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遅くなりました。
すみません。
せっかくギルドストレージが使えることが分かったのになったのにまた岩でいっぱいになってしまった。
これは、嫌がらせか?
それとも。
「何かあったか?」
本当に嫌がらせをするのであれば、私のアイテムもギルドストレージから奪っていたはずだ。
それを私のアイテムだけ綺麗に全部残していた。
「一度岩を取り出してみるか」
適当に三個ほど岩を取り出す。
大きさや形は全て違っているが、そのどれもが濡れ、泥で汚れていたのだ。
雨の中の山中とかで見るような岩だ。
「イヤな予感がする」
土石流とかに巻き込まれたとか?
通り抜ける道を作る為に岩をギルドストレージに入れていたとしたら、辻褄が合う。
今も抜け出せていない、もしくは家族や仲間を救出ができていないのであれば今もなお岩を回収するする必要があるかもしれない。
「シェミ、お外に連れてって」
「はい、風邪に当たりたいのですか?」
「そんな所かな」
まだ長距離を歩く子ができないのでシェミに抱えられながら外に向かう。
外に出ると綺麗な庭を一望できる所でゆりかごに入れられ、外気浴をするのだ。
早く歩けるようになりたいのだが。
「さて、さっそく」
ギルドストレージの岩を取り出す。
だが、一つ誤算があった。
「あまり取り出し先を長距離に設定できないんだな」
距離にして二メートルほどだろうか。
まあ、今は緊急事態だ。
多くの岩を次々とギルドストレージから取り出していく。
それに並行してギルドストレージには新たな岩が入ってくる。
ごろごろ。
ごろごろごろ。
ごろごろごろごろごろ。
どれほど出しただろうか。
岩を取り出してしばらくするとストレージに入れられる岩の数が増えなくなった。
「これは?」
シェミの声が。
私は夢中になって岩を取り出していたので周りに気づかなかった。
「あ」
横を見ると山のような岩がそびえ立っていた。
どうしよう。
「バルト~ン、魔法の先生が来た、ぞ!」
タイミングが悪い事にパパンが来てしまった。
さすがに怒られる!
「すごい」
は?
「魔法を習う前にこんな〈土魔法〉が使えるなんて」
パパンは私がギルドストレージから出した岩を魔法で出したと勘違いしたようだ。
このまま勘違いさせた方がいいだろうか?
「……」
パパンの後ろにフードを深くかぶった人がいる。
この人が魔法の先生だろうか。
因みにこの人はずっと私を見ている。
女性は視線に敏感と聞いたことがあるが、男の私でも分かるくらい強い視線を私に向けてくる。
もう痛いくらいだ。
「えっと、揺りかごから失礼します。はじめまして、ジェドルス・バルトンです。よろしくお願いします」
「え、ええ!?」
魔法の先生は驚いてパパンの方を見る。
パパンはイタズラが成功した子供のような笑顔を浮かべていた。
「言っただろ? うちの子は天才だと」
「親バカの妄言だと思っていたぞ」
声からして私の魔法の先生は女性のようだ。
そして、パパンは私の自慢をしていたようだな。
それを妄言だと。
もし、父親になったばかりの友達が「言葉をしゃべった」「歩くようになった」「天才だ」と、言い始めたらあなたはどうしますか?
親バカあるあるの誇張自慢、妄言として処理するのが普通だな。
「父がいつも迷惑をおかけしてます」
「え? あ、いえ。こちらこそ」
まだ、一歳にも満たない子供が流ちょうに言葉をしゃべる。
かなりシュールな光景だな。
まあ、他人は他人、うちはうち、という事で。
「魔法の先生でよろしかったでしょうか?」
「一様、そうなっている」
一様、か。
パパンの言葉を信じられず、でもお願いを断り切れず、会って判断しようという事なのだろう。
でも、反応からしてお眼鏡にかなったのかな。
「生まれたばかりの子供に魔法を教えていただけるのですか?」
「大丈夫だ。きちんと魔力量を確認しながら少しずつ教えていくから」
「それではよろしくお願いします」
私は手を伸ばして先生に握手を求める。
先生はそれにこたえるとパパンの方に向き直った。
「……、鬼才だ」
「だろ?」
「本当にお前のようなバカの血が入っているのか?」
「何を言ってる。そっくりだろ」
「髪と目の色は同じだが、顔の造りは母親にだな」
「髪と目の色が赤いのはうちの一族の特徴だからな」
色々と新たな情報が。
「それより、いつまでフードをかぶってるんだ」
パパンが先生のフードを取る。
先生は思った通り女性だったが、すごく綺麗な方だった。
そして、耳が長かった。
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