンを押した。
ピンポーン
スマホから音が響き、ディスプレイに受け取りのポップアップが出た。
俺はそいつも ポチッとな! と押した。
すると目の前に俺が買った物が現れた。
「優耶は何を買ったの?」
シエルがワクワク顔で聞いてきた。
「ん?…クククッ知りたいか?
……ジャーンッッッ!!エアーベッドだ!」
「エアーベッド???」
「椅子にもベッドにもなる優れものだ!しかも電動空気入れも付いてるし、空気を抜けば持ち運びも楽チンだ!」
フハハハハ!
我ながら完璧なチョイスッ!!
俺は説明書を読みながら空気を入れた。
……うむ。
良い感じ。
今すぐ寝たい。
Guuuuuuuu……
胃袋は寝ることを許してくれなかった。




