第5話 いざ、野球部へ
テニス部を辞める事を決意したコージはその旨を顧問の先生に告げた。
「先生、オレ野球がやりたいんです。テニス部を辞めさせて下さい」
先生にとっても突然の告白だった。コージは小学生の頃からテニス経験者だったので、中学入学直後から練習試合で出番を与えられる実力者だった。
「本当に辞めるのか?次の試合も出てもらうつもりだったけど…」
先生からのありがとう言葉だったが、コージの決意は変わらなかった。
「今までお世話になったのに、申し訳ありません。どうしても野球がやりたいんです」
これでテニス部の退部が決まった。そして、すぐに野球部の先生に入部のお願いをした。
先生は歓迎してくれたが、コージが野球初心者である事を心配した。
「初心者で途中から入部となると、他の部員とレベルの差があるかもしれない。ひょっとして、最後まで公式戦に出られないかもしれない。それでもやるのか?」
コージは覚悟の上だ。
「はい、それでも野球がやりたいんです!」
先生はコージの目の輝きに賭けてみることにした。
「この子だったら、やれるかもしれないな」
晴れて野球部への入部が決まったが、父は先生と同じような心配をしていた。何せシロウトだから。
「コージ、ちょっとキャッチボールをしよう」
どの程度ボールが投げられのか見ようと思った。不安は的中した。
父は草野球経験があるのでキャッチボールはできる。
「よし、まずはゆっくり投げるぞ」
ゆっくり投げたボールだがコージは取れない。グローブに当てることさえできない。
コージが投げるボールも酷かった。父がジャンプしても取れないほどだ。
「こんなはずじゃないのに。なんでできないんだ。クソ〜」
コージがイラつき始めた。父が心配していたとおりだ。
「これぐらいでイヤになっていたら野球なんて無理だぞ。大丈夫なのか?」
父の問いかけに対してコージの表情は暗かった。
こうして前途多難な挑戦が始まった。