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俺のチート……

この世界でスマホを全員持っているのがスタンダードだと聞いて、ちょっとだけ思っていたチート生活がそうじゃなかったと知りガッカリした。

だってこのスマホ向こうの世界から使ってるやつなんだよ?

異世界×スマホ=チート ってテッパンじゃん?

人前でスマホ使ったら目立っちゃったりとかこのスマホの機能で香辛料買って食品チートで収入ウハウハでも出処不明でドキドキとかそういうイベント期待したりしなかったりとか……

……無いって事だよな……


うん。大丈夫。

俺はそんな分かりやすいチートに頼らなくてもここで生きていけるさッ


だが、要らん期待をしない為にももっと詳しくこの世界の事をシエルに聞くことにした。


この世界では7歳になると全員教会で祝福を受ける。この祝福が、いわゆるスマホなのだそうだ。

見た目はほぼスマホ。

呼び名は『スマディ』…このスマディを使わなければ生きていけないから、7歳迄に一生懸命勉強をして文字を読み書きできるようにするらしい。

そしてお金はなんと電子マネーなのだそうだ。つまり、貨幣は無いという事らしい。

お金のやり取りはスマディ同士で『ピッ』とやり取りするのだそうだ。


ナントカpay…か!?


あと、スマディは祝福として与えられるものだから個人登録されているそうで、他人は操作出来ないのはもちろんの事、うっかり忘れたり落としても自動で戻ってくる使用なんだと。


……つまり軽犯罪系は出来ない世界なのか。


あとは買取り用の輪っか……『ムギ兵君』と言うらしいのだが……どこかの買取り&販売会社に名前が似てるのは気のせいだろうか?

ちょいちょい向こうの世界の香りを感じる。


「あ〜…それはしょうがないかも。だって時々向こうのネットワークに繋がっちゃうみたいだし。」

「な、なんだって!?」

「本当はこの島限定で向こうのネットワークを見ることが出来るってハズだったんだけど、時々ここ以外でも見ることが出来る場所が増えてきてるんだって。」

「向こうの……ネットワークを見れる?」

「優耶だって毎日向こうのSNS見てるでしょ?」

……そういえばそうだ。

朝はSNSを見ながらコーヒーを飲むし、薬草採取しながら音楽だって聞ける。何故かWi-Fiが繋がってるし……ただ、こちらからは何ひとつアクションが送れない。

「うん。見るだけだよ。一方通行。理由は……神のみぞ知るってところよ。」

AIのシエルでも分からない事を神様のせいにするんだな……

「それで『ムギ兵君』も個人で貰えるのか?」

「いいえ。『ムギ兵君』を個人所有してる人はこの世界にはいないわ。」

「えッ?じゃあ…コレは?」

そう言って薬草を次々置いていた左手に持った『ムギ兵君』を目の前に持ち上げた。

「……異世界転移特典……かな?」

ニコッと笑ってシエルが言った。

「えっと……参考までに聞くんだけど……一般的には皆さんどうしてるんだ?」

「ん〜…教会には置いてあるから、そこで買取りしてるのよ。」

「……教会……」

なるほど。

こんな風に採取しながら買い取って貰うという状態自体が既にチートだとは……

人に会ったら黙っておかないとな。

変に絡まれても面倒だし。

便利屋になるつもりもないからな。


薬草草原を抜けて森に入った。

ここでも鑑定眼で価値の高そうな者を中心に採取していく。

前回と違って採ったそばからクリーンで綺麗にしていく。土を落とすぐらいの魔法にそんなに魔力を取られない事に気付いたのだ。


前回採取に来た時は早々にネフに押し倒されてなんだかバタバタしていたから、ゆっくり森を堪能しながらの採取は少し楽しくなってきた。

感覚的にはまだ昨日の出来事なのだが、日数では1週間前だ。

だから俺はそれが異常事態だと思わなかった。

横の茂みがガサガサッと揺れた。

「ん?」

しゃがんで地面に隠れながら生えてるキノコを取っていたからほぼ四つん這いの体制で音の鳴った方へ顔を向ける。


ガサガサッ


一際大きな音がしてぬっと顔を表したのは四つん這いの俺と同じ高さのイノシシの子ーーウリ坊だった。


「……ウリ坊じゃん!可愛いなあ!」

俺は四つん這いから体制を起こして座り込んで野良猫に接するぐらいの気軽さで手を差し出した。

最初驚いて固まっていたウリ坊も恐る恐る近寄ってきた。

そして俺の手が届く距離まで近付き警戒を解いたのか、差し出した手に頭を寄せてきた

「おおぉ…野生なのにこんなに懐っこい……」

ちょっと感動してワシワシ撫でてたら、後ろからネフが覆いかぶさって来た。

「んぉっ…」

いきなりの行動に驚いたのは俺だけじゃない。

膝の上にいたウリ坊も突然顔を出したスライムのネフに驚きスゴいスピードで元来た茂みに駆け込んで行った。

「ああああ…」

俺のウリ坊……

伸ばした腕をむんずと掴んでネフが自分の頭に持っていく。

撫でるなら自分を撫でろって?

スライムも悪くないけど野生のウリ坊も撫でたい時が有るんだよ……はぁ…


ドッドッドッドッ


諦めて立ち上がろうとした時近付いてくる地響きにドキッとする。


いやまさか

ギャグ漫画じゃあるまいし

こんな所でそんなテンプレ

……

短歌調に浮かぶ嫌な予感。

「ちょっ、優耶!結界ッ!シールドッ!防御してッッッ!!」

ものすごい焦ったシエルの声に半ば無意識に覚えたばかりの魔法を発動させる。

「けっ、結界ッッッ!」

突き出した手と声と共に目の前に薄く色付いた透明な板が現れる。

その直後何か巨大な塊がすごい勢いでそれにぶつかって来た。


ドオォン…


巻上がった土煙が晴れていくと共に姿を表したのは立ち上がった俺の1.5倍はありそうな、チョー巨大なイノシシだ。

薄く色付いた結界板…シールドに鼻頭を付けて目はランランとこちらを見据えている。口の端の牙は思った以上に存在感を主張し、体全体から地響きのような唸りが発せられている。

興奮して何度もシールドに頭をぶつけるイノシシに心底恐怖を覚えてしまうのは仕方ないだろう。

大型の動物なんて動物園の檻の中で寝てるヤツしか見た事ないぞ!?


「ちょっ、シエルッ、ど、どうすりゃいいっ?」

ガンガンぶつかってくるイノシシから目を離さずシエルに尋ねる。

「あ〜…随分興奮してるからねぇ…」

こちらの焦りとは裏腹にのんびりとした返事が返ってくる。

威力が足りないと思ったのか巨大イノシシが前足で地面を蹴りあげる。

「う〜ん…殺せば襲われないよ?」

「ど、ど、どうやって?」

「刃物とか…」

「それ、誰がやるんだ?」

「優耶しか居なくない?」

「む、む、む、無理ぃぃぃぃぃ〜ッッッ!!」

俺の叫びに合わせるように1度引いたイノシシが再び突進してきた。

俺は恐怖でぎゅっと目を瞑る。

檻の中に居るなら安心なのにッッッ


ガキィィィィィンッ


やたらと硬そうな物にぶつかる音がした。

驚いて目を開けるとシールドと同じ素材の檻がイノシシを閉じ込めていた。

「おぉ…なるほど!コレは結界の応用ね!さすが優耶!初めての魔法なのになんて柔軟な発想なのっ!」

シエルが手を叩きながら褒めてくれる。

後ろに引っ付いているネフが頭を撫でてくれている。

俺は安堵のあまりに腰を抜かしてしまった。

「…良かった……」

座り込んで檻の中のイノシシを見ているとその檻の後ろからさっきのウリ坊が現れ、檻の中のイノシシに向かって悲しそうに鳴き始めた。

「……マジか…やっぱテンプレ展開だったじゃん…」

親イノシシを殺すと子イノシシが復習を誓っていずれやってくる……

まだ殺して無いからフラグは立てて無いよな?

ウリ坊のためにも解放したいのだが、なんせまだまだ絶賛大興奮中だ。

「せめて平常時まで落ち着いてくれたらなぁ…」

俺が思わず呟いた時、檻が柔らかく光った。

と同時にみるみる親イノシシの興奮が収まっていく。

30秒もしないうちに親イノシシはすっかり大人しくなり、檻の外のウリ坊と鼻を合わせている。

「…えっ…」


あんなに興奮していたのにあっという間に落ち着いた…


俺はすぐに逃げれるように後ずさりながら檻を解除した。


隔てる物が無くなった親子イノシシはこちらをチラッと見て元来た茂みに消えて行った。



ビーーーム(」*`ω´)」 =͟͟͞͞♡☆*。☆♡

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