第6話 野球って難しい
何はともあれテニス少年から野球少年コージが誕生した。
コージは持ち前の真面目さで頑張っていた。
「野球はなかなか難しいけど楽しい。野球部に入ってよかった」
そう言っていたが、コージの中には不安が広がっていた。
「思うように上達しない。分かっていたつもりだけど、やっぱり厳しいな。同級生の中でオレが一番ヘタだな」
テニス部時代は部内でも実力上位だったのに今は底辺だ。
しかし、野球部の仲間が励ましてくれた。先に入部していたが同じように初心者だったマキタと友達になれた。
マキタは中学から野球を始めたのに、身体能力の高さを活かしてみるみる上達していた。コージの目標となる存在だった。
「コージ、投げる時に力を入れすぎるな」
「フライを取る時は、後ろから斜めにボールに入っていくカンジた」マキタは気のいいヤツでよく声をかけてくれる。
「おう、ありがとうな」
コージもそれに応えて頑張った。コイツと一緒にレギュラーになりたい、そう思える仲間だ。
練習では一喜一憂を繰り返しながら日々もがいていた。
マキタの他にもコージを助けてくれる人がいた。コージの兄貴の友達であるテツヤがいた。
テツヤは中学時代に野球部で今は高校球児で甲子園を目指している。テツヤがコージの指導をしてくれた。
「下半身をしっかり使ってバットを振るんだ」
「肘の使い方はこうするんた」
テツヤは高校球児だけあって指導もしっかりしていた。
技術的は事だけでなくコージの精神面もよく理解してくれた。
「コージはホントにいつも一生懸命だな。今は初心者だけどポテンシャルがあるし4番打者のポジションを狙える力を持っているよ」
コージの気持ちが上がる言葉を言ってくれた。
テツヤはお世辞じゃなくて本気でコージに期待していた。
コージは師匠テツヤの言葉が嬉しくてヤル気も増してきた。夜に家の前で素振りを欠かさないようになった。