歩きスマホは危ないよ
今日から緩く書いていきます!
よろしくお願いします。
「…イテテッッ!!」
尻と背中と後頭部を打ったらしい。
目尻に涙を浮かべながら目を開けたら、360°大パノラマのザ・大自然が広がっていた。
「………………はっ?」
ココハドコ?
俺は有島優耶21歳 フリーアルバイター
高卒でそこそこの会社に入社したが、研修期間中になんか会社の雰囲気が合わなくて早々に退社した。
しばらくは実家でバイトしながら次の会社を探していたが、次の春に入りたい会社が見つからなかった。
ちょっと社会人にツマづいて家でゴロゴロしていたら、食費ぐらいは稼いで欲しいと親に泣かれてそのままアルバイトを転々としながら今に至る。
バイトって半年もやると飽きるんだよね…
だから正社員の打診が来る頃にはもう辞めたくなってるんだ。
コレはもう病気だよね?
仕事続かない病
きっとそう
だから常に携帯片手にバイト情報やら転職情報見ながら移動するクセがついちゃって、今日も次のバ先(バイト先)探ししながら歩いてたら……足元の地面が消えた。
落下するタマヒュン感と、小さくなっていく穴から見える空の明かりがやけにゆっくり見えたあと、背中と後頭部の衝撃に思わず目をギュッとつむった。
肺の中の空気がみんな吐き出され、身体がバラバラになったような衝撃が全身に広がる。
その痛みに耐えきった後、目を開けたらそこは青い空に緑の草原だった。
空を見る。
雲が浮かんでる。
周りを見る。
腰丈の草がずーっと続いてる。
立ち上がる。
打ち身程度に痛みはあるが、骨折とか出血とかはしてないっぽい。
頭は……多分大丈夫。
遠くに森。
その向こうに山山山でっかい木。
反対側に海。
「マジでどこだここ?」
呆然とつぶやけど返事は無い。
俺、さっきまでまあまあビルが建ち並ぶ市街地に居たはずなんだけどな…
歩きスマホは危険って言われても、そんなドン臭くないって鼻で笑ってた。
だけど……穴に落ちた。
最近流行りの空洞化ってヤツか?
歩道の真ん中に穴あるなんて思わんじゃん?
ここ、穴の中じゃ無いよね?
いや、死なんで良かったけど……
……
………………
…………………………死んでないよね?
河とか、渡ってないよね!?
お、お花畑でじいちゃんとかばあちゃんが手招きしてないよね????
あ、……ばあちゃんまだ死んでないわ。
そうだッ荷物!
俺は足元を見回した。
ってか携帯だ!
スマホどこだ?
探すまでもなく足元に転がっていた。
「あったあぁ~画面割れてねえな…よし!電源は……ついた。んで………ん?」
画面はついた。
電波は……はっ?
Wi-Fi……?
Wi-Fi~~~~!?
えっ??
何で!?
ここWi-Fi繋がるん!?
えっ!?
実は穴の底は地下施設だった!?
俺は慌てて地図アプリを開く。
現在地……………………アレ?
アイコンは有る。
地図が……わからん。
どれだけズームアウトしても見知った日本の形にならない。
1つ分かったのは、全然知らない地図でこの島?の名前は「フォルカッシュ」ということだけだった。
……フォルカッシュ??
いや知らんて。
ドコよ?
とりあえず。
地図アプリは使えた…か?うん、まあ使えた。
何故かWi-Fiが繋がってる……
爽やかな風が吹く大草原の真ん中なのにっ!
意味分からん。
ふぅ…
次に確認すべきは……SNS!!
………………うん。
投稿記事もツイートも読める。
ってか現在進行形で会話が進んでるな。
ちょっとこの現状を呟いてみるか……
………………何故だ!?
入力が弾かれる。
……文字は打てるのに、送信ができない!?
なんだコレ?
どうなってるんだ?
そうだ!!
AIに聞いてみよう!
『SNSに送信出来ない 何故』
…………
ピコンッ
『SNSに送信出来ない原因はいくつかあります……が、そもそも現在送信出来る場所に居ません。残念ですが諦めてください。』
……は?
……送信出来る場所に居ない!?
Wi-Fi繋がってるのに!?
しかもなんか、諦めろって!?
「なんだそれ……どうしろってんだよ?ってか、どうやって元の場所に帰るんだよ??」
ピコンッ
『専用アプリを起動して案内にしたがってください』
俺の言葉に反応するように返事が表示される。
画面にデカデカと現れるアプリのダウンロードを促すアイコン。
「アプリの案内に従えだと?ここ…なんかのアトラクション施設なんかな……ウーム、結局案内にしたがえば外に出れるってことか?もしくは誰かに会えるかも。スタッフとか……」
俺はぶつつきながらそのアプリをダウンロードした。
『こんにちは!
私はアナタの案内人のアバターよ!
アナタの名前を教えて!』
「優耶 ユ、ウ、ヤ」
漢字とカナを入力する。
『優耶 いい名前ね!これからよろしくね!
次に私のアバターをカスタマイズしてね!最終決定後の変更はできないから慎重にね!
優耶、私を可愛くしてね!』
おお、なんかこのアプリめっちゃフレンドリーだなぁ。
アトラクションのアプリのアバターなんて適当でいいじゃんって思うけど、あとから変更出来ないって聞くとやっぱ慎重になっちゃう小心者な俺。
先ずは性別。
は?女性限定!?
年齢……18歳以上?…って…コンプラが厳しいからかな…?
目、口、鼻、眉、輪郭、耳、髪型……
それぞれに色味も調整して……
体型…えっ!?2等身から8等身までは後から変えれるんだ!
8等身美女がフィギュアで2等身になるとなんか可愛くなるっていうアレが、後から自由に設定出来るのは、なんて言うかマニアっぽいなあ。
でも俺Qポスって割と好き。
んで、肌の色に…は?胸の大きさ?
ん~……俺は手のひらで包んでちょい出るくらいが理想だな……デカすぎもちっぱいもそれはそれでだけど。むふっ。
細身よりはもうちょいふっくらがいいな。
細過ぎるとなんか怖いんだよね。
やっぱりちゃんと健康的な丸みが女の子なら欲しいよね!
うむ。
良い感じじゃね?
ネイビー系のセミロングの髪に同色の瞳は知的な感じで、唇は薄ピンクのほんのりぷっくり清楚系。
……なんか、高校の時の好きだったあの子に似てなくもない……ハァ…吹っ切れたつもりでいたんだけどな~
まあいいや、コレはアバター。
アトラクション限定のアバターだ!!
決定っと!
僕は決定のアイコンをタップした。
その途端、携帯の画面が激しく点滅しそして強く光った。
それはまるで女児アニメの某変身シーンの様にキラキラしい点滅とフラッシュの嵐で、俺はあまりの眩しさに目を瞑る。
まぶたに光を感じなくなったので恐る恐る目を開けると、目の前にさっきカスタマイズした女の子が等身大で立っていた。
「はぁ〜い優耶!私を作ってくれてありがとう!私の事はシエルって呼んでね!」